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美食家ルカの美味しいモノを探す旅  作者: レニィ
赤ちゃん期
11/29

10食目:真っ赤なリンゴと十の月

 最近、サージおねえちゃんもお家の外へ出るようになった。

 コルザおねえちゃんと一緒にお家を出て、お日さまがいなくなるちょっと前になると、土の匂いをたくさんくっつけて帰ってくる。


 コルザおねえちゃんは、木の実ときのこをたくさんカゴに入れて帰ってくる。木の実は虫に食べられていないか調べてから、物置にしまう。きのこはお日さまがいる間にお家の外、灰色の変な高さの壁よりも内側にある”おにわ”ってところに置くと、どうしてだかカラカラに硬くなる。それから物置だ。

 サージおねえちゃんは、時々ドロテーと一緒に帰って来る。ぼくの嫌いなにんじんの他にも、じゃがいも、玉ねぎ、ツンとする臭いのネギ、緑色のほうれん草、赤いラディッシュ、黄色いマイスライデ、青いザオプースト。たくさんの野菜を持って帰って来る。


 野菜はその日の晩ごはんになる。スープ、野菜のスティック、野菜のチーズ焼き、マウルタッシェに、野菜ペーストが乗ったパン。

 歯が生えて来たぼくは前よりもいろいろな、しかもたくさんのごはんを食べることができるようになった。

 おかあさんがスプーンを運んでくれるのを待っているよりも、自分から掴んで食べる方が早いなと気が付いてからは、がんばってスプーンを掴んで食べてみている。口の周りがベタベタになって、お洋服にこぼれることも多いけど、自分で食べられるようになったことの方が嬉しくて、楽しいからあんまり気にならない。

 

 その日のお夕飯にならなかった野菜は次の日、おねえちゃんたちがお外に行っている時に、おかあさんがいろいろ工夫して物置にしまえるようにしている。

 ぼくはそれをジッと見ていたり、その後ろを付いて行ってみたり、足だけで立って、歩く練習をしてみたりしている。

 だって足だけで歩ければ、おねえちゃんたちみたいにお外に行って、美味しそうなものをお家に持って帰ってきて、もっとたくさん食べられるようになると思う。だから歩けるようになりたいのだけど、これも足だけで立つのと一緒で難しい。

 前みたいに頭を打ってしまうことはほとんどなくなったけれど、何かを掴まないで立ってから倒れてしまわないように足を少し動かすとドシンとお尻を打って倒れてしまうのは痛いし、悔しい。


______________________________


 今日もおかあさんとサージおねえちゃんが晩ごはんの用意をしている間に、コルザおねえちゃんと一緒に歩く練習をする。

 コルザおねえちゃんはぼくの手を持って一緒に歩いてくれて、途中でお尻を打って倒れるとぼくを抱っこして、おまじないをしてくれる。


「せいれいさん、せいれいさん、いたいのいたいの、もっていけー」

「いーあー」

「そうそう、もっていけー」

「いーあー!」


 立って歩く練習と一緒に、おしゃべりもできるように頑張ってみている。

 といっても、相変わらず「あー」とか「うー」とか「いー」ばっかりが口に出る。人間の赤ちゃんの口はまだまだ上手く動いてくれない。


「コルザ、おまじないもいいけど、あんまりルカに無茶させないでよ。そんなに何回もお尻を打ったら、ルカだって痛いわよ?」

「でも、ルカ、いたいってなかないよ?」

「それでもあんまり無理させないの」


 サージおねえちゃんはぼくを抱っこするとカゴに座らせる。

 サージおねえちゃんはどうしてかぼくがいろんなことをするのをやめさせたがる。サージおねえちゃんの前だと、立つ練習も歩く練習もなかなか上手くできない。

 

「サージ、ルカが心配なのはわかるけど、ルカだって練習しないと何もできなくなってしまうわ。たまにはそっと見ているだけにしてあげなさい。コルザ、晩ごはんが出来るわよ。スープを運んでちょうだい」


 コルザおねえちゃんが晩ごはんのスープをテーブルに運ぶお手伝いをする。今日もおとうさんは遅くに帰って来るのかも。コルザおねえちゃんがお家で一番大きいスープのお皿を運んでいないから。

 ぼくはカゴから降りて、手と足で歩いてテーブルまで行って、おかあさんと一緒に座る椅子を掴んで立って、鼻を動かす。


 今日の晩ごはんのスープにはたぶんソーセージが入っている。あとチーズ焼きの匂いもする。チーズは犬だった時から好きな匂いの一つだからすぐにわかる。それといつもの酸っぱい匂いのパン。

 

 おねえちゃんたちが椅子に座ると、おかあさんが椅子に掴まっていたぼくを抱っこして座る。

 おとうさんがいないから、ごはんの挨拶はおかあさんがして、みんながスプーンを手に取る。


 ぼくもスプーンを手に取って、スープに入れる。スープに入っている野菜は柔らかいから、口に入れてちょっと嚙めば、飲み込める。野菜を噛むと、じゅっとスープが口の中に出てくる。

 甘いとも、酸っぱいとも違う、口がキュッとなる美味しさの味がお塩のしょっぱいって味だと覚えた。

 それからチーズ焼きに手を伸ばす。チーズ焼きは上手く掴まないと、ツルツルと滑って手から逃げて行ってしまうから、気を付けて掴んで口に入れる。チーズは口の中にくっついたりして食べにくいけど、しょっぱいの中にたくさんの甘いがあって、美味しい。


「ルカ、美味しい?」

「んま、まんま、んま」

「そう、よかったわね」


 “おいしい”っていいたいけど、赤ちゃんの口じゃ難しいみたい。おかあさんはぼくが何を言いたいのかわかってくれるけど、もっとお話が出来るようになりたい。


「そういえば、カールおじいちゃんがもうすぐリンゴの収穫が出来るかもしれないって言っていたわ」


 サージおねえちゃんのお話からリンゴと聞こえて、ぼくはスプーンを動かす手を止めた。

 リンゴは犬だった時もぼくの好物だった。甘くて、シャリシャリしている。犬だった時の家族が食べている横で、良い姿勢でおすわりしていると、必ず誰かがくれた美味しい食べ物。

 人間になってもリンゴが食べられるかもしれない。ぼくはどうすれば食べられるのかをしっかり聞けるように、耳をそばだてた。


「あら、今年はちょっと早いのね。いつもなら十の月で月が赤くなって、もう少ししてからなのに」

「まだおつきさま、オレンジいろだよ?」


 コルザおねえちゃんが窓の外を見る。ぼくもつられてそっちをみると、プラムみたいな形の月が黄色よりも濃い色をしている。あれがオレンジ色なんだなと、ぼくは覚えた。

 

「もしかしたら、誕生月のお祝いと収穫のお祝いの日は重なるかもしれないわね」

「しゅうかくのおいわいって、なんでやるの?」

「リンゴにも、いろんな種類があるの。その中でも、一番赤くて宝石みたいな色をした種類のリンゴ、エプフェルビーンは、実りの精霊様が、人間たちが病気で困ることが少なくなるようにと祈って贈ってくださったリンゴなの。だからエプフェルビーンを収穫できることを、人間は実りの精霊様に感謝するの。そのために収穫のお祝いをするのよ」

「ふぅん」

「コルザ、わかってないでしょ?」

「そんなことないもん。リンゴがとれるのをありがとうってするおいわいなんでしょう?」


 ふふんと、コルザおねえちゃんがサージおねえちゃんに言ってみせる。おかあさんはそれをクスクス笑いながら見ている。


「まぁ、だいたいコルザの言う通りよ」

「母様、もし……もし、誕生月のお祝いと収穫のお祝いが重なったら、どっちをやるの? 誕生月のお祝いは家族だけでお祝いするの?」

「そうね、もし重なったら、一緒に広場でお祝いすることになると思うわ。収穫のお祝いも、七歳になる子どもの誕生月のお祝いも、両方とも大切なお祝いだから村のみんなでお祝いしないと」

「そう、よね。……はぁ、月が赤くなって十の月にならなければいいのに」

「月が赤くならなかったら、リンゴも収穫できないわ。サージだって、エプフェルビーンのアップルパイが好きでしょう? 毎年収穫のお祝いで食べられるのを楽しみにしているじゃない」

「……うん」

「アップルパイ! コルザもたのしみ!」

「もし誕生月のお祝いと収穫のお祝いが重なったら、ツッカバオムケーキとアップルパイが両方同時に食べられるかもしれないわ。サージも楽しみじゃない?」

「……そうね、ちょっとだけ楽しみかも。でも、ツッカバオムケーキとアップルパイを一緒に用意することになったら、ベッカーさんとヨハンお兄さんが大変ね」

「そうね、そうなったら村中が大変になっちゃうわ」


 サージおねえちゃんはちょっとだけ笑って、ごはんの続きを食べた。

 サージおねえちゃんは嫌がっているけど、ぼくは早く月が赤くなってリンゴが食べられるようになって欲しいなと思った。 


______________________________

  

 サージおねえちゃんが、リンゴの収穫が明日にでもできそうだとお話して、おとうさんが久しぶりに早く帰って来た夜。

 お月さまが真っ赤に輝いて、十の月がやって来た。 


______________________________

  

 その日はお家の中も外も大騒ぎだった。

 ぼくがまだ眠たい時間に家族はみんな起きて、急いで朝ごはんを食べていた。

 朝ごはんを急いで食べたおとうさんとコルザおねえちゃんは、”かじゅえん”ってところへリンゴをとりに行くのを手伝いに行った。


 サージおねえちゃんはコルザおねえちゃんがしていた時みたいに、身体を綺麗にして、新しいお洋服を着る準備をしている。サージおねえちゃんの新しいお洋服はマッシュポテトみたいな色をしていて、サージおねえちゃんの真っ赤なツルツルの毛の色が目立って見える。

 おかあさんはサージおねえちゃんのツルツルの毛を綺麗にするために、あっちこっちに動かしている。ツルツルの毛は紐みたいになったり、丸くなったり、なんだか不思議な形になっていく。

 おかあさんに毛を整えてもらっているサージおねえちゃんが、小さな声でお話する。


「……母様、今日はジョゼットも来る、わよね?」

「……そうね。ジョゼットちゃんも今日が七歳のお祝いになるもの」


 おかあさんはおねえちゃんの頭を優しく撫でるようにして、整えた毛に綺麗な紐を付けていく。


「今日は収穫のお祝いも一緒だから、村中の人たちがみんな広場に集まるわ」

「……わたし、そんなところに本当に行っていいのかな? だってまだ、あの時のこと……」


 サージおねえちゃんから、不安と怖いって気持ちが伝わってくる。新しいお洋服をギュッと、手で掴んでいるのが見える。

 

 ぼくは、犬だった時と同じように、サージおねえちゃんの近くへ手と足で歩いていくと、身体を椅子に座っているサージおねえちゃんの足にぴったりとくっつける。

 見上げた先にあるサージおねえちゃんの灰色の目がちょっとびっくりしている。ぼくはその顔をジッと見つめ続ける。

 

 サージおねえちゃんのお洋服から手が離れて、ぼくの頭を撫でてくれた。

 ぼくを撫でてくれるサージおねえちゃんから、ちょっとずつ、不安と怖いが消えていくのがわかる。

 

 よかった。赤ちゃんのぼくにも、誰かの側にくっついて、安心させてあげることはできるみたいだ。


 おかあさんもサージおねえちゃんのことを抱きしめて、静かに、優しい声でお話する。


「大丈夫よ。村の人たちは、たしかにあの時のことをみんなが覚えているでしょう。忘れてはいけないことだから。でもそれと、今日のお祝いは別よ。それにみんな、農場のお手伝いを頑張っている最近のサージのことを知ってくれているわ。だから、広場のお祝いに行っても大丈夫。新しいワンピースも似合っているもの」

「……ありがとう、母様」


 サージおねえちゃんが笑ってくれた。

 これでもう安心。


 おかあさんも大丈夫だと思ったみたい。

 サージおねえちゃんから離れて、ぼくを抱っこすると、ぼくのお洋服を軽く叩いてからサージおねえちゃんの膝の上に乗せる。


「さぁ、今日はみんなが忙しいわ。お誕生月のお祝いのケーキは二人分。パンはお祝い以外にもたくさん。その上、収穫のお祝いのためのアップルパイを村中の人が食べられる分よ!」

「ドロテーさんが言っていたわ。ヨゼフお兄さんがパイ生地を作るために張り切っているって」

「あら、じゃあその出来を見に行かないと。さぁ、母様はお手伝いに行くわ。サージは服を汚さないように気をつけて、ルカを家で見ていてちょうだい。夕方になったら父様が迎えに来てくれるから、父様とルカと一緒に広場に来てちょうだい。母様とコルザが待っているから」

「わかったわ。……必ず、広場へ行く」


______________________________


 お日さまが居なくなりそうな頃に、おとうさんがサージおねえちゃんとぼくを迎えに来てくれた。

 ぼくはサージおねえちゃんに抱っこされてお家の外へ出る。

 空を見ると、真っ赤なまん丸のお月さまが、顔を覗かせているのが見える。


 ベェと鳴くツィーフェル。ふごふごという音とちょっと臭いにおいがするお家を通り過ぎると、コッコッコッというガルバ鳥の声が聞こえないくらいに、たくさんの人の声が聞こえてきた。


 ざわざわ、わいわい、きゃーきゃー。


 それに匂いも違う。乾いた草と土の匂いが消えてしまったみたい。

 今日する匂いは、とっても美味しそうな匂い。


 香ばしく焼けた鳥の匂い。

 ホクホクの甘い香りが漂うかぼちゃの、きっとこれはポタージュスープだ。お乳の匂いが混ざっている。

 こんがり焼けたチーズ焼きが、しょっぱい匂いを運んでくる。

 パンの酸っぱい匂いがたくさん。きっとおたんじょういわいの小さいパンがたくさんあるんだろうなぁ。

 甘い匂いで、おいで、おいでとぼくを呼んでいるのは、ツッカバオムだ。今日はたんじょうつきのおいわいだから、ケーキになっているはずだ。


 ぼくの口の中でよだれがたくさん出てくる。

 でも口から出ちゃったら、サージおねえちゃんの新しいお洋服によだれをつけて、汚しちゃう。

 ぼくはサージおねえちゃんの新しいお洋服を汚さないようにするために、一生懸命によだれを飲み込む。


 サージおねえちゃんもぼくと同じように、ごくんっと喉を鳴らした。けどそれは、たくさんのごちそうの匂いがするからじゃないみたい。


 サージおねえちゃんの歩く速さが遅くなって、隣を歩いていたらおとうさんが先に行ってしまっている。

 ぼくを抱っこする腕が、ギュッとなって、ちょっと震えている。

 

 怖い。

 不安。

 

 そんな気持ちがまたぼくに伝わってくる。

 おとうさんはサージおねえちゃんと離れているのに気がついていない。どんどんたくさんのお家がある場所を歩いて行って、先へ行ってしまう。

 おとうさんが行ってしまった先には、見たことのないものがたくさんあった。

 

 ごちそうがいっぱい乗った大きなテーブルがたくさん置いてある。

 丸くてオレンジ色の明るいあかりが、広い場所を囲むようにたくさんぶら下がっている。

 人もたくさんいて、みんなが楽しそうにお話している。


 おいわいのパンを手に取ろうとした小さい子が大人に怒られても、笑って走り回っている。

 大人は甘いけどツンとする匂いの飲み物を飲んでいて、大きな声でお話しては笑っている。


 楽しそうな気持ちと、美味しそうな匂いに、あったかいオレンジ色の明るい場所。

 とっても居心地が良さそうで、ぼくは早くそこに行きたい気持ちになった。


 だけどサージおねえちゃんは違う。

 出来るなら、行きたくないと思っていて、オレンジ色が囲むところへ足を入れようとしてくれない。


 犬だったら、おさんぽの時みたいに引っ張って行けばいいけど、今のぼくは人間の赤ちゃんで、好きに歩き回れないし、サージおねえちゃんを引っ張る力もない。

 おとうさんがサージおねえちゃんを連れて行ってくれたらよかったのに、おとうさんはいつの間にか、他の大人たちに連れて行かれてしまった。

 

 困ったなぁ。


 でもそんな困った気持ちがどこかへ行ってしまう匂いが、ぼくの鼻に入ってきた。


 知っている。覚えている。

 甘くて、ちょっとだけ酸っぱい匂い。


 りんごだ。りんごの匂いだ!


 ぼくは鼻を動かして、どこからりんごの匂いがするのか探す。

 りんごの匂いは、囲まれている広い場所の真ん中からするみたい。

 それに、このりんごの匂いは、ぼくを呼んでいるみたい。まるで、ツッカバオムみたいに。


 あぁ、りんごが食べたい。

 

 ぼくはサージおねえちゃんに抱っこされているのも忘れて、りんごの匂いのする方へ手を伸ばす。身体がもう少しで落っこちそうになって、サージおねえちゃんが慌ててぼくを抱っこし直した。

 

「ルカ、どうしたの? そんなに動いたら危ないわ」

「あぇ! あえー!」

「あえ……? もしかして、あれ?」


 サージおねえちゃんはぼくの手を伸ばす方へ向かって歩いて、囲まれている中に入っていく。

 ぼくは、ぼくを呼んでいるりんごの匂いに夢中で手を伸ばして、伸ばして、サージおねえちゃんのおかげでとうとうたどり着いた。


 そこにあったのは、パンみたいに香ばしいけど、お乳みたいな甘い匂いのするケーキみたいな綺麗な丸い形をしたもの。

 その中から、甘くて酸っぱい、懐かしいけど、ツッカバオムみたいにぼくを呼んでいるりんごの匂いがする。

 

 ぼくがいま食べたいものはこれだ!


 ぼくはそのケーキに手を伸ばすけど、サージおねえちゃんはぼくをケーキから離れたところへ連れて行こうとする。


「アップルパイが気になるの? でも、ルカはまだダメよ。ハチミツを使ってるから、赤ちゃんはまだ食べられないの」


 サージおねえちゃんは仕方がなさそうに笑って、ぼくの頭を撫でる。

 ぼくはサージおねえちゃんの灰色の目をジッと見つめて、欲しいなってアピールしてみるけど、サージおねえちゃんがアップルパイをくれる様子はない。


 目の前にあるのに食べられないなんて。


「あーうー……」


 ぼくはがっかりした。


「サージ! 来たのね!」


 そう言ってぼくとサージおねえちゃんの側にきたのは、ドロテーだった。


「……ドロテーさん、こんばんは」

「こんばんは。それから、七歳おめでとうサージ」

「ありがとう、ございます」

「抱っこしているのは、ルカだよね?」

「あぅ!」

「わぁ、元気。こんばんは、ドロテーだよ」


 ドロテーがぼくの頭をくしゃくしゃって撫でる。

 今日のドロテーは、土の匂いよりも、りんごの匂いがたくさんする。


「なかなか来ないから、フレディス様もコルザも心配していたの。もしかしたら、広場に入って来られないんじゃないかって、今日は村中の人がいっぱいいるから。でもよかった。ちゃんと、サージだけでも入って来られたね」

「あ、そういえば……ルカがアップルパイの方に手を伸ばすから、落とさないようにって歩いていただけなのに、わたし、広場に入っていたんだ」


 サージおねえちゃんからは、もう怖いも不安もなくなっていた。

 緊張はしているけど、安心もしている。


 よかった。サージおねえちゃんから、怖いも不安もなくなって。


 でもそれもほんの少しの間だけだった。


「サージ? サージが居るの?」


 明るい女の子の声が聞こえてきた。

 でもその女の子の声は楽しそうじゃない。

 怒っていて、悔しいと思っていて、そして、嫌いだって思っている。


 明るいのに、怖い声だ。


 サージおねえちゃんが怖い声の方を向いたから、ぼくもその怖い声を出している女の子を見ることになった。

 

 りんごみたいな黄色のふわふわの毛の奥から、プラムの皮みたいな色の目がサージおねえちゃんを睨みつけている。

 お口は笑っているのに、女の子からは全然嬉しそうな気持ちが伝わってこない。

 

 サージおねえちゃんも女の子の気持ちが伝わっているのか、さっきまで消えていた怖い気持ちも、不安な気持ちも戻って来ている。

 震えているサージおねえちゃんがやっとできたお話はちょっとだけ。


「ジョゼット……」


 ぼくは目の前の怖い女の子がジョゼットという名前なのを知った。

アップルパイにアイスクリーム添えるの

一回はやってみたいよね。


どうもレニィです。


リンゴはお犬様の大好きな果物No.1でした。

リンゴを冷蔵庫から取り出しただけで気が付いて、

皮が剥けるまでずっとおすわりして待っていたものです。


家族で食べていると絶対に真横に座ってきて、

ジッとリンゴが貰えるのを待っているので、

みんなその可愛さに負けてリンゴをあげちゃうのです。


さて、次話のルカくんは、リンゴのため、

サージおねえちゃんのために頑張っちゃいます。


そんな感じです。

どうぞよしなにー!!!

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