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恋愛物語

天空の女

作者: 蟹地獄

ある夜のことだ。

鉱山の厳しい風景が広がる渓谷で、見習い機械工の少年パッズは、空から降ってくる物体に目を奪われた。

まさかこんなところに女の子が降って来るとは思ってなかったからだ。

彼女は仰向(あおむ)けのままゆっくりフワフワと優雅に降ってきた。

彼女は美しいドレスに身を包み、髪を三つ編みにしていた。

胸の辺りでは宝石が光っているようだ。

その光りはその女の子の全身を包み込みその姿をより一層(いっそう)神秘的なものにしている。

パッズの心臓は高鳴り、これまで感じたことのないトキメキに包まれた。

何か素敵な恋が始まるのではないかと直感した。

自然と彼女を受け止めたいという衝動が湧き上がった。


パッズは急いで女の子の降ってくる場所まで行く。

だんだん近づいてくる彼女を下から眺めながら両手を掲げ受け止める準備をした。

このままいくと彼女は渓谷に落ちていく。

「そんなことは絶対にダメだ。」

しかし女の子が降ってきた場所は渓谷の崖っぷち。

ひとつ間違えば受け止めるパッズの命も危ない。

パッズは決意を固めた。

「この命に変えても絶対に受け止めてみせるさ!」

そしてとうとう女の子はその顔が見える高さまで降りてきた。

パッズは生唾を飲み込んだ。

彼女は目を閉じ気絶していた。

よく見ると顔には90年は生きてきたであろう(しわ)がある。

ドレスの胸に「ドーラン」という名前の刺繍(ししゅう)がしてあった。

手には「40秒で支度(したく)しな!」と書かれた紙を握ってる。

そしてとうとう受け止めようとしていたパッズの両腕に触れるギリギリまで来た。

しかし彼女の姿を見つめるうちに、パッズの心に冷静な声が響いた。

「もしかしたら彼女はもう死んでいるのかもしれない」と。

「それならこのまま渓谷に葬ってあげる方が優しさではないか」と。

パッズは思わず自分に言い聞かせた。

彼女の穏やかな表情は、まるで安らかに眠っているかのようだったが、彼の心には重い現実がのしかかる。


「そうだよ。このまま渓谷に葬ってあげよう。」と、彼は決心した。

彼女を受け取ることができない自分の無力さを感じながら、パッズは再び仕事に戻ることにした。

鉱山の音が彼の耳に響き、彼は機械の部品を組み立てる手を動かし始めた。


心の奥底で、彼女への想いが芽生えたことを否定しながらも、パッズはその瞬間を忘れないだろう。

彼女の存在は、彼の心に一瞬の光をもたらしたのだ。

鉱山の暗闇の中で、彼は新たな感情と向き合いながら、日々の仕事を続けるのだった。

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