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告白


「リリア〜〜〜〜っ!! 良かった、帰りが遅いからと向かわせた衛兵から、馬車が襲われた報告を受けた時はどれほど身を切られる思いだったか……」


「お父様、ご心配をおかけしました。でも、オリバー様に助けてもらい、ここまで送っていただいたんです」


「そうかっ、なんとお礼をお伝えしたら。本当に感謝致します。本来、他の部下に行かせる用事だったのですが、娘が神の啓示が出たと急に申し出まして」


「ですからっ、運命の方に出会えるとお告げがあったのです。怖かったですが、ほら、ね?」


 そう言って父親にしがみつかれた隙間からなぜかオリバーを見つめている。というか、なんとなく、存在無視されている気がするのは気のせいかしら。


 この光景、既視感あるわね。パパが私にする態度にそっくりだわ。はたからみるとひどいものね。


「運命の……とは、まさかこの青年が?」


「っ!! もう、お父様……その話は今は宜しいではないですか。それより、命の恩人を歓迎いたしませんと」


「おっ、おぉ。そうだな。旅の方、どうかこの国に滞在する間必要なものがありましたら何なりとお申し付け下さい。今日はお疲れでしょう。すぐに食事と部屋を用意いたします」


 案内しようとする司祭に、オリバーは頭を下げる。


「大司祭様、歓迎感謝いたします。ですが、我々はリーグ国より魔王復活を止める為の旅路の途中。ここにいらっしゃるのは、リーグ国第一王女であり聖女様でもあるリア様です」


「何? 聖女様だと……」


「王女?」


 目があったので、仕方ない。軽く膝を曲げ、ゆっくりと挨拶の意を表す。驚く大司教とは違って、顔をくもらせるリリアだが、構わずオリバーは話し続ける。


「今回、娘さんを助けることは出来ましたが……」


「そうですわ!! オリバー様が私を助けてくださったお礼を是非させて下さいませ」


 話を遮り、そっとオリバーの腕をつかむ。


 お礼っ!! そうよね。大司教の娘なら、王族に匹敵する素晴らしい宝石なんて簡単に手に入るわよね!!


「結構だ」


 結構っ!? 何を言っているの!!?? こちとら大司祭に会っているから必死で魔力を極限までおさえているっていうのに。


 コードの修行で唯一成果があったことといえば、魔力のコントロール力だろう。何度も行かされた聖堂の中では、まるで息を止めているかのように魔力をもらさない。そのせいで、話すことも出来ないのが難点だ。


「そういうわけには……せめてもてなしをさせてもらわねば……」


「大司祭様にご報告と挨拶をしに伺ったまでです。必要なものを調達しだい、ここを出発いたしますので」


「……分かりました。ですが、ジェダ国は大聖堂のある聖職者にとっていわゆる癒しの地でもあります。聖女様の為にも、明日旅路の無事を祈らせて欲しいのですが」


「お父様……」


「リリア、お2人は遊びに来ているのではない。豪華なもてはしやきらびやかな贈り物は、かえって迷惑になる」


 なんてこと……魔力を抑えてなければ言い返せるっていうのに……必死でオリバーに目で合図をする。あいかわらずすぐに気づき、頷いた。


「聖女様もお疲れのようですし、今日はこれで失礼します」


 違うわ!! お礼なら喜んで頂くって言いたいのよ。


「そんな、せめて泊まっていかれては……」


「…………」


 腕に抱きついたリリアだが、黙るオリバーに諦めたのかそっと手を離す。


「旅の方の治療や大聖堂に来る聖職者の為の泊まる施設がございます。せめてそこに泊まってはいかがでしょうか?」


「それなら……お世話になります」







 案内された場所はそれほど遠くなく、大聖堂に見劣りしない造りをしている。簡易的なベッドが並ぶ治療室を過ぎると、宿とは比べ物にならない豪華な部屋が用意されていた。


 久しぶりのベッドよ!! ソファまであるじゃない!!


 倒れこむように座ると、ようやく息が出来る。


「ふぅ」


 なんとか気づかれずに済んだわ。大司祭ともなれば精神をのっとることもできないもの。


 指にはそれは豪華な宝石の指輪を身につけていた。あれを逃すなんて一体何のためにここまで来たんだか……


「疲れたか?」


 オリバーが頭に手を乗せると、じっとこちらを見つめてくる。


「そうではないけど……」


 まぁ、気疲れってやつね。


「分かっている。俺も同じ気持ちだ」


 なんのこと? オリバーも深くため息をつくと、ソファの隣に腰掛ける。


「大司祭様は分からないが、あの娘……」


「分かっているわ。気になるのよね」


「まぁ、そうとも言えるが。どちらかと言うと、気に入らないの方が合っているな」


「っ!?」


 気に入らない!? 気になっているではなくて!? 人間は気持ちと違う態度を取るものじゃないの!?


「2人とも、一言も亡くなった護衛に対して何も言わないだろう。特にあの娘は……自分の気持ちを押し付け過ぎだ」


「嫌だったの?」


「当たり前だろう? 俺はリア、君が良いんだから」


「っ!?」



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