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美食家ルカの美味しいモノを探す旅  作者: レニィ
赤ちゃん期
4/29

3食目:もちもちのマッシュポテト

 ぼくはしばらく、パン粥の離乳食と、おかあさんのお乳でお腹をいっぱいにしていた。


 でも、だんだんその二つにも飽きてくるようになってきた。


 そんなぼくの様子に気が付いてくれたのか、サージおねえちゃんは、最近、ヤギじゃなくて、ツィーフェルのお乳でパン粥を作ってくれる。ツィーフェルのお乳で作ってもらったパン粥は、ヤギのお乳よりも甘くて美味しいけれど、毎日ツィーフェルだと甘すぎて、サージおねえちゃんには悪いけれど、だんだん嫌になってきていた。

 それに、パン粥は三回か、五回に一回くらい、なんだか食べるのが難しいときがある。おかあさんのお乳を飲む時のように食べると、たまにお口の奥で止まってしまって、だんだん苦しくなって、吐いてしまう。

 吐くと、犬だった時もそうだったけれど、すごく苦しくなるし、お口の中やお乳が通って行くところが痛くなる。

 だから余計にパン粥を食べるのが嫌になってしまって、しかたなくおかあさんのお乳を飲むけど、やっぱり飽きてくるとまたパン粥を食べる。パン粥に飽きたら、おかあさんのお乳を飲んで、おかあさんのお乳に飽きたら、パン粥を食べる。


 その繰り返し。


 離乳食って、パン粥しかないのかな……? ぼくがコルザおねえちゃんや、サージおねえちゃんたちみたいにスープやパンや、お肉を食べられるようになるのは、いつになるんだろう。もっとたくさん食べれば、もっと早く大きくなれて、いろんなものを食べられるようになるのかな?

 その日はおかあさんのお乳を飲んで、お腹がいっぱいになったら、眠った。


______________________________


 朝、目が覚めてすぐにおかあさんのお乳を飲んだから、次のごはんはパン粥が食べたいなと思っていたのだけど。サージおねえちゃんがちょっと慌てて、ぼくとおかあさんのところまでやってきた。


「母様」

「どうしたのサージ?」

「パンがないの」


 ぼくもサージおねえちゃんの「パンがない」にびっくりしたけど、おかあさんもびっくりしたみたいで、ぼくの背中を叩く手が止まった。

 赤ちゃんのぼく以外の家族はみんな、ごはんを食べるときには絶対にパンを食べるから、おうちでパンがなくなるなんてことは、起きたことがなかったと思う。


「三日前に買って来たばかりなのに……」

「最近、ルカの離乳食でパン粥をよく作っているし、昨日は雨で父様が家にいて、それに最近コルザがよく食べるから……」

「そういえば、そうだったわね……」


 コルザおねえちゃんは、自分の名前が呼ばれてチラッとこちらを見たけれど、テーブルの上にあったパンの最後の一枚に手を伸ばして、お皿のスープの中へ入れてしまった。

 ぼくがたくさん食べるのを見て、おかあさんやサージおねえちゃんが「ルカは早く大きくなるかもしれない」「もしかしたら、コルザよるもずっと大きくなるかも」と、言っていたのを聞いたコルザおねえちゃんは、ぼくには負けたくないと、たくさん食べるようになった。

 前は朝起きたらスープをお皿に一回しか食べなかったのに、最近はお皿におかわりをいれて二回食べている。そのたびにパンを食べるから、なくなってしまったのだという。


「困ったわ。今日はお休みの日だから、新しいパンは買えないし……」

「でも、そろそろルカ、パン粥が食べたくなると思うの。昨日の晩と今日の朝にお乳を飲んでいるから」


 おかあさんと、サージおねえちゃんは、二人して首を傾けて「うーん」と考え込んでしまった。

 ぼくがそろそろ眠たいなと思ったころに、おかあさんがサージおねえちゃんにお話しする声が聞こえてきた。


「サージ、今日はお芋を食べましょう」

「え、でもルカはお芋食べられるの? パン粥だって、すごく柔らかく煮ているのに……」

「お芋も同じように柔らかくできるわ。物置からジャガイモを取って来て頂戴」

「わかった」


 サージおねえちゃんはすぐにパタパタとどこかへ行ってしまった。おかあさんも、ぼくを赤ちゃんのベッドに戻すと、かまどの近くに置いてあった大きい黒いお鍋をテーブルへもっていって、キラリと光る”ナイフ”ってやつを用意している。

 お鍋とナイフを用意しているということは、ごはんを作るってことだ。さっきおかあさんは、パンじゃなくって、“おいも”っていっていた。“おいも”は今のところ聞いたことがないごはんだ。

 ぼくは眠たいのを我慢して、これからなにが起こるのか見ていたくて、ベッドの柵に顔を押しつけて、見てみることにした。


______________________________


 コルザおねえちゃんがごはんを食べ終わるより前に、サージおねえちゃんがお家の奥から、かご一杯に、なんだか黒っぽくて、丸い物を持って来た。柵にぐいぐい顔を押し付けて少しでも匂いを嗅ごうとすると、なんだかお家の外の匂いがした。

 コルザおねえちゃんもお外の匂いが嫌なのか、顔をギュッとして、スープの入ったお皿を両手で持って口をつけると、ぐいっと傾けると、すぐに空っぽのお皿を片付けに行った。

 ごはんを食べた後のお皿を片付けるのは、犬も人間も変わらないけれど、ここでは食べ終わったお皿にお水を入れて置かなければ、おかあさんが怒るのだ。

 コルザおねえちゃんがお水の入っている、”みずがめ”と呼ばれている入れ物からお水を出そうとしたけれど、お水を掬う大きなスプーンみたいな棒にお水は入っていなかった。コルザおねえちゃんはみずがめの中に頭を入れると、人間の耳でも痛くなるくらいの大きな声でお話する。


「おねえちゃん! みずがない!」

「じゃあ、井戸から汲んできてよ」

「なんで!」

「ないなら汲んでこないとダメじゃない。それに、わたしはお芋の皮を剥いているから」

「コルザもおねえちゃんとおなじことしたい!」

「コルザはまだナイフの使い方が下手じゃない。皮むきなんてできないでしょ? お芋の食べるところが減るわ」

「そんなことないもん! コルザだって、おいものかわくらいむけるもん!」

「そう言って、この間イチゴのヘタを取るのを任せたら、指を切ったじゃない。大人しく水を汲んできなさい」

「ヤダ! なんでおねえちゃんにめいれいされなきゃいけないの!」

 

 コルザおねえちゃんとサージおねえちゃんは、よくこうやって喧嘩を始めてしまう。

 犬だった時のおねーちゃんと妹分のぴょんもたまに喧嘩して、二人ともイライラして、そこにいるとどうにも不安で、居心地が悪かったぼくは、よく二人の間でおすわりしてみたり、どっちかの上に乗って「けんかはやめようよ」と顔を舐めてみたりしたものだ。

 だから、コルザおねえちゃんとサージおねえちゃんの喧嘩も止めたいのだけれど。


「あー、あう、あう、あー」


 残念ながら、人間の赤ちゃんのベッドの中にいるぼくは、二人の間へ歩いて行っておすわりもできないし、まだ人間の言葉を上手くお話することができないから、「けんかはやめて」すら言えないのだ。


 せっかく人間になったのだから、早くお話もできるようになりたいな。


 赤ちゃんの口だからお話がしにくいのかもしれない。コルザおねえちゃんぐらいに大きくなれば、たくさんお話もできるはずだ。そのためにはたくさん食べて、早く大きくならないと。

 ぼくが一生懸命におねえちゃんたちの喧嘩を止めたいと思っているのに気が付いてくれたおかあさんが、二人の喧嘩を止めてくれた。


「二人ともいい加減になさい! コルザ、お皿をお水に漬けないと、汚れが落ちないでしょう。お皿を洗うお手伝いが大変になってもいいの?」

「でも、コルザもかわむきのおてつだいしたいもん」

「もちろん。いっぱいお手伝いしてくれるならおかあさんも嬉しいわ。お水を汲むお手伝いの後に、皮むきを教えてあげる。それでいい?」

「……はーい」

 

 コルザおねえちゃんはまだちょっとだけ怒っているけど、かごより大きい入れ物を持ってお家の外へ出るドアに向かって歩いて行った。それを見ていたサージおねえちゃんが大きく息を吐くと、おかあさんをちょっと睨む。

 

「母様、本当にコルザに皮剥きをさせる気? すごく時間がかかると思うのだけど」

「サージ、コルザも今年の六の月で五歳になるわ。皮剥きぐらいのお手伝いもできないと、これから先、困るのはサージよ。それに、練習しないと何もできないでしょう?」

「それは……そうだけど……」

「それと、お水は料理の他にも、洗い物や洗濯にも使うのだから、サージも井戸に汲みに行くのよ。ヨハン先生のところまで走っていけるのだから、家の裏の井戸へ行くくらい平気でしょう? コルザばかりに押し付けないの」

「……わかりました」


 おかあさんのお話で、サージおねえちゃんもちょっとだけ落ち着くと、おいもって言われていた丸いやつの皮むきの続きを始めた。皮が剥かれたおいもは白くなっていて、サージおねえちゃんはそれをどんどん黒いお鍋の中に入れていく。

 コルザおねえちゃんがちゃぷちゃぷ音を立てながらお水を持って帰って来る頃に、遅く起きて来たおとうさんが、寝ているお部屋から出て来た。顔が火みたいになっているコルザおねえちゃんを見たおとうさんは、黙ってコルザおねえちゃんからの手からお水の入った入れ物を持って行って、入れ物のお水をみずがめの中にザパッと入れた。

 コルザおねえちゃんはすごくご機嫌になって、飛び跳ねているけれど、サージおねえちゃんは、ちょっとムッとした顔でおとうさんを睨みつける。


「とうさまありがとう!」

「ん。残りは、父様がやっておくから、コルザは母様とサージのお手伝いをしなさい」

「ちょっと、父様。コルザを甘やかさないでよ」

「どうせこれから顔を洗いに井戸へ行くから、水汲みくらい父様がやってもいいだろう? それに水の入った重たいバケツをコルザに持たせると、転んで家の中が水浸しになるかもしれない。掃除するのが大変になるのはサージじゃないか」

「それは……そうかもしれないけど……」


 サージおねえちゃんは「うー」と人間の唸り声を上げつつも、おいもの皮を剥く手は止まらない。サージおねえちゃんの手によってスルスルと黒っぽいおいもが、真っ白になっていく。

 

「サージだって、二年前は水汲みがきついって言って、よく父様が手伝っていたじゃないか。コルザはあの時のサージと今、同い年なんだから、父様が手伝ってもいいだろう?」

「……コルザはわたしよりお手伝いしてないのに」

「コルザはこれから覚えないといけないんだ。そのためには、たくさんお手伝いをしているサージは良いお手本になるだろう。村長の娘として、父様は誇らしいぞ」

「……それなら、よかった」


 サージおねえちゃんのご機嫌も良くなったみたい。ぼくは二人のおねえちゃんたちのご機嫌が良くなったのに、安心した。

 

「ところで、サージ。今朝のパンは?」

「コルザが全部食べちゃった」


 おとうさんはびっくりして、パンみたいな色の目を丸くする。そんなおとうさんに、コルザおねえちゃんは「コルザいっぱいたべて、おおきくなるの!」とコルザおねえちゃんは楽しそうに飛び跳ねながらお話していた。


______________________________


 コルザおねえちゃんがおかあさんに教えてもらいながら、ゆっくり剥いたおいもがお鍋に入ったら、サージおねえちゃんはそれをかまどのお鍋を吊り下げるところにかけて、おとうさんがお外から汲んできたお水を入れていく。

 

「母様、お水これくらいでいい?」

「もう少し、お芋が水に浸かるくらいでいいわ」

「はい」


 お水がたっぷり入ったら、お鍋を火の上に持って行く。


「サージ、コルザも、お芋やニンジンみたいに土の中から採れるお野菜を茹でる時は、お水から火にかけていくのよ」

「なんで?」

「お水からゆっくり火を通した方が、綺麗に美味しく茹で上がるからよ」


 おかあさんはたまにお鍋に入れた棒を揺らしながら、おいもを茹でている。

 その間にコルザおねえちゃんは家族みんなが使ったお皿を”たらい”ってやつで綺麗にしていて、サージおねえちゃんは次のごはんの準備のために、火の色みたいな食べ物を洗ったり、ナイフで切ったりしている。

 おとうさんはたまにぼくの方をチラッと見ながら、手元で何かしているけれど、まだ何をしているのかまではぼくにはわからない。

 

 コルザおねえちゃんがお皿を窓の側に置いて、サージおねえちゃんがごはんの用意を終わらせたぐらいに、お鍋からほこほこと、お乳とも違う甘い匂いが漂ってくる。


「そろそろいいわね。コルザ、ちょっと深くて大きいお皿を取って来てくれない?」

「これ?」

「そうそれ」


 コルザおねえちゃんが持って来たお皿へ、おかあさんがお鍋の中からおいもを取り出しては入れていく。

 おいもはさっきまでお外みたいな匂いがしていたのに、今は優しくてあったかい美味しそうな匂いが家中にするのが不思議だ。

 ぼくはそのあったかい匂いのするおいもが今すぐにでも食べたくて仕方がなくて、顔が痛くなるのも構わずに柵にぐいぐい押し付けて、少しでもその匂いを吸い込む。

 朝、パンを食べられなかったおとうさんもお腹が空いているのか、フラフラと匂いのする方へと歩いて行って、お皿に入れられていくおいもをジッと見つめる。


「なぁ、フレディス。芋を一つもらっても……」

「ダメよ。いつまでも寝ていて食べ損ねたあなたが悪いわ」


 おかあさんはおとうさんの伸びた手をぴしゃりと叩く。おとうさんは仕方がなさそうに黙って手をひっこめて、またぼくのそばに座る。

 おかあさんはお鍋に入ったおいもを全部コルザおねえちゃんの持っているお皿に移すと、おとうさんにお鍋の中の水を捨てて来て、洗ってくるように言って渡した。おとうさんは仕方なさそうにそれを持って、お家の外へのそのそと歩いて行った。


「コルザ、お皿をテーブルに置いたら、スプーンを持って来て。サージは大きいお鍋でスープを作り始めて頂戴」

「スープの他は?」

「お昼はベーコンとキノコを焼きましょうか。夜は、父様に頑張ってきてもらえたら嬉しいけれど」


 そういって、おかあさんはおとうさんをちらりと見ると、おとうさんはちょっと困ったように手に持って何かしていたものを持ち上げて、様子を確認するフリをした。


「かあさま、スプーンもってきたよ」

「ありがとうコルザ。コルザ、これから母様がやることをよく見てね」


 おかあさんはそういうと、コルザおねえちゃんを隣に座らせると、さっきお鍋から出したお皿の上のおいもをギュッと、コルザおねえちゃんが持って来たスプーンで潰した。

 

「こうやって、お芋を潰していって欲しいの。熱いからスプーンを使ってね。できる?」

「やる!」


 コルザおねえちゃんは座っていたところに立つと、スプーンを両手で掴んでおいもを一生懸命に潰す。おかあさんは、おいもの入っているお皿が動かないように抑えている。たまにサージおねえちゃんが、スープのためのお鍋をおかあさんに見せにくる、そのままサージおねえちゃんはスープを作るお手伝いをするみたいだ。

 

「おいも、つぶすの、たのしい! ねんどみたい!」

「コルザは粘土の出るところで遊んでいるの?」

「うん、こないだはかわのちかくであそんだよ! でももりはもっとたくさんいろんなものがあるって、ほかのこたちがいってた!」

「そう。たくさん食べて、たくさん遊んで、コルザ元気で偉いわね」

「コルザえらいの? コルザすごい?」

「えぇ、すごいわ。でも森へ一人で行ってしまったりはしないでね。母様との約束よ」


______________________________


 コルザおねえちゃんが疲れて来て、サージおねえちゃんと交代して、それからおかあさんが最後をちょっとだけ混ぜると、首を縦に振って手を止めた。


「これでマッシュポテトの完成よ」


 潰したおいも。マッシュポテトは、パン粥と違ってどろどろしていない。コルザおねえちゃんがギュッと潰したから、なんだか硬そう。あれじゃあ、赤ちゃんのぼくが食べられないんじゃないかな。

 ぼくは美味しそうなものが食べられないのが残念で、ベッドにゴロンと横になる。


「サージ、スープはどんな感じ?」

「あとは味を決めるだけよ」

「じゃあ交代するわ。サージは、ヤギでもツィーフェルでもいいから、パン粥を作る時と同じようにお乳をあたためてくれない?」

「わかった……?」


 サージおねえちゃんはさっきおいもを取りに行ったお家の奥、ものおきへ行くと、コップって言われている入れ物をそうっと運んできた。


「母様、ヤギのお乳もなくなるわ」

「そう。明日はいろいろ買わないとダメね」

「おかいもの? コルザも行っていい?」

「そうねぇ……。サージ、明日はお留守番してルカを見てもらっていい?」

「うん。その方が、わたしもいい」


 サージおねえちゃんは、ちょっと寂しそうに、でもほっとしたようにおるすばんすると言って、いつもパン粥を作ってくれる小さめのお鍋にコップの中のお乳を入れると、近くにあった棒で中をゆっくりとくるくるし始めた。


______________________________


 お乳が温まってきたいい匂いがしてきた。おかあさんはそこに、スプーンですくったマッシュポテトを入れて、サージおねえちゃんにもっとよくくるくるするように言った。

 サージおねえちゃんがくるくると棒を動かせば、お乳とおいもの匂いが混ざり合って、優しくて甘くて、そしてあったかい気持ちになれるような匂いがお鍋から、お家の中に広がって行く。

 

「そろそろいいわ。サージ、お皿に広げて冷ましてちょうだい」

「はい、母様」

 

 サージおねえちゃんがお皿に入れたものは、白くてべちゃべちゃっとしていた。


 もしかしてあれは、ぼくが犬だった時に食べた白いどろどろのごはん?

 でも、あれよりもなんだかどろどろしていないし、何よりささみが乗っていない。


 ぼくはお皿の中のものが何なのか知りたくて、起き上がろうとしたけれど、人間の赤ちゃんっていうのは思ったよりも好き勝手に動けない。じたばたと身体中を動かして、勢いをつければ何とか犬の時みたいにお腹を下にする恰好になれるのはわかったけれど、そこから犬の時と同じように歩くのはまだできない。

 ぼくがズリズリと動いて、ベッドの柵に顔を押し付ける前に、おかあさんがぼくをベッドから抱き上げて、お皿の前に連れて来てくれた。ぼくは鼻を動かして、白いべちゃべちゃの匂いを嗅ぐ。パン粥と違って、酸っぱい匂いがしないのが好きになれそうだ。

 

 パン粥を食べさせてくれる時のように、おかあさんがスプーンをぼくの口へ運んでくれる。ぼくは大きく口を開けて、その白いべちゃべちゃを食べる。


 パン粥はおかあさんのお乳を飲むときのように食べられたけど、この白いべちゃべちゃ、マッシュポテトはそうはいかないみたい。お口の中でもちもちとしていて、このまま飲み込んだら吐いてしまうかもしれない。

 吐くのは嫌だ。ぼくはマッシュポテトをどうにか飲み込めるように、お口の中を動かす。舌を使ってもちもちを食べやすいように潰すと、マッシュポテトからはお乳と一緒に、パン粥の時にはしなかった甘い味がするのがわかる。白いどろどろのごはんにちょっと似ている甘さだなと思いながら、ぼくは一生懸命に口を動かしてマッシュポテトを潰して、飲み込む。

 一生懸命に口を動かしたからか、マッシュポテトを食べても吐きそうにはならなかった。この調子でもっとたくさん食べよう。


「ルカ、もぐもぐ上手ね。偉いわ」


 ぼくはおかあさんに良い子と言われながら、マッシュポテトを綺麗に食べた。

 あの白いどろどろのごはんじゃなかったけれど、もちもちのマッシュポテトはパン粥よりも好きなぼくのごはんになった。

どうもレニィです。


日本だと離乳食にはすごく細かい段階がありますが、

海外だとそうでもないそうなので、そうでもなくしています。

とはいえ固形はさすがに海外でも離乳食にはしないので、

赤ちゃんが食べられるように、しばらくはべちゃべちゃやらどろどろやらです。


あとは赤ちゃんの成長速度があまりにもわからない……

その子によりけりという言葉を信じて、元わんこのルカくんの成長は、

そこいらの人間の赤ん坊より早い設定です。


さて、次はとうとう好き嫌いの概念を投入します。


そんな感じです。

どうぞよしなにー!!!

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