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美食家ルカの美味しいモノを探す旅  作者: レニィ
幼児期
16/29

15食目:豆スープの晩ごはん

「……それでそのこはなまえもおしえてくれないで、つかまえられたらおしえてやるなんていうんだ。そのうえ、ぼくのことをこぶたちゃんってよんで、ぼくはぶたじゃないのに! おかわりっ!」


 ぼくは三回目のお代わりをサージおねえちゃんにお願いする。

 今日の晩ごはんは豆のスープ。つぶつぶの小さいレンズ豆と一緒に、細かく刻んだ玉ねぎと、じゃがいも、小さな四角に切られているベーコン、それにサージおねえちゃんは隠したつもりだろうけど、すっごく細かく切ったにんじんも入っている。

 でもにんじんの匂いよりも、一緒に入っているセイボリーっていうハーブのピリッとした匂いの方が強くて、あんまり気にならないので、お代わりができる。


「ルカ、お代わりはこれで最後ね」

「どうして?」

「これ以上食べたら、明日の朝はスープ無しになるわよ」

「……わかった」


 豆スープは次の日の方が、豆が溶けてドロドロになって美味しいから、明日のお楽しみは残しておきたい。

 それに朝ごはんにスープがないと、お腹いっぱいにならない。


「それにしても、灰色の髪に、青い目の子なんて、あたしも見たこともない」

「男の子? それとも女の子?」

「それもわかんないの。かみのけがみじかいからおとこのこかなとおもったけど、でもおようふくはワンピースみたいだった。あれ? でも、ズボンだったし……あと、にゃあとかにぃとかいう」

「にゃあとか、にぃ……?」


 コルザおねえちゃんが不思議そうな顔でスプーンを咥えたまま首をかしげる。

 サージおねえちゃんをお行儀が悪いとコルザおねえちゃんを叱ってから、ぼくにお代わりのスープを渡してくれる。


「訛りがあるのかしら。その子」

「なまり?」

「住んでいる場所によって、話し言葉が変わったりすることがあるの。にゃあとか、にぃとかも、もしかしたら、訛りで、その子は遠くから来たんじゃないかしら」

「父様は何か知らない?」


 おとうさんは空っぽになったスープの大きなお皿をサージおねえちゃんに渡しながら、話してくれる。


「たぶん、薬売りさんのお孫さんだろう」

「くすりうり?」

「薬を売って旅をして歩く人のことだよ。その方も長い間、旅をしながら、薬を売って生活をしていたそうだが、歳を取られたから旅をやめて、定住したいと申し出があったんだ。ヨハン先生も今より扱える薬が増えれば、村の助けになると賛成されてね。一昨日、許可を出したんだ」

「それじゃあ、父様はルカの言う灰色の髪の子のことは、よく知っているの?」


 サージおねえちゃんはおとうさんにお代わりのスープを置きながら質問する。


「よく、と言う程は知らないが、何も知らないわけではないよ」

「じゃあ、あのこがどんなこなのか、おしえて、おとうさん」


 ぼくはおとうさんに教えてほしいとお願いする。

 おとうさんはお代わりのスープを口に入れると、ちょっと意地悪そうに笑ってぼくの方を見る。


「ダメだ」

「どうして?」

「だって、その子はルカが捕まえたら教えてくれるって言っていたんだろう?先に聞いてしまうのはズルになっちゃうじゃないか」

「ずる?」

「うーん、相手の子を騙している、みたいな感じだな」

「だますの?」

「だって、その子は捕まえたら教えてくれるんだろう? 捕まえてもないのに、ルカが知っていたら、それは騙している事にならないか?」

「むぅ……」


 たしかに、おとうさんの言う通り。先に知っていたら、あの灰色の子はきっと、吊り上がっている目をもっと吊り上げて、嫌な顔で笑うと思う。

 ぼくはおとうさんにその子のことを聞くのをやめて、お代わりのスープを口に運ぶ。


「薬売りと言っていたけれど、もしかしてその方、魔女だったりしない?」


 おかあさんが不安そうにおとうさんに聞く。

 おとうさんはおかあさんが何を心配しているのかわかっているみたいだけど、ぼくとコルザおねえちゃんは“まじょ”という言葉がわからないので、どうしておかあさんが心配そうにしているのかがわからない。

 サージおねえちゃんは“まじょ”についてはわかっていそうだけれど、あんまり心配していない。心配しているおかあさんのことを不思議そうに見ている。


 おとうさんはうーんと唸って答える。


「どうだろう。仮に魔女だとしても、それを自分から言うような人は少ないだろうし。魔女は集まると言うだろう? 集まりから遠く離れたくないだろうし、彼女はお孫さんと二人だけでこの村へ来たから、その可能性は薄いんじゃないかと思うんだが……」


 おとうさんはおかあさんを安心させたいと思っているけれど、あんまりはっきりとはお話してくれない。そのせいで余計におかあさんは不安になっている。

 ぼくとコルザおねえちゃんは、おかあさんが心配する“まじょ”がなんなのかもっとわからなくなった。

 

「まじょってなあに?」

「あたしも知りたい。まじょって何?」


 ぼくとコルザおねえちゃんの質問に答えたのは、おかあさんじゃなくって、サージおねえちゃんだった。


「魔女は、精霊様を見て、精霊様と言葉を交わすことが出来る人だって、読んだことがあるわ。……本当かどうかは、知らないんだけど」


 サージおねえちゃんはもっと詳しく知っていそうな、おかあさんの方を見る。

 おかあさんはスプーンを置くと、ぼくたちに“まじょ”がなんなのか教えてくれる。


「サージのいう事が間違っているとも言えないのだけれど、それはあくまで伝説のようなお話なの。魔女は、大人になっても精霊様のお側に居ることができるそうなの。魔法は精霊様からお力を借りて使うものだから、精霊様のお側に居られる魔女は、上級よりも遥かに上の魔力を持って、難しい魔法すら軽々と使う事ができる珍しい人たちなの」

「つまり、上級の魔法が使えるものすごい人ってこと? もしそれが本当なら、うちの村なんかに居ていいの?」

「コルザ……うちの村なんかというのは、父様、悲しいぞ……」


 おとうさんは泣きそうな目でコルザおねえちゃん見ている。

 

 ぼくにはよくわからないのだけれど、町への学校へ通っているコルザおねえちゃんからしてみると、ぼくたちの住んでいるレーヴァルト村は、大変な“いなか”なのだそうだ。

 “いなか”なので、そうそう人はこないし、町で仕事が見つかった若い人たちは、村に帰って来ることもなく、町に住み続けて、そのまま町の人になってしまうのだという。


「父様には悪いけれど、もしそんなにすごい人なら、レーヴァルト村よりも、町へ住んだ方が、都合がいいのはたしかだと思うわ。それに、魔女の集まり? をどこでやるかは知らないけれど、町に居た方がどこへでも行きやすいんじゃないの?」


 サージおねえちゃんの言う通り。この村から出るには、周りを囲んでいる森を通っていかないとといけない。

 町へ繋がる道がきちんと通っているのはたった一つだけで、いろんなところへ行こうとするには、この村はあまりいい場所じゃない。


「でも上級以上の魔力があるんでしょう?なら山の中にあるうちの村から、その集まりに行くなんて、簡単なことなんじゃないの? それよりも、そんなにすごい人かもしれないのに、どうして母様はその人がまじょかもしれないのが、不安なの?」

「……大きな力を持っていることが、必ずしもいい事とは言えないのよ。大いなる力には、大いなる危険が付きものなの。本来、上級以上の魔法が使える人は、王都に居るべきなの。……でも中には、それを嫌がって、他所で暮らす人もいる。それはあまりいい事ではないの」


 おかあさんはテーブルの上に置いたスプーンをジッと見つめている。


「全ての魔女が悪い存在ではない。でも、はぐれの魔女が絶対に安全とも言えないの。だから、父様や村の大人たちが安心だと思えるまで、みんなはあまりその方に近づかないでちょうだいね」

「そうだな……不親切に思えるかもしれないが、しばらくこの村に慣れるまでは、あまり近寄らないようにしなさい」

 

 おねえちゃんたちは、わかったと返事をする。

 でもぼくは、

 

「……おとうさん。あたらしいこにもちかづかないほうがいいの?」


 ぼくはあの子を捕まえないと名前も、男の子か女の子かも教えてもらえない。

 そのためには、近くに行かないといけない。

 

「うーん……確かにあまり、近づかないで欲しいが……しかし、まだあの子は五歳だというから……」

「母様は近づかないで欲しいと思うわ。五歳であっても、もしかしたらの事はあるでしょうし……」

「だがフレディス、そうすると、その子だけ村の子どもたちとの違いが出てしまうだろう? いくら旅をしていたとは言っても、その子だけが勝手に森の中へ入ってしまうと危ないし……」

「リヒトのいうこともわかるけど、仮に魔女だったとしたら、その子は魔女の直弟子になるでしょう? それにしばらくは越して来たばかりで、落ち着かないでしょうから、落ち着いてから、子どもたちにも紹介をして森へ連れて行っては……?」


 おとうさんとおかあさんはしばらく話し合いを続けていたけど、最後にはやっぱり灰色の子にもあまり近寄らないようにと言われてしまった。

 

 ぼくはちょっとだけ、納得できないまま冷めてしまったスープを掬って食べた。


______________________________


 おとうさんとおかあさんは、新しい灰色の子には近づくなと言っていたけれど、


「まてーっ!!」


 ぼくはその日も灰色の子を追いかけて、果樹園を走っている。

 

 果樹園のサクランボは真っ赤にツヤツヤと輝いて、収穫できるようになった。

 ぼくはそのお手伝いを頑張っていたわけなのだけれど、それを邪魔するのが、村のどこからやって来たのかもわからない灰色の子だ。

 灰色の子はいつの間にかサクランボの木の上に居て、ぼくや果樹園のおばさんとおじさんがサクランボを採る前に、木についているサクランボを取っては食べていた。

 

「かってに! サクランボを! たべるなーっ!!」


 果樹園のサクランボはぼくだけの物じゃない。はちみつに漬けた物は町へ持って行ったり、りょうしゅ様に納めるぜいになる。冬を越すための大切な食べ物でもある。

 村の大切なしげんだと、カールおじいちゃんもおとうさんも言っていた。それを勝手に食べる事は悪い事なのだと、ぼくはカールおじいちゃんから教わった。


 灰色の子はまだ村に来たばかりで、それを知らないんだと思って教えてあげようとしたけど、いつも灰色の子は、「にぃに追いついたら、話を聞いてやってもいいにゃ」と言っては、木から木へと飛び移って、どこかへ行ってしまう。

 だからぼくは、灰色の子を追いかけるしかない。


 これは果樹園と、村と、コルザおねえちゃんの好物と、ぼくのご褒美のサクランボを守るための大切な追いかけっこだ。


「まてったら! まてーっ!!!」

「待てと言われて、素直(すにゃお)に待つバカはいにゃいにゃ!」


 灰色の子はにゃはははと、甲高い声で笑いながら次から次へと木に飛び移る。

 ぼくはまだ木登りのやり方を教えてもらえていないから、地面を走って追いかけるしかない。


 追いかけている途中で、おばさんとおじさんがまだ収穫には早い、水っぽくって青臭い実ばかり生っている木に手を付けようとしていたから、慌てて大きな声で教えてあげた。


「おばさん! そのきはまだはやいよ! にほんとなりのやつはだいじょうぶ!」


 おばさんたちがその木から二本隣の木へ動いたのを見て、ぼくは安心して灰色の子を追いかける。

 早くこの子に追いつかないと、あの木のサクランボも取られちゃう。

 

 ぼくが犬の時みたいに利くのは、鼻だけだから、耳におばさんとおじさんのお話は入ってこなかった。


「……ルカ坊ちゃんは、どうして実の色を見てもいないのに、まだ熟していないのがわかったのかしら?」

「毎日あぁして、新入りちゃんを追いかけながら実の様子も見ているんじゃないのかい?」

「実の色がどのくらい変わったか、覚えているっていうの?」

「ほらあの子、花粉付けの時だって、やたらと物覚えが良かったじゃないか」

「じぃさんみたいに、実りの精霊様の助けがあるのかもしれないなぁ……全く、うちの後継ぎじゃないのが、悔やまれるぜ」


______________________________


 ぼくは灰色の子に追いつこうと、必死に走った。それはもう、犬の時のように。

 走って、走って、とにかく走って、走り続けて……


「ま、まってぇ……」


 そして疲れて、いつも追いつけない。

 

 ぼくは犬の時みたいに、はぁはぁと口で息をしないといけないくらいに疲れてしまった。こうなると、身体も疲れて痛くなっている。特にお腹の辺りが痛くて、地面に寝転んで休んで、木の上を見るしかない。

 ぼくはこんなに疲れているのに、灰色の子は全然平気みたい。ぼくが見上げている木の太い枝に座って、相変わらず泥だらけの足をプラプラさせながら、吊り上がっている目を楽しそうに細くして、ぼくを見下ろしている。


「にゃあんだ。もう終わりか、子豚ちゃん」

「ぼ、ぼくは……ぼくは、ぶたじゃない。……ぼくは、いぬ、だ」

「へぇ、そうかい。んにゃら、にぃはねこだにぃ」

「ね、こ……?」


 ねこ。

 それは犬だった時のおねーちゃんが、時々ぼくを無視してまで「かわいい」と言い続けていた生き物の名前だ。

 三角の耳に、吊り上がった鋭い目、くねくねと動く身体をしていて、よくジャンプする。てれびって四角いやつの中によく出て来ては、ぼくのことを相手にもしない。びょういんにもたまにいて、にゃあと鳴いたり、フーッと唸ったりする。


 そしてねこは、あの虹の橋のふもとにもたくさんいた。

 

「キミは……キミは、“にじのはしのふもと”からきたの?」

「おみゃあ、バカにゃにょか? にぃが死人に見えるかにぃ? あまりにも追いつけにゃいからって、お化けか(にゃに)かだと勘違いして……」

「そうじゃなくって、えっと、かおがもじゃもじゃのけだらけのひとがいる、“にじのはしのふもと”のこと、しらない?」


 灰色の子は、びっくりして目がまん丸になった。

 けどすぐにその目はまた細くなって、口もにぃと意地悪そうに吊り上がっていく。


「にゃるほどにゃあ。おみゃあもか」

「え?」

「それも、にぃを捕まえられたら教えてやるにぃ」


 ひらり、と。灰色の子は、ぼくのすぐ横に飛び降りて来ると、寝転んでいるぼくの鼻を人差し指でぐぃと押した。

 灰色の子の指からは、とても苦い臭いと香ばしいお日さまの匂いがした。


「今日の追いかけっこにゃあ飽きたし、そろそろばっちゃの手伝いしにゃいと拳骨落とされるからにぃ。じゃあな、子豚ちゃん」


 そう言うと、灰色の子はスタスタと歩いて果樹園から出て行ってしまった。

 ぼくは灰色の子が果樹園から出て行ってからやっと、身体の疲れが抜けて起き上がることができた。


「……だから、いぬだっていってるのに」


 ぼくは疲れた身体を動かして、またサクランボの収穫のお手伝いに行った。

 くたくたになった帰りにスヴェンおじさんがサクランボの初物をくれたけど、一番いいやつのじゃなかった。

給食のポークビーンズは好きだったけど、

グリンピースご飯は拷問だと思ってた。


どうもレニィです。


グリンピースご飯のグリンピースだけを箸で取り除いて

塩味のするご飯だけ味わっていたら、

同じ班の子に「無駄に器用なことしてるね」

と言われたことがあります。


クラムチャウダーも同じようにしてあさりだけ抜いて

食べていましたね。


さて、追いかけっこが始まりました。

子豚ちゃんは追いかけるだけでへとへとです。

でもそんなに簡単に瘦せられないんだよね。


もうちょっと頑張って更新したいですね。


そんな感じです。

どうぞよしなにー!!!

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