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1人にしないで


 2人きりになると、オリバーは飲み物を持ってきた。


「喉がかわいてないか?」


「……別にいらないわ」


 私はあなたの主人よ? だけど、光魔法が使えるこの男は本物の勇者なのかしら!? 下手に魔力を刺激したせいでまさか勇者として覚醒させてしまうなんて……一生の不覚だわ。


「不安なのは分かる」


「っ!?」


 何っ!? 勇者って心の声が読めるの!? まずいわ……やっぱり今すぐにでも消さないと……


「ずっと、勇者に負けないつもりで鍛えてきた。だから、こうやって君の隣に立てるのは嬉しい」


 ん?


「あの時から……俺は君のおかげで変われたんだ。もし、1人で行くのだと言うのなら、必ず俺が先に魔王を見つけ倒しに行く」


「えっ!? でも……魔王の居場所は……」


「あぁ、聖女(きみ)にしか分からないだろう。だが、俺は各国に優秀なツテを持っている事業主でもあるんだぞ? そこから魔力の探知できる魔法師を雇って探し出すことも不可能じゃない」


 ……お父様の魔力は日に日に強くなっているわ。この男なら本当に手段を選ばず行動しそうね。それに、もし本物の聖女と出会えば……やっぱりココで消すしかないようね。


『ケロベロス!!』


 主はいつでも使役した魔獣を呼ぶことが出来る。気配を消して近づいてきたケロベロスに、指示を出す。


『この男を、食べなさい』


 元の姿に戻ったケロベロスにオリバーが気づかないよう、こちらに注意を引く。




「……分かったわ」


「っ!! 」


「あなたを……危険なところへ連れて行くのは気がひけたのだけど……仕方ないわね」


「君を1人で行かせるわけにはいかない」


「でも……いつ何があるか分からないわよ?」


 まさに今、あなたの後ろに最高ランクの魔獣が立っているんですもの。


「なおさら1人で行かせられるか……俺なら問題ない。必ず守ってみせる」


「嬉し……いっ!?」


 何っ、このまぶしい微笑みは……心なしか光っているような……


「ちょっと!! 光出してるわよ!?」


「あっ、あぁ。すまない。どうやら俺の感情に反応しているようだな。まだ、勝手が分からないが……君を……リアを守りたいと思ったらなぜか身体が熱くなって……」


 いや、照れてる場合!? こっちはいつ光るか分からない恐怖で身の危険を感じているんですけど!? あぁっ!! ケロベロスがまともに光をあびて毛が焼けてしまっているじゃない!!


「ぎゅーーん」


「んっ?」


「素敵よっ!!」


「え?」


 しまった、ケロベロスの鳴き声に気付きそうだったから慌てて声をかけたから変なこと言っちゃったじゃない。


「リア、今俺のこと素敵だって……」


「そう、ね。その魔法なんて使わなくてもあなたは十分魅力あるって言ったのよ」


「そうか……それは嬉しいな。なら、俺が一緒に行っても構わないってことでいいか?」


「えぇ……」


 目が合わせられないわ……なんでこんなことに……仕方ないわね。効果はどれほどか分からないけど、一応主従関係は効いているはずだし。


「じゃあ、ここで少し待っていてくれ」


「?」


 オリバーは、火傷したケロベロスの隠れる方向へと歩いていこうとする。


「ちょっ、ちょっと!! どこへ行くのかしら?」


「いや、先ほど殺気を感じたからな。気のせいかもしれないが確認してくる」


 嘘でしょ……超トップクラスのケロベロスの気配をあの一瞬で感じ取れたっていうの!? まずいわ。聖光のせいで元の姿に戻れてないはずだわ。


「ひ……」


「ひ?」


「1人にしないで……」






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