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心臓を捧げなさい

「すぐに降ろしますよ」


 そう言うと、灯りのともるベンチに座らせる。かがんで足を触ろうとするので、思わず蹴りを入れる。だが簡単にかわされそのまま念入りに見るではないか。


「ちょっと!?」


「…………こちらはどうもなさそうですね」


 そう言ってもう片方の足を軽く持ち上げる。


「だからっ!! もう痛くはっ!!」


「良かった。お怪我はなさそうですね」


「っ!?」


 この男、初めて笑うじゃない!? 無愛想だと思っていたけど顔は悪くないわね。


「昔はもう少し可愛らしかった気もするけど……」


「あぁ……やはり覚えていらっしゃったのですね……」


 まずいわ。心の声が漏れてたのね。覚えているっていってもそんなはっきりではないんだけどね。


「あの時、弱い振る舞いは下に見られて当然と言われた言葉で目が覚めました。国外へ行き、心身ともに鍛えてきたつもりでしたが……」


 そんなこと言ったかしら……今更覚えてないなんて言える空気ではないわね。


「やはり聖女様の立派な活躍には及びませんね」


「私は……特に何もしてませんけど……」


「……国外まで聖女様の噂は届いていました。聖女様が祈りを捧げる教会では目を開けられないほどの光が輝いていたり、貴重な清めの水をこっそり農地へまき、豊かな土地を導いて下さっているとか」


 それって、祈りをサボっているところを覗かれないように教会の出入り口に目くらましの魔法かけていたことよね。清めの水もコードに見つからないようにこっそり捨てていたのに……まさか誰かに見られていたなんて……


「………………」


「………………」


 それ以上何も話してこない。オリバーがいるせいで他の人に魔法をかけにいくわけにもいかない。


 うーーん、魔力があるわけでもなさそうだし、話を聞いている限り私に魅了されているから簡単に精神魔法かかりそうなのよね。まぁ、すごい筋肉だし、この距離で力で押さえつけられたら不利だけど……


「っ!?」


 オリバーの目をまっすぐ至近距離で見つめてみる。驚いた顔をするが、視線をそらそうとはしていない。


「ふっ……」


 思わず笑ってしまう。久しぶりで感覚が鈍っていただけね。こんなにも簡単に出来そうじゃない。


『あなたの……心臓を、私に捧げなさい』


 魔力を相手に流し込み、催眠状態にさせる。「はい」と答えさせるだけで主従関係が成立し、いつでも精神を自由に操れるようになる。かなり高い技術と大量の魔力量を消費する為、上位魔族にしか使えない。


「…………喜んで」


 やったわ!! この身体に生まれて19年……ようやく人間の奴隷第一号よ!!!! この調子で力のある貴族からどんどん支配していけば……


「その為にこの国に戻ってきたのですから……」


 うん??


「本当は、聖女様にどう伝えようか迷いましたが……今の俺があるのはあなたのおかげです。この身に代えても、必ずあなたを守ります」


 んん???? 催眠状態になるはずだから、こんなに喋れるはずないんだけど……でも話している内容は問題ない、わよね!?


「同じ気持ちだったとは……俺にこんな幸せが……戻ってきて良かった……聖女様!! いや、リア。必ず期待に応えるから」


「えっ、ご主人様を呼び捨てって……てぇっ、えっ!? ちょっと!!!!」


「ん??」


 ん?? じゃない!!!!!! また勝手に抱えてるんじゃない!!!!!!!!


「おっ、降ろしなさい!!!!」


 これは命令よ!! さっさと……


「リア……君のことは必ずこの心臓をかけて守ってみせる。聖女である以上、もし魔王が復活すれば勇者と旅に出なければならないが……勇者よりも俺が君を守る。魔力こそないが……え……」


「な、ななななんで!? あなたから魔力が!?」


 暗い夜空にまで届きそうな程の白い光がオリバーから放たれる。


「きゃっ!?」


 しかも、聖光ですって!!?? 滅されるわ、浄化され……


「リア!?」



「なんだ!? この光は!!」


「聖女様!! どうされましたか!!」


 コードやシシラ達のかけつける声が聞こえた気がするまま、気を失ってしまった。







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