章末おまけ① 戦火の羅針盤
◯『聖人没後Ⅱ 〜戦の変遷から紐解く、彼らの偉業〜』より抜粋
戦火の羅針盤とは、戦火の聖人が遺した聖物だ。
寂寞とした夜空を模した盤面が美しく、現存する聖物においてもっとも状態がよいとされる特別指定聖遺物のひとつでもある。
手にした者の関わる戦を勝利へ導くといわれ、その逸話を巡った争いは現代においても絶えることはない。
針の先には戦火の要素が強く宿る。
そのため針と盤面とでそれぞれ矛と盾を象徴しているという説が有力だが、真偽のほどは定かでない。
また近年、土台に使われた要素が古い時代の星のものであることが発見された。聖人と星との関わりという、歴史研究の側面でも注目されている品である。
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◯とある商会での会話
「真の英雄にしか所持できない魔法具があるという噂、ですか?」
「ああ。民衆から徐々に広がるよう仕掛けてくれ」
「であれば会長に商隊を出すよう指示しておきます。彼女ならうまくやるでしょう」
「別の商会からもうひとつ、だな。どうせ崩す地域だ。武器商の権利争いから国どうしの戦いへ育ててみるのも悪くない」
「……我が商会も少なくない損害を被りますよ?」
「そのまま適当に間引いておいてくれ。仮の上層部も、そろそろ気を引き締めてもらわないとな」
「そういうことをなさるから、あの者に付きまとわれるのですよ」
「はは、ついでに商才がないと失望してくれたらいいんだが」
「お人が悪いですね」