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一つ目(09/21修正)

貴族階級を得ていた私には様々な物が見えていた。

社交界には人々の憎悪や嫉妬、その上に塗りたくられる煌びやかな仮面で溢れている。

それでいてどこまでも美しい宝石箱だ。

私はこの世界に恋をした。


二ヶ月前の夜会。

淑女として絶対に崩れないと思っていた私、エルド・ルティアは床に伏せ、崩れ落ちた。


王太子であるソル・キルエットから婚約破棄を言い渡され絶望にこの膝を地につけた。


絶望のあまりに王太子の隣にいた聖女と呼ばれるリルシア・ミラーを罵り、魔術使おうとすればそれが暴発しリルシアを傷付けた。

国を救う聖女と呼ばれる彼女を故意的に攻撃するなど王国が許すはずもない。

捕えようとする騎士たちを薙ぎ払い私は逃げ出そうとした。

世界の頂上に君臨しようと燃え落ちると決まった羽で飛ぼうとするその虚しさを知ったのは自身の首を跳ね飛ばす為の断頭台に立たされた時だった。


夜会から二か月後の断頭台の上。


「罪人、エルド・ルティアの罪状を言い渡す!彼の者は聖女であるリルシア・ミラーの名を貶め、自身の家名を穢すだけでは飽き足らず、この国を救う聖女に手をかけようとした。国家を揺るがす行いをしたお前は許されない。この処刑は王が認めたものであり、私刑に寄るものでない事をここに記す!」


多くの民衆が腕を上げ、私の処刑を待っている。

二ヶ月前から、ずっと壊れていた心が軋む。


「エルド・ルティア。最期に言い残す事はあるか」


はくはくと口を動かしても、自身の頭が回ることはなかった。

語るべき事は沢山あるはずだった。リルシアがどれだけ無礼な女で小賢しい人間なのか。

だというのに、自身の最期で言葉が紡げなかった。

屈辱だ。

何よりの屈辱だった。


「─────ありませんわ。」


零れ落ちた一言は自身の無力さ故の言葉だった。

ただ、自身がエルド・ルティアである事だけをプライドだけに戦ってきた。

ただ、宝飾品もドレスも外され何も失った私には何も無くなってしまっていた。

嫌悪の目が無力な身体に突き刺さる。

処刑人が同じ舞台に上がりロープを切る。

最期くらい、笑いましょうか。


……あぁ、なんて事。

綺麗に笑うことすらも出来ないのね。


断頭台の刃が落とされた。


.


「エルドお嬢様、お目覚めの時間でございます。」

ウェイティングメイドのメルネの言葉で目を覚ます。

窓から差し込む光は眩しく、瞼を閉じていたとしても光は外が明るい事を伝え、外から鳥の囀りが耳に届く聞こえることで朝である事を示してくれる。

ぱち、と目を開くとメルネのヘーゼルの瞳と目が合う。

どうして、という気持ちは頭にすぐに回って命令を受けた体は悲鳴を上げるべく口をわなわなと震わせてその音を吐き出した。


「きゃああああ!!?」


「お、お嬢様!?」

急に悲鳴を上げてしまった私に驚いたらしいメルネは私に近づきどうすれば、と慌てふためく。

外の人を呼ぶべきか、と迷っている様子のメルネを見て「待って!」と声を上げる。

これはまずい、騒ぎになってしまう。

私は死んだはずなのに、なんで朝はまた巡り巡ってきているのか。

状況なんてまるで把握出来ないがメルネの手をぎゅ、と握り目を潤ませる。


「き、きょうは、悪夢を見てしまったの、」


我ながら苦し紛れ過ぎる。

情けない、もっと言葉を持っているはずなのにどうしてこんな時に対処が上手くできないのか。

だから、あの処刑台の時も…

と、目を瞑れば握った手にメルネの手が重なる。


「失礼致しますね、お手に触れる事をどうかお許しください。悪夢ですか、恐ろしかったですね、…お嬢様。今、心を落ち着ける紅茶をお持ち致します。」


メルネの優しい言葉に驚き目を見開けば、メルネの目はどこまでも優しく私を見つめていた。

またどうして?という疑問符が心に落ちる。


だって、いつも彼女は絶望と希望が入り混じった目で私を見ていたのに、


紅茶を用意する為に立ち上がり綺麗なお辞儀を扉の前で行うとメルネは早々に出ていってしまう。

息をゆっくりと吐き出し、まずは指を動かす。

自身の思った通りに指は動く。

足を動かす。なんの問題も無く動く。

目を瞬かせる。視界は暗転と光を繰り返し情報を与えてくれる。

身体の機動に問題は無い。

では、問題は。

ベッドから立ち上がり鏡面の前に立つ。


「なに、これ、」


ぺたりと自身の頬に触れればまろく柔らかい。

処刑された記憶も全てある。自身は確かに死んだのだ。だというのに、どうしてまた目覚めて、そして、


「若返ってるの?」


幼い頃のエルド・ルティアが鏡面には映っていた。


.

その後すぐにメルネは私が落ち着けるようにと紅茶を持ってきてくれた。

ウェイティングメイドであるメルネがそうする事は当然ではあるのだが朝は目を合わせて悲鳴を上げるなんて淑女として有り得ない事をしてしまった為、口封じも込めて「先程はごめんなさい、ありがとう」と告げればメルネは驚いた様子で目を見開き、そしてそのままゆっくりと目を細めた。


「いいえ、エルドお嬢様。私は当然の事をしたまでですわ。」


お嬢様が望まれるのであれば夜にはホットミルクをお持ちしましょう。

胸に手を置きメイドらしく傅くメルネに「ありがとう」ともう一度告げた。

.

思い返せば、

メルネは私が三歳の時に家に来たメイドだった。

それからメルネがウェイティングメイドとなったのは私が五歳の時からだった。

きっかけはあまりに簡単なものだ。

メルネの光に透けた時に淡く紫に見える黒の髪色とヘーゼルの瞳を私が気に入った。

綺麗なものは自分の手元に置かなくちゃ、と五歳の時の私は朝の光に照らされるメルネを見て思った。


だからメルネの手を引いてお父様の前まで連れて行き、「私!これがいいわ!」とぎゅ、とメルネの腕を自身へ引き寄せたのだ。

父親は娘が気に入ったらしいメイドに視線を送ると見定める視線を隠すこともしなかった。


「そうか、エルドが気に入ったのであれば何よりだ。メルネくん。君は明日からエルドのウェイティングメイドとして侍従するといい。メイド長には私から話しておこう。」


父のその言葉に満足した私はメルネの腕を引き廊下に飛び出し指をメルネに向けて指した。


「貴方はこれから私の傍にいるのよ!私の宝石になるの!貴方が傷付いては私の名前に傷が付くわ!だから、私が貴方を守ってあげる!」


ふふん、と息巻いた私にメルネはぱちぱちと目を瞬き小さく息を飲んだ。


「…っ、ありがたき幸せ。お嬢様にお仕え出来る事、心から感謝致します。」


そうして頭を下げたメルネに大きく頷いた。

これが五歳の時の記憶だ。


(まあ、実際は五歳の時の言葉なんて自分で直ぐに忘れてしまってメルネを手足の様に扱った。メルネは気付けば病気を患ってしまって…そして私の元を離れたのよね…。そして、)


メルネとの別れは十七歳の時だった。

病気に伏せたと聞いてから傍仕えのメイドが変わった。

メルネがどうしても気になって感染症では無いと聞いたから会いに行った。


栄養不足の為か髪も細くなり、窶れ、唇も紫に染っていた。

それでいて私が会いに来たと聞いて、開かれたメルネのヘーゼルの瞳は美しくてそのチグハグさに驚いたものだった。


「エルドお嬢様、私にはもう、宝石の価値はありません。」


そんな事は無い。と言おうと思った。

ヘーゼルの瞳は美しい。病さえ治ってしまえばまた私の宝石となってくれる。

そう思っていたのに口から零れたのは「そうね」と言う小さな言葉だった。

メルネは諦めた様に笑ってぺこりと頭を下げた。

その翌日、彼女はルティア家の館からその姿を消した。

装飾品が一つ剥がれた感覚がした。

恋愛事にかまけていた十七の私は自身の宝石を守る事が出来なかった事に気付けていなかったのだ。


そんな事を思い出し現在に思考を戻してくる。


(メルネが私を起こしに来ているという事は……少なくとも五歳以上ではある。でも見た目からしてそんなに小さいとも思えない。)


先程鏡に映った自身を思い出し目を伏せるとメルネは悪夢を思い出したと思ったのかメルネの手に触れ「大丈夫ですよ、お嬢様」と告げた。


「悪夢とは言えど一瞬の夢で御座います。」


一瞬の夢?

本当にそうだろうか。

十八年間の記憶が残っている。


(だって、私は今、貴方との出会いと別れを鮮明に覚えていたのよ)


それだけではない。

処刑される間際に私を嫌悪の瞳で見つめる民衆たちの顔、婚約破棄を告げたソルの顔、隣で心配そうに私を見つめるリルシアの顔。


全てが鮮明に残っている。


エルド・ルティアは確かに処刑されたはずだ。

首に刃が当たってからは一瞬だ。

薄い皮から肉へと届き骨を穿つ。

一瞬の事である筈なのにどうしたってその記憶は痛みを持っていた。


「……そう、ね。一瞬の事だわ。」


でも、もう一生迎えたくない一瞬だ。


心配そうに私を見つめるメルネにもう落ち着いたと手を握ればメルネは安堵した表情で頷いた。


「では、朝の御支度を進めましょうか」


身支度をする為に立ち上がり鏡面の前に立てばやはり幼い姿の私が映っていた。

姿見で見たところ八歳頃だろうか、と思いながらメルネを振り返る。


「メルネ、私って何歳だったかしら」


「まあ、お嬢様…つい先日十歳のパーティが楽しみだと仰っていたでありませんか。」


成程、と返せばお嬢様?大丈夫ですか?と言葉が返ってくる。

問題ないわ、と言えばそれならば宜しいのですが…とメルネは私の支度を続けた。


メルネが整えていく私は美しい。

白銀の髪は光を浴びて煌めき碧眼の瞳は太陽を見つめれば空の色を写し、夜闇を受けて紫紺にも見える。

メルネが側にいて美しさが際立っている。

メルネはやっぱり私の宝石だ。

鏡越しに映るメルネを見つめれば視線に気づいたメルネは「どうかされましたか?」とにこりと笑う。


「メルネ、私ったら自分で言った癖に忘れてしまって、貴方にちゃんと言えてなかったのね」


振り返れば私の身支度の為にしゃがみこんでいたメルネと今度こそ真っすぐに視線が合う。

その頬を両手で包んでもう一度、五歳の時に言った言葉をメルネに手渡す。


「貴方は私の宝石よ。それは、貴方がどうであろうと変わらないわ。貴方はいつまでもいつまでも、私の隣で美しくあるのよ。私は貴方を守るわ。」


宝石の美しさは持ち主を際立たせる。そして、持ち主もまた宝石の美しさを際立たせるのだ。


「…、はいっ、身に余る光栄です。ありがとうございます、エルドお嬢様」


宝石は磨く事で価値がある。

自身の宝石を磨く事も忘れてしまうなんて、なんて事。

メルネの瞳を見つめた。


.

その後、私はメルネを一度部屋から出し状況を整理することにした。

私はあと三日で十歳の誕生日を迎える。

十五歳から学園に通い、十八歳で婚約破棄と死刑を迎える。そして、


「……そして?」


頭がぐらりと揺れる感覚がした。

死んだはずの自分が何故かその先の記憶を持っていた。

その記憶を何とか思い出してみる。

死を迎えた私は光もない場所で眠っていた。

何かに揺られるような感覚と誰かが騒がしくしているのが鬱陶しくて嫌な気分だった。


傍にはメルネがいて「お嬢様、ごめんなさい。ごめんなさい。私が傍にいれば、お嬢様は」と嘆いていた。

何を謝っているのかしら、とメルネに聞こうとした時、急に腕が引かれる感覚がした。

驚いてメルネに手を伸ばそうとすればメルネもまた此方に手を伸ばした。


「お嬢様……っ!」


目を焼くような眩い白の閃光を浴びてゆっくりと目を覚ます。

目の前にはあの、忌まわしきリルシア・ミラーとソル・キルエットとその仲間たち。

エルド・ルティアを糾弾した人間たちだった。

リルシアは真っ直ぐ私に向かって手を伸ばす。


「エルド!手を貸して!」


『……あらあら、他でもない貴方が私の手を借りるなんて…やっぱりなんて無礼な人なの、リルシア・ミラー。そして、ごきげんよう、私を裏切った殿方たち。』


そうしてくるりと振り返り悍ましい魔物たちと対峙する。

こうしなければならないという強制的な力があった。普段であれば、リルシアの言う事など聞くはずがないのに、どうしてかこの時は「手を貸して」の言葉に従順に従うしかないと体が動いていた。


処刑の後、私の身体は燃やされたのか焼け焦げて崩れ落ちそうなドレスを柔く持ち上げてカーテシーを行う。

リルシア達に背を向け向かいあった存在が魔物たちを率いている魔王だという認識も出来る。


『初めまして、魔王陛下。そしてその下僕たち。私は、名をエルド・ルティア。まあ、醜い姿。

さあ、始めるわよ。私に歯向かう人間は全て!首を跳ねてしまいなさい!』


わたくしのようにね、


くつりと歪む口角。コキリと音をあげる首。

切られた首からは血が滴り落ちドレスを汚す。

宝飾品は何も無い。

目を見開き口からは大きな笑い声を響かせた。

奇怪で恐ろしい姿。

美しく輝いていた私とは似ても似つかないその姿は醜いと語った魔物そのものだった。


死の先の記憶を思い出し、私は自身の口を手で覆った。


「なんて、こと?」


あのリルシア・ミラーに、私が……?

私が服従させられていたというの…!?

エルドなんて呼び方も許したことなどない!


なんて屈辱。


あんな、アンデッドの様な形で呼び出すなんて、屈辱にも程がある。


死んだ先の記憶をまた辿る。呼び出された私がその後どうしたのか。


断頭台を用意して、と叫べば大きな刃が天空に現れ燃え盛る炎が私の周りに浮かぶ。

指をくい、と下に向ければ刃は落ちて、周囲に浮かんだ炎が世界を焼き尽くす。


『さぁ、アル。私の命よ、蹂躙なさい。』

『かしこまりました、お嬢様。』


執事であるアルが私の傍から現れ風の魔術を用いて私の炎を更に燃え上がらせる。


『さぁ、私の前にその首を差し出しなさいっ!』


その言葉と共に切り落とされ並んでいく魔物の首に私は高らかに笑う。


『誰も!誰も私に逆らってはならなかった!私は、こんな、』


『「……醜い姿、耐えられないもの、」』


過去に言ったはずの言葉を繰り返す様に紡ぐ。

この記憶を取り戻したことで、私は死んだ後にリルシアに利用されたのだと理解する。

聖女の用いる力だ。聖女の力については学園でも噂にはなっていた。


"聖女がその死に心を痛めた存在には精霊の加護が宿り、聖女の望みに応える事だろう。"


つまり私は、


「死を哀れまれてそして死してあの女に服従したという事?」


有り得ない。

有り得てはいけない。そんな世界。

その後の事を懸命に思い出す。

その後、どうなったのか。


「エルド・ルティアと言ったか。貴方はどんな美しさを持っていたのだろうな」


気が付けば魔王の顔が近くにあった。

漆黒の髪に美しい紅の瞳。美しい宝石の様だった。


『私、これがいいわ』


そう言った時一度切られた首はまた切り落とされた。


.

そこまでの記憶を取り戻し私は口を抑え嗚咽に耐える様に呟いた。


「最悪、だわ」


死の瞬間こそ絶望だと思っていたが本当の絶望は死の先にあったのだ。

あの後、首を切り落とされて今度こそ本当にエルド・ルティアは終わったのだ。


つまり、処刑台で死んだ私は聖女であるリルシアに哀れまれ、その先でリルシアに服従させられて魔王にまた首を切られてしまう。死んでなお、屈辱に塗れてしまうのだ。


ふつふつと怒りが沸き上がる。


絶対に死んではならない。


違う。


何よりもあの断頭台で死ぬ事だけは許されない。


「あの女に哀れまれて死んで、その上服従なんて絶対にさせられたくない。」

「私は、絶対にもう負けない。」

「私は、絶対に美しく死ぬの。」


その為なら、過去の自分だって踏み台にしてみせるわ。


.

決意を元に拳を握りしめハッとして思い出す。


「そういえば、アルは、」


メルネと同じ様にエルドの傍仕えとしていつも隣にいた執事だった。


メルネと違った点と言えば最期の最期まで傍に居てくれた事や、学園も同じように通っていた事だろうか。

いつだって忠誠を誓ってくれていた。

私がリルシアへの嫉妬に狂って八つ当たりをしたとしても「大丈夫ですよ、お嬢様。お嬢様は美しいです。リルシア嬢には負けません」と応えてくれていた。

そして、記憶が正しければ死して尚、エルドの望みに応えて、傍に居てくれた執事。


アルだってそう、エルドが手を掴み「私!これがいいわ!」と自身のものにしたのだ。


「…そうだ、そう。十歳の誕生日で、プレゼントされるのよ、」

十歳の誕生日パーティでお父様がお前の為に用意したんだよ、と言って連れてこられた男の子。

自分よりも身長は小さいけれどダークグリーンの髪色とシルバーブルーの瞳は美しかった。


「アル・カルエンともうします!」


拙いその言葉とたどたどしいお辞儀は急に覚えた事なのだろう。

形振りも分かっていないそんな様子のアルをじぃ、と見つめたのは三日後にある誕生日パーティでのことだ。

奴隷として買われたアルは執事になる予定などなかった。


(でも、私が気に入ったから執事としての勉強を始めて…最後まで傍にいてくれたのよね)


私の宝石、私が見つけ出したもの。

私の装飾品。


過去の記憶の中にある死して服従させられた私の元に現れたアルの身体もまたボロボロだった。

シルバーグレーの瞳に生気などまるでなかったのだと今だとわかる。

私が選んだ時のキラキラとした目はもうそこにはなかった。

そうなってしまったのは私のせいである事は間違いない。

主人が落ちぶれてしまっては執事の格も下がってしまう。

私が糾弾された後、学園にいたアルがどの様な扱いを受けたのかなど想像に容易い。


アルに関しては私の落ち度だ。

どこまでも美しくあろうとした私がアルという宝石までも穢してしまった。

私が落ちぶれなければ、アルという宝石は守られることだろう。


死してなお、名前を穢されるなど想像もしていなかったが、そうなる未来を理解してしまった。


「私を穢した事、私を憐れんだ事、絶対に許しませんわ。リルシア・ミラー」


私はもう、落ちぶれない。死なない。憐れまれるなど以ての外だ。

自身の宝石は自身で守って見せる。

その為に、過去の全てを使って見せる。

指同士を合わせて微笑めば鏡には美しい私の顔が映っていた。


「私は私自身の宝石を手に入れてそして美しく磨くのよ。その輝きは誰にも汚させないわ、」


「エルド・ルティアはどこまでも美しくあるの」


煌めく宝石箱は私のものよ。


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