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パパとは呼びません


 大歓声の中、司祭はおもむろに口を開いた。



「聖女様……これから、あなた様は大変な道を歩むことになります。本来、王族はその血に流れる特殊な力で国を守り、聖女や勇者といった選ばれし者が魔王を倒しに行く……ですが、あなた様はそのどちらでもあらせられる。授与式をしたのはおそらく、陛下にもお考えがあってのことでしょうが、聖女様とはその時代に1人。唯一無二の存在です。聖女様が生まれた国は神の加護を受けられ、安泰と聞きます。おそらく、王の力なくとも大丈夫でしょう……」


「私が王族の力がまだ出ないのも、その道で生きろって言いたいのね」


「やはり賢いですな……最初、まだ幼い王女に授与式などと思いましたが、今日から間違いなく、あなた様は聖女様であります」



 今までは、私の呼び名はいくつもあった。王女様、聖女様、そしてこの身体の名前だ。でも、どちらでもなく私の魂はゼビルなのだ。


 正直、この誤解を利用しない手はない。私に心開くほど精神は操りやすい。聖女様ともなれば、国中どころか大陸の人間の心を簡単に操れる。本物の聖女が現れる前に、早くゼビル時代の魔力を取り戻さなければいけない。それまでは、仕方ない。嫌でもその大役、引き受けようじゃないの。



「えぇ、頑張りますわ」






 司祭と別れ、用意された馬車で一日中パレードを行うことになった。王女は聖女で、リーグ国は安泰なのだと知らしめることが目的だ。どこへ行っても皆が歓迎し祝っていた。皆の尊敬の目がある程この国の乗っ取りの日も近い。


 フフフ、さぁ!! 私をあがめ敬いなさい!!!!うん、順調ね。順調、なんだけど…………





「すごく、疲れた……わ」


「お疲れ様です、聖女様……ご立派でございました」


「……リアで良いのに」


「いけません、大聖堂の時は……動揺してリア様とお呼びしてしまいましたが、立派に授与式を終えた今、聖女様とお呼びさせていただきます」


「ふ〜〜ん、まぁ、呼び名なんてなんでもいいんだけどね」


 だって本当はゼビルって名前なんだし。


「いえ!! 決して他人行儀になったわけでは……こうしてお仕えするのも最後ですし……」


「えっ、どうして!!??」


「今後は聖魔法に精通した者が付き人になった方がリ……聖女様のお役に立てるかと……」


「何言ってるのよ、パパは私の付き人をシシアに指名したんだから、変わるわけないでしょう」


「ですが……」


 本当は命を張って助けたのだからと言ってやりたい、でもあれを覚えているとは言えない。


「…………」


「リア様、ありがとうございます。本当は、この話以前から出ていたんです」


「前から??」


「はい。正式に聖女様になり次第、付き人の変更を行う予定と。私の一存で、ぎりぎりまで話さないようにお願いしていたんです」


「っ!!」


「私もその方が宜しいかと……これから必要なのは聖女様を導ける者です……もし、魔王が復活したのならば、命をかけた闘いになるはずです。その時に少しでもお役に立つ技術を持つ者が必要になるはずですから」




 いや、本当は聖女じゃなくてその魔王の娘の力なのよね。なんて言えるわけないわね。別に……彼女にこだわる理由なんてないけれど……魔力に詳しい人間が側に仕えるのは都合が悪いわ。万が一ってこともあるし……ここは、駄々をこねるしかないわね。










「パパ!!」


「おぉ、リアか。お前から尋ねるなど珍しいな。丁度これからのことについてお前に話をしようと……」


「新しい付き人なんて嫌よ!!!!」


「ぬっ!?」


「シシアのままにして欲しいの」


「いや、しかしそれは……王女としてであれば良いが、お前は聖女として選ばれし……」


「必要ないわ!!」


 だって、聖女なんかじゃありませんものっ!! なんとか、本音を飲み込む。


「だって、今の私で十分強いではありませんか!! 他の者から学ぶことなどありません」


 これは事実ね。


「いや、それも一理あるがこれからその力を十分に学ぶ必要があるだろう。司祭様のつてで優秀な魔法師を紹介してもらうことに……」


「……今までの聖女は、力に目覚めると同時にすぐに魔王討伐の旅に出たと聞いています。私も聖女の1人であるならば、他の者と同様に、その力を素直に伸ばすべきだと思うのです」

 

「いや、だがな……」


「何より!! シシアは私の良き理解者です。今見ず知らずの者がついても私は戸惑うだけですわ!!」


「そうかもしれないが、これは大切な……」


「もし私の意をくんでくださらないのであれば、もう……パパとは呼びません!!」



「っ!!!!????」






 


 

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