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2人きりの夜

 族長の奥様からのもてなしは、それはすごかった。何度お腹いっぱいだと伝えても、お皿に強制的におかずを乗せてくる。どれも食べたことのない不思議な味で、なぜかクセになる。


 貴族なら、残してもなんとも思わないんでしょうけど……10年過酷な修行をしていた習慣からか、身体が残すことを拒否してしまう。どうしても、手が止まることを許さない。


「もう、動けないわ」


「…………」


 オリバーの様子を見るからに、彼も胃袋の限界をこえたのだろう。


「デザートが3回出てきた時は、族長に奥さんを止めるよう目力で訴えた」


 それでやっとお開きなんて、小人族のもてなしはもう受けたくないわ。


 ここで滞在すると宣言したことを少しばかり後悔する。


「それにしても、ここはどうやら集会場で使っているようだな」


 こじんまりした他の小人たちに比べると、族長の家はでかい。さすがにオリバーが立つと腰をかがめないといけないが、2人入っても広さは十分だといえる。


 けど、眠るには近いわよね!? 2人横になったら、肩つくんじゃない!? 今までも野宿はあったけど、さすがに距離はとっていたわよ!?


「って、何してるの!?」


 オリバーは、そのまま外へ出ようとする。


「何って……俺は外で見張りをしているからリアは横になっていて」


「いや見張りって……ここは小人族の村なんだから誰も侵入出来ないわよ」


 魔族時代にすらだれも彼らの巣穴を探しきれなかった。小人族は植物に関する知識以外にも、物を作る腕もピカイチだ。プライドの高いドワーフより、小人を捕まえようとする者も少なくなかったが、小柄な分、単体をつかまえても意味がない。一時ニーロンに捕まえて欲しいとねだったが、結局住処までは分からなかった。


「まぁ、習慣みたいなもんだ」


「でも、その足を早く治すためにも休んだ方がいいって族長も言ってたじゃない」


「食べすぎたしな。身体を動かすのも悪くないだろう」


「もしかして、私とくっついて寝るのが嫌なの?」


 図星だったのか、オリバーは振り向きもしない。


 何? リリアとはくっついて寝てたじゃない。なのに、あんなに好きだなんだ言ってくっついてくるくせに、私とは寝れないっていうの!!??


「ちょっと、一緒に寝なさい」


「いや、それは……」


「嫌なの?」


「そうじゃなくて……」


「寝なさい?」


「だからそれは……」



 ねばるわね。主従関係の魔法がやっぱりうまくいってないのね。私だって寝たかなんかないけど、なんかここまで断られると意地になるわね。


「うっ……」


「う?」


「うぅっ……」


「えっ!? 泣いてっ!?」


「リリアとは寝たくせに……」


 顔をうつ伏せ手で隠す。ようやくオリバーはこちらを見たようだが、思った以上に効いているようだ。


「〜〜〜〜っ!!!! だから、あの女が勝手にくっついてきただけで、俺からは何もっ!! それに、リアとじゃ話が違うだろう!!」


 え、何? 私とじゃ違うって……リリアなら良いってこと!? あ、何よ。あの女に負けたのがなんか悔しいじゃない。


「違うって?」


「っ!?」


 いつのまにか肩をつかまれ、そのまま顔を上げてみる。自分でも気づかない内に涙が出ていたようだ。


「〜〜〜〜すぅっっっっっ」


 オリバーは思いっきり空気を吸い込んだかと思うと、その分今度はゆっくり息を吐く。


「ほら」


 少し落ち着いたように見えるが、手を自分の胸に押し当てる。


「リアといると、平気じゃなくなるんだ」


 鼓動が激しく動き、見た目以上に動揺しているながら分かる。


「だから、あんまり可愛い顔しないでくれ」


「…………こんなに鼓動が速いなんて、あなたやっぱり休んだ方がいいわよ!!」


「えっ?」


「激しい運動したわけでもないのにっ、おかしいわ」


「いや、だから……ほら!!」


「っ!?」


「リアは、俺と同じにならないのか?」


 なぜか胸に強く抱きしめられ、自分の鼓動を確かめてと言わんばかりに、手を胸にあてるよう促される。


「は、速いわ」



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