表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/51

心臓に問題がございます

「俺だけじゃなくて良かった」


「う、うん」


「心臓が速いの、意味分かった?」


「あなたに抱きしめられているからだと思うわ」


「うん。それで?」


「それでって、私も分からないわ」


「なるほど」


 なるほど? オリバーが自分の言葉を飲み込むように頭を抱えている。


「今までの、イヤじゃなかった?」


「今までのって?」


「だから、コレとか……」


 そう言うと、抱きしめたままの勢いで口にキスをしてくる。


「なっ!?」


「イヤだった?」


「嫌じゃ……ないけど」


 だからって急にするものじゃないでしょっ!! 怒りたいのに、なぜか顔が熱くなるのを感じる。


「そんな顔されると、やっぱり今夜は俺は外で寝た方が良さそうだ」


「待って。怒っているとかじゃなくて……」


「だからだよ。俺が君にキス以上のことをしたくなる」


「っ!?」


 それは……一体何を!?


 ゼビル姫の時ですら、唯一の元カレニーロンとは手も握らないうちに別れたっていうのに。


 なんとなく、それ以上は引き止める言葉が出なかった。


 結局、オリバーは外で、私は中で1人足を曲げて寝て過ごした。





 結局、ちゃんと眠れなかったわ。


 族長から教えてもらった真実の花について考えようとしても、オリバーの言葉が頭から離れなかった。


「まぁ、おはようでありますわ。もう1人の彼は日が昇る前に森の様子を見てくるって他の小人と出かけたでありますわ」


 朝食のテーブルには3人分とは思えない食事の量が並んでいる。


「急だったから、彼にはあとでお弁当を持って行ってもらいましょうでありますわ」


「なら私もあとで……」


「出来立てが1番美味しいんでありますの!!」


「分かったわ」


 族長と奥さんは楽しそうに話をしながら、もりもりとご飯を食べていく。


 あの小さな身体にいったいどうやって入っていくのよ。


「あら? 全然食べてないでありますわ……お口に合わなかったでありますか?」


「いえ、美味しそうよ。でも、なんというか……」


 昨夜からこのざわつく気持ちはなんなのよ。オリバーがいたら苦しくなるのに、いなかったらもっと苦しいなんて。


「……あなた、お弁当に詰めますから、オリバー様に朝食を届けてくれますでありますか?」


「えっ、まだ食べ始めたところだがであ……」


「はいはい、いってらっしゃいでありますわ」



 2人きりになると、あっという間にテーブルを片付け、かいだことのない香りのお茶を出してくれる。


「これは?」


「うふふ、小人族でも女性陣しか知らない煎じ茶でありますわ。なんだか悩んでいらっしゃるのでしょう?」


「…………」


「小人族の男はね、森とこの村を守る為に、人間には非道なことをするでありますでしょう? でも、あなたはお客様でありますわ。痛いところがあれば薬草で治す、それが小人族のおもてなしでありますわ」


「私はどこも怪我をしていないわ」


「うふ、ここが痛そうでありますわ」


 そう言って胸を指す。


「このお茶は、あったかい気持ちになる薬草で入れたんでありますわ」


 勧められるまま一口飲む。確かに、気分が落ち着く気がするわ。


「分からないのよ。別のことを考えたいのに、集中出来なくて。離れたいと思っている相手と離れたくないとも思ってしまうなんて……考えると眠れないし、なぜか食欲もわかないのよ。やっぱりあなたの言うとおり病気なのかしら」


「まぁっ!! それはっ大変でありますわっ」


 心なしか、夫人の目が輝いているように見える。


「それで……これは治せるの?」


「えぇ、もちろんでありますわ。あなたなら絶対に大丈夫でありますわ!! お耳を貸してごらんなさいであります」


「〜〜〜〜〜〜っ!? それが治療法っ!?」


「女というのは常に優位に立たないと落ち着かない生き物なのでありますわ」


 なるほど、それは一理あるわね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ