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人間こそ敵


「王女様、とても可愛らしいですわ」


「えぇ、今日はいつもよりも気合い入れてますわよ」



 侍女たちが騒ぐのも無理はない。今日は、延期になった私の誕生日パーティーなのだ。あの魔物の件のせいで、1才を過ぎてしまったが仕方ない。国民や各国の重鎮を招待する為、魔獣が城に襲ってくるというありえない事が起こった後では、警備の見直しや城の守りの強度を上げるのに時間がかかる。結局生誕500日祭という名前で行われることになった。



「王女様、初の誕生日は私ども使用人と陛下で行われましたが、今日はとても特別なのですよ」


 私のことを命懸けで守った侍女シシラは、あのあと侍女長となった。まだ若く異例の大出世であるが、王女の命を救った功績に敵うものはない。


「シシラ、特別って?」


「初のお祝いパーティーがズレたのは意味があったのかもしれませんわ、ふふ、短い時間ではありますが、今日は王妃様、リア様のお母様も参加されるのです」


「?」


「えーと、ママですわ。マ・マ」


 いや、意味は分かってるのよ!? お母様って……人間のでしょう、そう言えば、あの日依頼一度も会ってないわね。まぁ、前のお母様は女しか産めなかったとか言われて私が小さい時に出ていったみたいだけど。こちらのお母様とどうやら私が女だったことで落ち込んででもいらっしゃるのかしら? いいわ、せっかくなら噛みついてやろうじゃないの、うふふ。


「あら、王女様も楽しみなんですわね!!」


 機嫌が良いと勘違いした侍女たちを適当にあしらい、ぴったりに作られたドレスに全身コーディネートされる。身動きが取りづらいが、仕方ない。噛み付く分には支障はないはずだ。




「リーグ国第1王女リア様のご登場であられます」


 誰かの声とともに、シシアによって抱きあげられ見慣れない顔ぶればかりが並ぶ華やかな舞台へと登場する。大げさに拍手と歓声を送る人間達に愛想を振り回すのはごめんだ。すぐに、王の隣に座る女性に目をやる。


 あれが、王妃ね……なんて言うか、綺麗に身を飾っているけど、座っているのもやっとって感じね。ま、人間が魔族の魂を持つ赤子を産んだんだから、身体へのダメージは相当なものでしょうね。



「あぁ……私のリア……」


 化粧で顔色を隠しているが、弱々しい声をどうにか振り絞って王妃は手を伸ばす。夫である王が下から支えるようにして私を抱えると、頬にキスをしてきた。


「っ!?」


「重く……なったのね……あなたが魔獣に襲われたと聞いた時は、すぐにでも抱きしめに行きたかったのよ。あなたが初めて立った時も、歩いたと聞いた時も、全て陛下が絵にして飾ってくれていたけれど、今日ほど瞬き(まばた)を惜しいと思った日はないわ」


「…………」



「王妃様、リア様はすでに重く人見知りもあります故、急に動かれた時、お身体にご負担が……」


 王妃の側仕えたちが心配そうに話す。各国の主賓たちが集まるこの場で、王妃の体調が思わしくないと気付かれるのを最小限に留めなければならないのだろう。


「かまうな、我がいる」


 ようやく会えた母娘の再会の時間に口を出す侍女たちをにらみつけると、下がるように命令する。



「今日は、皆遠路はるばるよく集まってくれた。我が娘リアは幼いながらに魔獣に襲われかけたが、闇を打ち払った」



 王の言葉に、周りがざわめく。


――では、誕生日が遅れたのは王女の身体も弱いという噂は……


――城の修繕と言って病を隠していたのかと思っていたが……


――王女様のお顔を見てくださいませ、健康そのものに見えますわ……


――えぇ、王妃様はやはり化粧で隠していますが、幼い王女様にその方法は使えませんし……


――それより、厄を払ったとは?? もう王にその力は残っていないはずだが……


 なんだか好き勝手言ってくれるのね? だから嫌いなのよ。こういうつまらない集まりは……まったく、魔族なら強いものが黙らせるってシンプルなんだけど。人間はそうでもないのかしら?


 父の顔色を見れば、聞こえていないのか、眉一つ動かなさい。


 あぁ、私は魔力で聞こえているけど、人間にはこの程度の声は聞こえないのね。



「娘は……」


 何も聞こえていないはずの父が話す。


「娘は闇の魔力を清める力があるようだ。今日は、その発表も行う為集まってもらった」



 その一言に先ほどとは比べ物にならない声量で会場中がざわめき立つ。



「清めるだと!?」


「それは……まさか聖女様が誕生したと!!??」


「まさか、予言では次の聖女様が現れるのは魔王の封印が解ける時だと……」


「そんな……まだ数年しか経っていないと言うのに……」



 悲鳴にも似た声が出る。人間どもがいう預言とは、あながち間違いではない。魔王は……あの男は深い封印に眠る直前、実の娘である私の魔力を全て奪っていったのだ……生命維持に必要な分まで、すべて。私のかつての魔力は相当なもののはず、魔王復活に時間はそうかからないだろう……だが、その聖女様が私ではないというだけ。


「…………」


「闇の力を清めた証拠に、魔獣の核がなくなっていた」


「えぇ、私もしっかりと時間をかけ検証しましたが、王女様には強い力を感じます。今は幼くとも、いずれはこの国を守る力となるでしょう」


 ここぞとばかりにコードが出てくる。


「コード様まで……」


「では、リーグ国は安泰ということか……」



 大きな拍手の中で、そっと漏れる他国の本音。


――では、リーグ国の権威はそのままと……運の良い男だ……





 ふん、人間なんて本当に勝手な生き物ね。



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