章末おまけ⑤ 暖炉宝石
◯『ユーリカの栞』より抜粋
暖炉宝石と呼ばれるこの石は、一般的に女性が愛する男性への想いを宝石に込めることで作られるものだ。特に人間のあいだでは、婚約指輪のお返し、あるいはそういった関係への申し出の贈り物として好まれる。
炎の煌めきが強いほどに相手への想いが込められており、また、宝石との色なじみによって品質が異なる。
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◯とあるレストランでの会話
「ねえ、聞いた?」
「聞いた聞いた」
「え、なになに?」
「オーナーの婚姻の話!」
「ええっ!?」
「もう、すごく残念なんだけど……!」
「でもほら、相手は豊穣の女王って言うじゃない、そりゃああたしたちなんか相手にされないわけよ」
「まぁねぇ……」
「そうよねぇ……」
「それよりも見た? オーナーの着けてるブローチ」
「ああ、そのお相手から贈られたっていう」
「暖炉宝石というんですって。想いの込められた宝石だなんて、素敵よねぇ」
「なんでも、知り合いの聖人が自慢してたとかで女王さまが張りあったらしいわよ」
「やだ可愛い」
「ね、私たちもやってみない?」
「無理よぉ! 人間なのよ?」
「魔術でちょっと色をつけるくらいならできるんじゃないかしら」
「まぁ……!」




