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わたくしだってヒロインになりたかった。

作者: ぱっぷぴ

わたくしはユーセイア王国の

ダイス公爵家次女のシルビィ・ダイスです。

現在は13歳で、第3皇太子の婚約者候補に上がっているらしいので、最近は淑女教育がとても厳しくなっています。

ガチャン

あら、今はティータイムのレッスン中でしたわ。

また椅子に座るときに音を立ててしまいました。

「お嬢様!何度音を立てれば気が済むんですか!?」

この、血相を変えて怒っていらっしゃるのは

最近わたくしの家庭教師になったお方。

名前は...何でしたっけ。毎度思い出せないのでわたくしは夫人と呼んでいます。

「すいません。夫人。」

ああ、今日怒鳴られて叱られたのは何度目かしら。

もう、10回以上は怒られているわね。

「お嬢様!あなたはいつになったら基本ができるようになるのかしら!?あなたさまのお姉様であるユーフェミア様はこれくらい8歳にもならずに出来ていましたわよ!?」

わたくしには2つ歳のはなれたお姉様がいる。

わたくしを叱るときはみな、わたくしとお姉

様を比べる。お姉様は、長女だからと小さい頃から教育されて、わたくしは次女だから、わたくしはお父様と似ていないから、と第3皇太子との婚約の話が出るまで放置していましたのに。

そう。わたくしはお父様と全く似ていない。そして、ダイス公爵家の純系ならば、必ず授かるという、宝石眼も持っていない。

だから、今まで虐げられて来た。放置されてきた。

...今になって急に教育を始めたのにできるわけがないじゃないですか。

「お嬢様!ぼーっとしてないで早く立ちなさい!」

あら、わたくしとしたことがぼーっとしていましたわ。急いで立たないと、またムチの回数が増えちゃいます。夫人はわたくしが失敗するたびに10回わたくしのふくらはぎをムチで叩きます。

「一回...!二回...!..」

痛い...。でもここで声を上げたらまた叩かれる回数が増えてしまいます。耐えるのよシルビィ...!

「三回...!よんか」

夫人の手が止まる。

あら?

そっと目をあけると、金髪の青い目をした、わたくしと同じくらいの歳の男の子がいました。

「何をやってるんですか?」

男の子は夫人に聞きます。

夫人は顔がまっさらになって、

「殿下、お見苦しいお姿を見せてしまい、申し訳ありません!只今お嬢様の教育中でして...!」

と言います。

殿下...!?ということは皇太子の一人...!?

私も顔がまっさらになりました。

「これは、教育ではない。ただの体罰だ。」

男の子...いや殿下がおっしゃいます。

「夫人。きみはクビだ。公爵にも報告しておくよ。」

夫人が崩れ落ちます。

「連れて行け。」

冷静な顔で殿下が後ろの騎士に命令します。

「はっ。」

夫人が連れて行かれました。

突然の出来事に驚きがとまりません。

「えっと。殿下。どうしてこちらに...?」

ここは、ダイス公爵家の屋敷より少し離れた別館なので、殿下が来るとしたらここではないはずなのですが...。

「こんにちは、シルビィ。お怪我は?」

殿下が心配そうに聞いてきます。

「だ、大丈夫です。いつものことなので...。」

本当は、ふくらはぎがちぎれるほど痛いのですがね...。人に心配されることが普段ないので、なんだか照れます。

「それはよかった。改めて、自己紹介するよ。僕の名前はエタムス・ユーセイア。

この国の第3皇太子だ。」

あら、わたくしの婚約者候補の皇太子様でしたのね。

「そして、今。君と婚約することを決めた。」

え?婚約って今決めることなのかしら?

「夫人にイジメられ、ムチで叩かれ怪我をしているはずなのに、人に心配させまいと、平然を装うような優しい君に惚れたよ。

君に決めた。」

そんなすぐに決めていいのかしら?皇太子さま?

「そして、君が怪我を隠さなくてもいいように...。誰にもいじめられることのないように

僕が一生君を守るよ。」

わたくしの手を殿下が掴む。

「よし。ついてきて!!!」

え?え?急にどうされましたの?

全速力でわたくしを引っ張って走る殿下。

そのお姿はなんだか、ただの子供のようでした...。

「ついた!!!」

笑顔の皇太子様。

「つきましたの...??」

ムチで叩かれてふくらはぎが痛いのに全速力で走らされて、へとへとのわたくし。

「ここ...は...、どこですか...?」

「ここは、城下町だ!!!!!」

え?え?そんなに走りましたっけ?

「ふふーん。驚いた顔をしているな~!

皇族専用の魔法陣で移動してきたのさ!」

え?え?魔法陣って...。魔法陣って一回使うのに莫大な費用がかかりますよね?

「君に外に一度出てもらいたくて、父上に頼み込んだ!外の空気は美味しいだろ!!」

わたくしが生まれてから公爵家の別館から出たことがないのを知っていたんですね..。

...。顔が赤くなります。嬉しいです。

「そして、せっかく城下町に来たことだし遊ぶぞー!!!」

殿下が笑顔で再び走り出します。

さっきまでの冷静なお顔とは正反対な小さな子供のようなお姿...。思わず笑みがこぼれてしまいます。ですが、わたくしは遊ぶということをあまり知りません。

「殿下...?遊ぶとは何をしてですか...?わたくしは殿下を楽しめさせられるような、芸は持っていません...。」

殿下が止まります。失望させてしまったでしょうか。

殿下は不思議そうな顔をして、

「遊ぶこととは、誰かを楽しませることなのか?違うとわたしは思うぞ!遊びとは、時間を共有している人たち全員が楽しむことだ!誰かを楽しませるのではない。みんなで楽しむことだ!」

殿下という人は...。顔が赤くなってしまいます。

そして、また走り出し、私達は食べ物を買ったり、射的をしたり、いろいろ遊んで帰りました。



月日はたち、わたくしたちは正式に婚約し、婚約者になりました。殿下は2日に一度公爵家に来てくださり、たくさんのお話を聞かせてくださいました。

一番印象に残っているのは、黄色いバラ畑のお話です。前に、殿下が第1皇太子様と馬に乗って、王国を探検したことがあるそうですが、そのときに偶然見つけたそうです。とても、いい香りがしたらしいです。そして、次はわたくしも一緒に連れて行ってくれるそうです。とても、楽しみです。



そんな、平凡な日常を過ごして、

わたくしたちが出会ってから、3回冬を越しまして、わたくしたちは、ユーセイア王国最大のキルティアアカデミーに入学しました。この学園では、身分の差は関係なく、皇族でも、貴族でも、平民でも試験に受かれば入学することができます。なので、従者は原則、寮の中だけ同行でき、ほとんどの場合一人で生活することになります。

もちろん入学式に向かう途中も従者は連れていけません。ほとんどの場合、わたくしはお世話係のアンナといっしょにいたので、少し緊張しますね...。

「ふう、やっと入学式の会場につきました。わたくしの住んでいた別館の廊下を10往復したくらいの長さなのですが...。」

あまりの学園の広さに驚きます。

指定の席に座るとエタムス様がすでにお座りになっていました。

「やあ。シルビぃ。今日からずっと一緒にいられるね。」

カアッ

またお顔が熱くなってしまいました。

最近殿下は、わたくしをからかうことがお好きになったようで、会うたびに恥ずかしいことを言ってこられます。

わたくしがムスッとした顔をしていると、

殿下はあははっと、満面の笑みです。意地悪です。

「諸君静粛に。」

アカデミーの校長先生がお話を始めます。

入学式が始まりました。

「この学校では、学問に励み、友と高め合ったり、うん。まあいろいろする学校だ。以上頑張れ。」

とっても適当な校長先生の挨拶が終わったところで、新入生代表のお言葉が始まります。確か、新入生代表は首席合格の...お名前は...。

「新入生代表のマリー・ラインです!

私達はこのアカデミーに入学できたことを誇りに思います!学問に励み、友と助け合い、ときには高めあって、頑張ります!」

ピンク髪で、おさげの女の子。瞳は、エメラルド色でたいへん可愛らしい印象の方でした。

「あの、適当な校長の挨拶をまとめられるなんて関心するな。」

エタムス様が、ボソッとつぶやきました。

わたくしも、同感です。きっと、あの方はもっと賢くなりこの国の発展におおいに役立つとても優秀な原石だと思います。

そして、入学試験の優秀成績だった方は、生徒会に入るのがこのアカデミーの決まりです。

新入生の生徒会メンバーは、エタムス様、マリーさん、そしてわたくし。エタムス様と、一緒に生徒会になれるようにたくさんお勉強をしたかいがありました。

「続いて、生徒会長の挨拶だ。」

現在の生徒会長は、ユーフェミアお姉様。

わたくしのお姉様です。生徒会に入って、お姉様とわたくしを皆また比べるかもしれません。それでも、エタムス様と一緒なら平気な気がするんです。

「在校生一同は皆さんの入学をたいへん嬉しく思います。.............」

お姉様の挨拶が終わったところで、長かった入学式も終わりです。

「次に新入生生徒会メンバーの発表だ。」

入学試験の結果はもう張り出されており、上位3名が、生徒会メンバーになるのですが、わかっていても緊張します。

「マリー・ライン、エタムス・ユーセイア、シルビィ・ダイス。以上の3名だ。この3名は、後ほど生徒会室に来るように。」

良かったです。安心しました。

エタムス様と一緒に生徒会に入るために、勉強を頑張ったかいがありました。

入学式も終わったので、さっそく生徒会室に行きましょうか。

「エタムス様、ご一緒に生徒会室に...。」

あら、殿下がいらっしゃりません。

あたりを見回してみると、殿下はマリーさんとお話しておられました。きっと身分差は関係ないとはいえ、周りは貴族だらけで、平民のマリーさんを不便に思ったのでしょう。やはり、殿下はお優しいお方です。そうと分かれば、仕方ないので一人で生徒会に行きましょう。




コンコン 

「失礼します。この度、生徒会に入った。シルビィ・ダイスです。」

生徒会室のドアをあけると、案の定ユーフェミアお姉様がいました。

「ビビ〜。あなたと一緒に生徒会の仕事ができてお姉様とっても嬉しいわ!!!」

ビビとは、お姉様がわたくしを呼ぶニックネームです。

そして、この通りお姉様は私のことが大好きらしいです。よく、わたくしたちを比較する方々はお姉様と、わたくしはあまり仲がよろしくないと思われるのですが、そんなことは意外にないです。まあ、わたくしはお姉様を好きでも、嫌いでもないですがね。

「あれ?あなたの、婚約者の殿方はどこかしら?」

お姉様が不思議そうなお顔をされます。

「ああ、殿下なら...。」

そう言いかけた瞬間

「失礼します!」

という殿下の声が聞こえ

「失礼します!」

と、あとから女の子の声が聞こえドアが開きました。

「あら、殿下と首席のマリーさんじゃないですか。ご一緒に?」

お姉様がお二人に聞きました。

「ああ、周りが貴族だらけで、マリーの居心地が悪いと思ってな!連れてきてやったんだ。」

殿下が誇らしげに答えます。

あはは...もう、呼び捨てなのですね...。

「婚約者を一人にして、他の子女の子と一緒にいるって良くないんじゃなくて?」

お姉様が攻撃に出ます。

「わたくしは、だいじょうでs」

「シルビィは一人でもだいじょうぶでしょう?それに、マリーは困っていそうだったので」

殿下は、お姉様の攻撃を見事にかわしました。

....

一人でも大丈夫ですか...。なんだか寂しいですね。

「ビビ....。」

お姉様が心配そうにこちらを見てきます。

「はい。大丈夫ですよ。そんなに心配しないでくださいお姉様。」

「そうですよ〜。シルビィ様はきっとお強い方ですから、お一人でも大丈夫って言ってるじゃないですか〜。ユーフェミアさま心配しすぎですよお。」

と、マリーさんが

なんだか、新入生の挨拶でのマリーさんと印象が少しちがくてびっくりしました。それに、なんだか馴れ馴れしいような...。

「あはは...。マリーさんの言うとおりです。

ところで、なぜ私達は呼び出されたのですか?」

苦笑いで対応し、話題をすり替えます。

「ああそうだったわね。さっそく生徒会に仕事があって、新入生が入ってきたことだし、来月あたりに新入生入学おめでとうパーティーを開催するの。そこで、生徒会はそのパーティーの準備をするのよ。本当は、あなた達のパーティーだから、パーティーの準備は新入生以外の生徒会メンバーでやりたいことだけど、なにせ人が足りなくてね...。」

私達生徒会は、1学年に3人。そして3学年までしかないので生徒会メンバーは合計9人です。

確かに6人でパーティーの準備をするのには無理がありますね。

「というわけで、パーティー準備の役割分担をするわよ。2人1組と3人1組になってね。」

2人1組ですか、では私はエタムス様と...。

「エタムス様...!」

と言いかけた瞬間

「エタムス様!わたしと組みましょお~?

わたし、周りが皆さん高貴な方で、エタムス様以外の方とまだ気軽に話せていないので、とっても不安で...。」

と、マリーさんが

殿下は困った様子で、

「シルビィいいか?」

と、

「......。大丈夫です。それじゃあ、しかたないですもの...。」

本当は、殿下といっしょになりたかったけれども、ここで嫌だと言ったら、きっと殿下を困らせてしまいます...。

「それなら、ビビはわたしと組みましょうか?」

とお姉様が、

「はい...。」




5日後


さっそくパーティーの準備に取り掛かります。殿下と、マリーさんペアは、

「新入生入学おめでとう!」

という看板作り

わたくしとお姉様は材料の買い出し

それ以外の方々は、先生の指示のもと会場の飾り付けや当日に用意する食べ物のメニューなどを考えたり大忙しです。

「エタムス様あ〜?塗料が頬についてますよお〜?」

「ああ、取ってくれ。」

殿下とマリーさんの声

....。

「少しベタベタし過ぎではないですか?」

...。

あら、声に出てしまいました。

「すみません〜。平民出だから、よくわからなくて〜。」

マリーさんが謝ってきました。

殿下は、

「少し、言い方がきついのではないか?」

とおっしゃいます。

まるでわたくしが悪いのかのように。


「...。すいません。これからは、気おつけます。」

殿下相手だと、わたくしは悪くないことはわかっているのに、謝ってしまいます。

「もう少し、おとなになってくれ。シルビィ。」

「はい...。」


こんなことがあってからパーティーの準備は、着々と進んでいき

パーティー当日

パーティーでは、ダンスがあります。

ファーストダンスでは、パートナーと、以降は他の人と踊れます。

もちろん殿下とわたくしは婚約者なので、パートナーです。


「シルビィ。少しいいか?」

殿下との久しぶりの会話です。

「はい。何でしょうか。」

嫌な予感がします。

「今日のパーティーだが、マリーのパートナーになろうと思う。」

「え?」

いまなんとおっしゃったのでしょうか。

マリーさんのパートナーになる?

「エタムス様、ご冗談を...。では、わたくしはどうすればいいのでしょうか...?」

「冗談ではない。お前は、他にもパートナーになってくれる者ぐらいいるだろう?マリーには、いないのだ。では、話はこれで終わりだ。」

そんな...。殿下...?

殿下はわたくしではなくマリーさんを選ぶというのですか?


この日わたしは、パーティーを欠席した。


次の日の放課後、生徒会に用事があったので生徒会室に向かうと、中から声がしてきた。

「マリー。私は、シルビィではなく、君を愛してしまった。きっと、私達は結ばれない運命だろう。」

「殿下...。私も殿下を愛しています...。」

..........。


ある日、わたくしのクラスは移動教室だったので、階段を下っていると前には、マリーさんが...。

頭よりも体が先に動いた。

「キャアッ」

マリーさんが階段から落ちていく。

「シルビィ様が私を押してえ!!!!」

彼女が泣いている。

そこでわたくしは、先生たちに取り押さえられた。



「シルビィ!なぜこんなことをしたんだ!」

と、殿下が

「マリーさんが、わたくしから殿下を奪ったから!!!!!」

「わたくしは悪くない!!!!!」

殿下は呆れたように

「まるでマリーが悪いかのように...。

君がこんなやつだったとは思わなかったよ。ああ、もうそれ以上言わないで...。

「わたしたちの婚約を解消しよう。」

それだけ残して殿下は去っていった。

ああ、ああ、

わたくしは、好きな人に愛されたかっただけなのに、なぜ、なぜ........。


  ああ、わたくしも好きな人に愛される

    ヒロインになりたかった。











登場人物の名前を覚えるのがとても苦手で自分が名前つけた人でも、必ず忘れると言っても過言ではないので、登場人物は最小限にしました〜。皆さんは名前覚えてあげてください...。

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[気になる点] ビビが可哀想なので、ざまぁになる結末にして欲しいです。殿下な浮気がひどいです、切ない。 [一言] 面白かったからこそ、なんとかなりませんか?
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