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まだ8才なので


 ついに、入ってしまった……この……吐き気をもよおすほどのいかにも聖なる雰囲気……もうダメかもしれないわ。私はここで今、とうとう終わってしまうのね……無念だわ。


「ァ様……リア様!!」


「っ!? ええと、何!?」


「大丈夫ですよ。私たちがご一緒出来るのはここまでですが、陛下や司祭様がいるところまで行けばあとは任せておけば良いですので」


「わっ、分かっているわ」


 シシラ達は本堂に入ることを許されていない。残念ながら、ここからは1人で行かなければならないのだ。流れに関しては何度もコードから説明されている。聖女として正式に祝福されると聖水が黄金に輝くのだとか。


 無理だわ……まさか大聖堂で、しかも司祭がするなんて思ってもいなかったから、適当に誤魔化そうと思っていたのに……そもそも、コードも今日までの説明があやふやなのよ!! それは見事な光だとか、王女様なら最高の祝福がとか……肝心なところを説明しないんだからっ!!!!


 改めてコードを消さなかったことを後悔する。


 大聖堂で、しかも司祭の前で私の魔力は使えないわ。もし聖女でないとバレてしまったら、それこそその場で私の方が浄化されてしまうかもしれないわね……



 考えているうちに、とうとう司祭達の目の前についてしまった。お母様は少し離れたところに立ち、目が合うと微笑んで手を振っている。もちろん、振り返しはしないが。


「これは……なんと幼く気高い聖女様でありましょう。生きている間にまたこうして祝福できるとは思っておりませんでしたが……長生きするものです。あなた様の瞳からは今まで出会ったどの聖魔法の使い手よりも強い力を感じます……」


 司祭はかなり歳をとっているが、その背筋は伸び、細目をあけた眼差しは驚いたようにこちらをじっと見つめている。


 まぁ本来は100年に1人のペースで現れるらしいから、驚くわよね。魔王であるお父様の復活が私の魔力でどこまで早まったかは知らないけど、本当に復活が近いなら本物の聖女がどこかで目覚める可能性もあるのよね。それにこの司祭、かなりの熟練者ね。私の魔力に気づいている?? いえ、それならすぐに聖魔法を使うはずよね。とにかく、早くなんとか切り抜けなきゃ。


「そうでしょう、我が娘がまさか聖女としても、王女としても才能あるとは。まさに神のご加護」


「そうですね……歴史上聖女様が王族から生まれるなど初のことで私も驚いているところです」


「そうでしょう!! そうでしょう!!!! まだ王族が持つ特別な力は何か分かっておりませんが、それ抜きにしてもこの可愛さと天使のような微笑みがあれば即座にどのような者でも癒してしまう力の強さには、既に聖女としての資質はかなりのものでっ」


「陛下、今は神の祝福の前でございます。その興味深い話は是非式のあとゆっくりと」


「あぁ、これはとんだ失礼をした。ごほんっ、では、聖女リアよ、前へ」


 あの司祭、無駄に歳をとっていないわね。まさか一国の王の発言すらも途中で遮るなんて。考える時間稼ぎが出来ると思ったんだけど……仕方ないわ。まだ力が不安定ってことでここは押し通すしかないわね。


「では、神の祝福のもと、ここに新たな聖女の誕生を宣言します」


「…………」


「…………」


「…………」



 やっぱり、聖水になんの反応もないわ……作戦どおり、ここは子どもらしく難しいとか駄々をこねるしか……


「なんと!? これは……」


 司祭の言葉に閉じていた眼を開ける、聖水は真っ暗に染まっている。


「あっ……」


 まさか、私の正体に反応して……仕方ないわ、魔力は使えないだろうから、ここは司祭の首を狙って……


「王女様、お下がり下さいっ!!」


「っ!?」


 聖水だったはずのソコから、一瞬細い枝が見えたかと思えば、あっという間に成長する。


 あれは、呪木!? 


 捕らえた人間を養分にする呪いの木。トゲは意志をもったように人間の喉元を狙って急速に伸び突き刺す。司祭によって突き飛ばされなんとかその勢いから逃れることが出来たが、それは、あっという間に建物の中いっぱいを埋めつくす。身動きの取りづらい足場で、その枝は王妃めがけ勢いを出した。






――植物ごときが…………






『消えなさい』






 大聖堂の中から、町に届くほどの強い光が放たれる。あまりにも強い光は、一瞬で呪木をのみこみ、完全に姿を消し去ってしまう。壊れた窓は全て元通りになり、真っ暗だったはずの聖水は元通りの透明な色に戻っていた。



「これは、一体……」


「リア……が??」


「なぜ聖水から呪いが……だがあのような光、過去の聖女様とは比較にならんほどのものを一瞬で……」



 全員がこちらを見ている。


「ま……まだ8才なので……」






 



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