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狐の嫁入り 二部〜機械ノ音〜  作者: 杉崎 朱


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13/16

十三話 狐の嫁入り〜機械ノ音〜

狐の嫁入り〜鈴の音〜の続き、第二章。

鈴の音で登場した”イッセイ”を主人公とした物語。

舞台は、”カナン”が帰った後のお話。

「私の仕事は、異世界からきた人間を確保する事だ。異世界にきた人間は、本人の意思できているわけではないようで、皆混乱する。以前、混乱だけでは収まらず、錯乱してしまい、この世界の人間に危害を加えた異世界人がいた。そのために、我々、異世界人専門の機関があり、対処をしている」


部屋の真ん中のテーブルに最上とリリが向かい合わせに座っている。リリが上座だ。

下座の最上の後ろの扉の近くに、イッセイ、おじいちゃんがと神風が立って話しを見守っている。



「捕まったら酷い目に合うって聞いたわ」



最上は、後ろのおじいちゃんの方を少し向いた。目が鋭い。

「そんなに外れたことでもなかろう!あと、言うこと聞かせる為じゃ!あと、面白そうだからからかい半分じゃ」

呆れた顔をした最上が前を向き直し、リリに言った。

「酷い目に遭わせてしまった者もいる。その時は、こちらの職員が何人も怪我をさせられたんだ」


怪我をさせられた程度の話ではなかったのだか、11歳相手に詳細を言っても仕方ないか・・・と神風は後ろで聞いた。


「私もこれから酷いことされるの?」

「されるようなことをした自覚があるのか?」

「私が直接何かしたわけじゃないわ。でも、逃げるのに、イッセイがたくさんの乗り物壊してた。壊したのはイッセイだけど、原因は多分私だろうから」


機関の車のガラスを20台分割った件だ。


「それは後ろの二人の問題だ。君は何もしていない。まず、こちらが勝手に追いかけたのが悪かった」


咎められるのではなく、謝られたことにリリは驚く。これは、この後は怖い思いをしなくて良いのかもしれないと期待が膨らむ。少々顔つきが明るくなってきた。


「だが、話しをしたいのは、君の処遇の話ではなく、君自身の存在についてだ」

「私の存在?私の事を話せばいいの?」

「あぁ。だが、君の話は後で沢山聞きたい。今はこちらでわかった君のことについてだ」


【”こちら”でわかった君のこと・・・?】


世界が違えば何もわからないのではないだろうか?リリはイッセイの家で受けた説明を思い返していた。イッセイやおじいちゃんは、リリの世界の事がわからなかった。だからどのような世界か、どのような国かを聞いてきた。しかし、目の前の男は”私の事”を何かしらの手段で”知った”と言うことなのだろうか。

雲行きが少し怪しいとリリは感じ始めた。


「そこの発明家一家・・・ご老人と青年の事だ」

「”イッセイ”と”おじいちゃん”の事?」

「あぁ、彼らから、”君は異世界から来た”と言われただろう」

「・・・えぇ、そう言われたわ。私は移動中に寝ていて、起きたらイッセイの家の近くにいたの」

「そう、君は小さい頃から”育ってきた世界”から”この世界”にやってきたんだ。理由や方法はわからない。心当たりは?」

「ないわ」


「そうか。そして、ここからが大事な事だ」

「・・・っな、何よ」


リリが少し身構えた。



「先ほども言ったが、君が来た世界で、君は”物心着く前から育った”のであろう。しかし、”君が生まれたのはこの世界”である」



ーーーツキン



「・・・何言ってるのよ」

「君は、この世界で生まれた人間だ」

「何馬鹿なこと言ってるの?ただでさえ、いきなり、気づいたら居た、見た事も聞いた事もない風景とものと景色の世界にやってきて、戻れるかどうかもわからないって言われてたのに・・・!そもそも私が生まれたのがこの世界ですって?!」



しまった、また癇癪を起こすかもしれないとイッセイは危惧した。



「落ち着きなさい。悪いようにはしない。しっかりと保護をする。君の身の安全は保証する」


最上の言っている事は、安全の保証を口に出しているだけなのに、なぜだろう。宥める感じが、リリにはなぜか怒られている感覚になった。この人は自分の父である王と同じくらいの年齢なのだろうか。叱られている気分だ。待て、自分がこの世界の生まれなら、王は自分の父では無いと言う事だ。


自分の両親と思っていた、王と王妃とは、血の繋がりがないと言う事か。


でも納得できない気持ちの方が圧倒的に強く、まだリリは食い下がる。しかし、心のどこかで不安が出てきた。



ツキンーーーーー



リリは何かピリッとした感じを受けた。心だろうか。体だろうか。わからないが、とにかく話を聞く。聞くだけでなく反撃してやる。いつものリリに戻り始めた。









「あれ?」

「あん?どうした?イッセイ?」

「なんかちょっと気になることが」

「ワシも気になることがある」

「今の静電気みたいなノイズのこと?」

「何じゃそれ?なんか見えたんか?」

「あぁ、肉眼で少しだから、じいちゃんのゴーグルでさっきみたいに色暗くしてみたら多分見れると思う。リリさんの顔のあたりでなんか静電気が走ったような・・・」

「あ?じゃあそれはワシが見ておく。でな、イッセイ」

言いながらおじいちゃんは先ほどの分析器を覗いていた時同様にゴーグルのレンズの部分の色合いを暗くして

リリを見ながら話しを続ける。



「なんで嬢ちゃんに話す”適任者”が最上なんじゃ?やっぱりどう考えたってイッセイの方がいいじゃろうに」

「”適任者”って、対象者にただ話やすい人物ってだけじゃ無いんだよ」

「それじゃあれか?”機関の人間”って言うのがポイントか?」

「うーん、これに関しては最上さんとも話したわけじゃ無いけど、ほぼ確信を持てたし、最上さんと同じ意見だと思ったんだけどなぁ・・・」

「何をごちゃごちゃ言ってる。何で最上なんじゃ。確かに奴は責任者じゃが・・・」



もう、最上とリリの言い争いは頭に入ってこない。



「王も、王妃も!私が欲しいと言ったものは大体与えてくれたわ!大事にしてもらってたのよ!双子の妹だっていたわ!私の方が姉で第一王女だから、私の方がもっと大事に育ててもらってるんだから!学院にも通わずに王宮で特別に講義を受けさせてもらって!身の回りだってすごく充実してたわ!人とはなかなか会わせてはもらえなかったけど、・・・怪我をしたらすぐに王宮医が飛んできてそれはそれは大事に丁寧にしてもらったわ!異世界生まれだとしたら何でそんなに大事にするわけ?!」


「君の大事と言うのは、ものを与えてもらうこと、言うことを聞いてもらえる事だけなのか?」


「どう言う意味よ・・・何が言いたいわけ」


「何かしたいことはちゃんとさせてもらえたのか?欲しいもの、食べ物はそれは金銭的には王族だから豊かな生活水準ではあるだろう。しかし、君自身がしてみたい、やってみたい、興味があることを喜んで応援してくれるご両親だったか?君の心を尊重してくれるご両親だったか?君の”お父さん”と”お母さん”は」


「私は第一王女よ。王女に何かあってはいけないから、危険なことはさせられないと小さい頃から言われてきたわ。それはわかるでしょ。この国は国の重要人物の危険を考えないの?護衛も付かないわけ?」


「そうか。では、王と王妃の実の子だと言うのなら、君の容姿はどちらに似ているんだ?君のその黒い髪の毛の色はどちら譲りなのだ?」


「・・・王も、王妃も、ブロンドよ。私は!私はすごく特別なんだって!」


リリは、自分の容姿が両親だけではなく双子の妹、また周囲のメイドや執事とも顔の系統が違うことを気にかけていた。しかし、王も王妃も『あなたは特別なのよ』と言うだけだった。

根拠はないが、自分の親がそう言ってくれたのだ。それをずっと信じてきたのである。もしかしたら、自分は本当に特別で、何か選ばれた人間で。だから、大事すぎるが故にダメだと言われる制約も多かったけれど、欲しいと言った”モノ”に関してはほとんど与えてもらえた。

それが、ここにきて、信じて生きてきたものが心の中でヒビが入り、ついにガラガラと音を立てて崩れ始めた。




「君のその切長の奥二重は、ご両親のどちらに似ているんだ?」




ーーーーーピリッ





【今のいままで、リリさんの周りでノイズが発生することなんてなかった。何故今?】

おじいちゃんの次はイッセイが考え始めた。

何故今?元々ノイズが発生する時間が決まっていたのか、もしくは何かに反応したか、条件が揃ったか・・・。にしても、本人は気にする素振りもない。それとも気にしている余裕がないのか。気にならない程度なのか。

もし、本人に今まで経験がなかったとしたら、きっと驚く、喚くで大人しくしていないだろう。経験があったり、日常茶飯事なら騒ぐこともないだろうが、側から見て正常な光景とは思えない。おそらく、リリ自身も、自分に起こっていることがわかっていないのであろう。なんだ、何なんだこのノイズは。






やりとりを前にしておじいちゃんも悶々と考え事をしている。しかし、リリの顔はしっかりと見ている。たまにリリの目の周辺に静電気らしき、電気系のノイズに似たものが発生する。心なしかノイズが徐々にはっきりと見え始めている気がする。

【あれか?あのでっかい耳飾りからか?そういえばやけにでかいな】

しかしやはり気になる、何でここで最上なのだろう。彼が話さなければならないような人物ではないはず。他の世界では王宮で育った王女様だったとて、この世界でも王女ということではない。王制ではないからだ。そんな折、おじいちゃんが思いだしのは今日のニュースで流れていた誘拐事件である。


《環境省長官の御子女が誘拐されて、今日で10年。スキャンの技術が未発達だった為、当時犯人と御子女を追うことが出来ずでした。現在は、御子女の当時の写真、犯人の似顔絵を参考に街中のスキャンで行方を追って-----》


もし、生まれたばかりだったとしたらリリと同じくらいの年齢だ。これが誘拐なんて惑星内の話しで済まず、何かしらに巻き込まれて異世界へ渡っていたとしたら。

「辻褄が合う・・・!スキャンで見つけたとて表立って探すことも憚られる!機関の人間以外の、しかも国のお偉いさんの実の子なら、扱いも、異世界の件を伏せたりそりゃ丁重に丁寧に、ねじ伏せてでも黙らせておかなくちゃいけないことだらけだわ!!」


おじいちゃんの中で仮説が立った。これは、イッセイと最上の二人が立てていた仮説と同じものにやっと辿り着けたと思った。



「ねえじいちゃん、ノイズ大きくならなかった?」

「あ?あぁ。心なしかな。肉眼で見えたか?あのでっけぇ耳飾りから目に向かって静電気っぽいノイズ見たいのが走っとるように見えるわ」

「・・・ピアスから?」

「おん」



ノイズの発生源は、最初に彼女を見た時に違和感を持った、子供が着けるには大きすぎるあの”ピアス”だとおじいちゃんは言った。イッセイは頭をフル回転させた。

【いくら王女とはいえ、あまりにも不釣り合いな程に大きいピアス。多分仕込まれたものだ。ピアスの先には、アクセサリーに似せてはいるが付いているのは機械じみたものだったはず。やはり多分条件が揃ったら何か仕掛けが発動する可能性がある。ノイズが段々大きくなっているのは、彼女自身がこの世界の生まれだと話し始めてからだ。そこに何かキーがあるのか、とりあえずあのピアスが何なのか調べないと】


イッセイは、一度部屋を出て機械を撮りに行った。

コードのついた箱型の機械・・・電圧計に似た機械だ。他には先ほどの箱型に比べると精度は劣るものの小型の分析器など、必要そうなものを抱えてイッセイは機械の山から見つけて部屋に戻る。


「話の最中すみません!気になさらず続けてください。リリさん、耳元少し弄りますけどなるべく動かないで」


箱の先から出ているコードの金属部分をピアスの宝石・金具、コード、機械に当てていく。

その間も、徐々にイッセイの肉眼にノイズがはっきりと見え始めてきた。





両親と容姿の違いについて聞かれたリリは、もう呆然として言葉が出なくなっていた。




「王と王妃に似ていなくて当然だろう。


君は、私の子供なのだから。つまり、君の父親は私なのだ」




一瞬、部屋の時の流れが止まった感覚がした。




「はぁぁああああああ?!?!?!」

まず叫んだのはおじいちゃんだった。



しかし最上は続ける。リリに説明するにあたり、事前に出生バンドを二つイッセイから貰っていた。最上がそれをリリの目の前に並べた。照合した二つの出生バンド。


「5年前に私の子供が生まれた時に作ったものを、ここに来る途中に再作成してもらった。データが残っているから作成は時間がかからずにすぐにできた。それが、こちらのバンドだ」


色味が綺麗で傷ひとつない出生バンドを最上が指さした。

そして、隣に置いた、傷がつき、経年劣化をしている出生バンドを指して言った。


「これが、君が付けていたバンドだ」



二つの出生バンドは全く同じなのである。”素材が”ではない。

書かれている文字まで全く同じものである。




「これは、私が5年前に作成したバンドだ」







リリは絶句した。




ツキンーーーー



ピリッーーーー



ノイズがより一層大きく、今度はリリから一番遠くにいる神風にも見えるくらいにハッキリしていた。

もう、細かいノイズがピアスの宝石と目の間を行き来していて止まらなくなってきた。



顔には焦りを出さないイッセイが機械を当てながら考える。

【何がノイズをはっきりさせてる、何が起こる、何だこのノイズは?!

リリさんが、自分が”この世界の生まれ”であることを理解、認識するにつれどんどんノイズが多くなる・・・認識するにつれて・・・?」



リリは目の前に置かれた二つのバンドを奪うようにして自分の目の前に並べた。



本当に、読めないながらも、二つの出生バンドに書かれている文字が全く一緒だったからだ。

文字と思われれるもの、記号と思われるもの。どれを見ても同じで、きっと、透ける素材であれば、重ねたって寸分ただわないであろうそのバンドを目の前にして、自分は本当にこの世界で生まれた人間なのだと初めて思った。初めて納得しなければならないと思った。もう、否定する材料が残ってない。




「見ちゃだめだ!!!!!」




二つのバンドを見比べていたリリからイッセイが力づくでバンドを取り上げた。

しかし、遅かった。



ピリッーーーーーー


パシッーーーーーパシッーーーーーー





「そう、、私は、この世界で生まれたの」



「納得してくれたかい?」



「・・・うん」





その瞬間、リリの目と目の前に現れた不思議な円陣が光った。

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