表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/51

遅すぎた判断

 お母様の指示で自分の塔まで護衛に送ってもらう。


 ケロベロスは今となってはただの巨大な犬?? と思われているんだし、実はまだ魔力があるなんてバレるわけにはいかないものね。朝になって事情を聞かれる前に、どうやって移動したか、考えておかなくちゃ……


「失礼します。リア王女様をお連れさせて……」


「リア様ーーーーっ!!!!」


「っ!? シシラ……何をそんな大声で……」


「何をおっしゃるんですか!! 王妃様の部屋からあれだけ大きな光が出れば誰だって何事かと思います!! リア様の安全確認に入ればもぬけの殻だなんて……連絡が来るまで私達がどれだけ血眼で探していたとお思いですかっ!!!!」


「ごっ……ごめんなさい」


 シシラの勢いについ謝ってしまった。目は赤く泣き腫らした跡がある。騒動が起これば、まず自分の仕える主の確認をする。魔王こそが絶対の魔族とは違う人間のおかしなルールだ。


 王こそが1番ではないのよね。仮に今の私が何かあったとしても、この国がすぐに傾くなんてことないのに。



「いえ、王女様に行き過ぎた発言でしたわ。申し訳ありません……でも、ご無事で本当に良かったですわ。今はまずはお休みに……念のため、警備を増やしますが宜しいでしょうか」


「うん……」


「それでは、失礼しますわ」


「シシラ……」


「はい??」


「……なんでもないわ、お休みっ」



 ありがとうなんて、言いそうになっちゃったじゃない。怒られてお礼なんておかしいわね。ゼビル姫の時なら、家臣が主に大声を出そうものなら即首をはねていたっていうのに……あ、ケロベロス……


 窓の方を見るがしっかり見張りが立っている。


 仕方ないわ……頃合いを見て呼ぶしかないわね。








「それで、説明してくれるかな。リア……」


 まさかの、顔を洗う間もなくパパ到来。いつもよりも起きるのが遅くなり、ベッドから起きあがった時にはパパが隣で座って待っていらっしゃる。


「お、おはようございます……」


「おはよう…………よく眠っていたな」


「はい…………」


「………………」


「………………」


「殿下……あの、王女様は今しがた起きられたところですので、少々身支度のお時間を……」


「んん……そうだな」



 あーーびっくりした。シシラが何も言わなきゃ本当にこのまま聞かれる勢いだったわね。それにしても、寝顔ずっと見ていたのかしら、この私が気配に気づかなかっただなんて……久しぶりに魔力を大量に使って疲れてしまったのかしら。まだこの身体じゃ未熟ね。人間の成長ってどうしてこんなに遅いものなのかしら。



「陛下、お待たせ致しました。準備が整いました」


「あぁ、だが朝食がまだだろう。どうだ?? 我と母で食事をとろう」


「一緒に……ですか??」


「あぁ」



 それぞれが別の塔に住んでいるということもあるが、親と食事などゼビル姫の時からとったことなどない。


 うーーん、今すぐ話をするよりも、言い訳を考える時間がかせげそうね。


「はい」


「そうか、用意を頼む」









「まぁ!! おはようございます陛下……おはよう、リア」


 一瞬陛下など見えていないかのように顔を輝かせ出迎える王妃だったが、すぐに陛下へと挨拶をする。そんなにあからさまだとさすがにらこちらが気を使う。


「お母様、おはようございます」


「えぇ、えぇ。おはようっ。リアと食事だなんて、夢みたいだわ!!」


「……家族で食事が!! だな」


「あら、うふふ。そうですわね、こうして3人で食事をとれるなんて……幸せですわ」


「むっ、うむ……」


「体調は……」


「あら、リアのおかげでほら、すごく調子が良くなったのよ」


 良かったわ、聖物が光った時には失敗したのかと思ったけれど、消滅魔法がうまく働いたようね。それにしても、すごいタイミングで反応するんだから、焦ったじゃない。


「あぁ、リア……なんとお礼を言ったら良いのか。まさか、我が娘がこんなにも聖魔法の才があったとは、神に感謝だ」


 っ!? ごはぁっ!! 聖魔法ですって!!?? まぁ、聖女として勘違いさせる分には成功したけど、よりによって神だなんて、ゾッとする言い方だわ。魔族にとって魔王こそ全て、それ以外の存在なんてアウトオブ眼中なんだから!!


「えぇ、リアが1才の時に聖女だと気づいたけれど、まさかこんなにも早く聖魔法を使えるなんて……私も驚きですわ」


「あぁ、王として父としてではなく、人としてお礼を言いたかったのだ。妻を救ってくれて感謝する」


「ゔっ、いえ……その……」


「聖女として目覚めたから、昨晩母の病を治しに行ったのだろう??」


「えっ!? えぇ……えと……」


 なんてこと、聖女として力が使えるようになったって流れになってしまっているわ。ここはどうにか別の言い訳を……


「やはり、私が見込んだとおりかと!! リア王女様は歴代の聖女様達の中でも特別な、才能豊かなようでございますでしょう!! 王妃様の病を癒したことがその証拠。あの時と違い、今回はご自身の意志でされたのですから、もはや私が聖女様として教えることはございませんでしょう」


「まぁ!! では、やはりそうなのですね」


「では、進めねばならないな」


「えぇ、国をあげての聖女様のお披露目パレードを!!」


 コード……さっさとあなたを始末するべきだったわね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ