07.夜の両親
「夜!! こんな時間までどこで遊んでいたの!?」
「……」
夜が帰宅すると怒鳴られた。当然のように母親である。いきなり玄関で怒鳴られて、夜は反論する気にもならない。
「夜!? 母親に言えないようなことしてたわけ!?」
「空き地で遊んでただけ」
「空き地でこんな時間までなにするの!! 嘘はつかないでっていつも言っているでしょう」
「嘘じゃない」
夜の母親は彼女が納得する返事をするまで引かないし、夜も嘘ではないのだからと一歩も引かない。
いつもこうして揉めるから、夜はそうなる前に帰宅するようにしていたが、今日は詩音が帰りたくなさそうにしていたから、遅くなった。
本心を言ってしまえば、夜だって小言ばかりの母親なんか放っておいて、いつまでだって詩音や美海と一緒に遊んでいたい。
そうはいかないとわかっているから帰ってきたというのに、どうしてここまで言われなくてはいけないのか。
「母さんはぼくを全く信用していない」
「信用されるような行動を取りなさい!」
「信用する気がない人に、何をしたって無駄じゃないか」
「なっ!?」
母親が怯んだ隙きに夜は自室へ移動しようとした。けど、夜の後ろで再びドアが開いた。
「ただいま。なにを騒いでいるんだ。声、外まで響いてたぞ」
「あなた、おかえりなさい。だって夜がこんな時間まで遊び歩いていたのよ」
「そうなのか、夜?」
「ちょっと遅くなっちゃって」
そうか、と帰宅した父親は、まっすぐに夜を見る。
「ちゃんと謝ったか?」
「謝る前に怒鳴られた」
「お前また……」
父親は呆れたような顔で母親に視線を送る。母親はますます興奮したように叫ぶ。
「夜が本当のことも言わずに嘘をついて誤魔化そうとするから!」
「嘘じゃないって!!」
思わず夜が怒鳴り返すと、母親は目を吊上げ、父親はなだめるように夜の頭に手をおいた。
「夜、父さんと母さんで話すから夜は部屋に戻っていなさい」
「……はい」
「勝手に決めないで! いい? 夜は夏の間は外出禁止よ。少しは家のことをしなさい!」
「落ち着きなさい」
夜は言い返そうとしたが、父親に手で止められて自室に戻った。
いろいろと釈然としないが今は父親に任せるしかないのだ。
本当はあまり父親任せにしたくない。自分でなんとかしたい。
でも母親は夜の言うことなんて聞かないのだから、どうしようもない。
そういった気持がない混ぜになって、やりきれなくて、夜は泣き出しそうだった。
そのうちどこかで書きたいのですが、夜の母親は更年期+夜の反抗期+隣家のトラブルにヘルプに入っていたのが落ち着いて、疲れが出た……辺りの複合で、この有様です。
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