大丈夫じゃありません!!
どうしてこんなことに…………
「きゃああああああっ!!!! リア様、今日も一段と可愛いですわ」
シシラ……いい加減私が気合い入れたお着飾りされている時に興奮するのあきないのかしら……
コードの絶対的な聖女覚醒発言のせいで、あっという間に話はすすみ、国を挙げての授与式が行われることになった。
「…………そんなに派手にしなくても良いんじゃない?? 私が聖女としての力があることは皆知っているのでしょう??」
「そうですが……リア様がその力を発揮されたのはわずか1歳の時のことだったんです。偶然とはいえ、王妃様の体調を癒やし、会場中の草花に生命の息吹を宿した光景は忘れられませんわ。それだけじゃなく、凶暴な魔獣を聖犬に代え他国からの来賓達の命を守るなんて、それはもう素晴らしい奇跡でしたわ」
「あ、へーーーーそうなの……なら、改めてこんなことしなくても……」
実は全部覚えているし、偶然じゃないなんて言えないわよね……
「いいえ、あの時誰もがリア様の力を認めております。ですが……まだ力の不安定なリア様に称号を与えることは思い留まれたようで……今回、自ら力を使えるようになったタイミングで正式に聖女様としてお披露目をすることになったのですわ」
「まぁ、けじめってやつね」
魔族でも、上下関係は大事だ。闘えば分かるが、いちいち戦っていたらキリがない。とりあえずランクの高いやつを倒して力を示せばそれより下のやつらは大人しくなる、的な感じなのかしら。まぁ、ケロベロスクラスまでいけばわざわざそんなことしなくても実力の差に気づくものだけどね……
「けじめ……などどこでそのようなお言葉を??」
「ええと、ほら!! 舞踏会で男の子達が使っていた気がするわ」
「まぁ……それは……リア様、レディの口にする言葉ではありませんわ」
「そうね。とにかく、授与式をする理由は分かったわ」
危なかったわ、心の声がもれていたのね。それにしても、授与式の後に国民へのお披露目、パレードだなんて面倒だわね。仕方ないわ、今回ばかりは付き合うしかなさそう……ん!? あそこは……
準備が整い、目的地へと向かう馬車で自分の目を疑った。もしかしなくても、まさか、授与式って……
「はい、大聖堂でございますよ」
なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????
冗談じゃないわ!! 魂は魔族なのよ!? さすがに大聖堂で清められるなんてことされたら、まずいんじゃないのっ!!??
「リア様っ!? どうされたのですか?? 酔われましたか??」
「すっ、すぐに降りたいのだけど……」
「まぁお顔が真っ青に……すぐに後ろの馬車にいるコード様に来て頂きますわ」
違うのよっ!! 人数が増えたら余計に逃げ出せなくなるじゃないっ!!!!
「リア様っ!? お加減が悪いとか……うーーん、珍しいですね。加護の力のおかげか一度も体調など崩されたことがないというのに……」
そうね、魔族は病気になどならないもの。でも、体調が悪いことにすればいけるかもしれないわ。
「なんだか……悪い気がするわ」
「うーーん、脈も悪くないようですが……具体的にどこがお辛いのですか??」
「すごく辛いのよ……えーーと……」
まずいわ、体調なんてどこが悪いか分からないじゃない……確か、お母様はよく頭に手を当てていらっしゃったわね……
「手よ!!」
「手ですか??」
「そうよ!! 手がすごく上に上がるわ」
「上がるのですか??」
「えぇ、すごく辛いから頭よりも上に手がいくのよ」
「??????」
ん!? 何か間違えているのかしら……お母様よりも辛いってアピールしようと思ってさすがに両手を上げたのが大げさだったかしら……
「ええと、やっぱりこのくらいだわ」
今度は片手を胸に当てるくらいにしてみる。どうよ!? どう見ても辛いわよね!?
「リア様……すごく自信のあるポーズにしか見えないのですが……」
「え!?」
「あぁ!! もしかしてお披露目の時のポーズが心配で見てほしかったのですね」
「っ!!??」
「まぁ……リア様ったら……そうですわね。まだ幼いのですから、心配されるのも無理ないですわね」
ちっがーーーーう!!!! 何!? その温かく見守ってますよ?? みたいな眼……この2人、消してしまえば逃げられるんじゃ……ぐっ、ダメだわ。周りに護衛の馬車がこれだけあると後々面倒ね……
「大丈夫です!! それに、まずは授与式ですから。わざわざ遠い地からリア様に恥じない立派な司祭様を招待しているそうですので、任せていれば安心です」
「そうですわ!! それに、大聖堂には聖なる力が宿っておりますから、魔獣も来ませんわ」
だから、それが嫌なのよ!!!!




