下着泥棒を捕まえよう
汗びっしょりで迷宮から帰ってきた翌日、ボク達は冒険者組合の酒場で迷宮五層目の攻略方法を話し合っていた。
何時も通りの賑やかさで、酒盛りをしている人達が何人か居る。
ボク達のテーブルには各々注文した飲み物が置かれていた。
「あの暑さの中を進むのはやっぱ無理だよね、立ってるだけで倒れそうだったし」
「無理、溶ケル」
ボクとライムは飲み物を口にしながら意見を交わす、ボクはソーダ水、ライムは果実ジュース、フーワはアイスティーだ。
「うむ、あそこまでの暑さを耐えるのは無理じゃな、なので魔道具を使って抜けようと思う」
「魔道具?」
「この前迷宮で氷晶石を手に入れたじゃろ?」
「うん、冷蔵庫とかに使うアレだよね」
「うむ、これ自体でも冷す効果はあるんじゃが、あそこまでの熱波には耐えられん。
そこで、こいつを使った魔道具じゃ、氷のネックレスと言うんじゃが氷晶石を強化させた物と氷晶塊というのが材料でな、どんなに暑い場所でも平気になる。
火の魔法や溶岩とかは無理じゃがな」
フーワがアイスティーを一口飲む。
「それがあればあそこを通過出来るんだね」
「だケド、アレ高いんだヨネ~」
ライムがストローを咥えてぴこぴこ縦に動かす。
「うむ...魔導具じゃからな、氷晶石だけなら大したことないんじゃが...一つ銀貨50枚、三人分で金貨一枚と銀貨50枚じゃ」
うわ...高い...そこまで貯めるのにどんだけかかるのやら...
「高いね...迷宮通ってるだけでそんなに貯められるの?」
「四層までだと相当掛かるじゃろうな、宝箱からもレアな物などそう簡単には出まいて。
この前のスクロールはかなり運が良かっただけじゃ」
う~ん...結構時間必要そうだなぁ。
「そこでじゃ、比較的早く稼ぐ方法がある。
あそこの掲示板に沢山貼られている冒険者依頼じゃ」
フーワが冒険者組合カウンター右横の壁にある、木の板で作られている大きな掲示板を指差す。
「あれって儲かるの?」
「内容次第じゃがな、低層を行ったり来たりするよりは余程早かろう、皆で見てみるか」
フーワがアイスティーを飲み干し席を立つと掲示板に歩いて行く、ボクとライムも残りを一気に飲んで後を付いていく。
「ふ~むそうじゃな...これなんかどうじゃ?」
フーワは台を使って高い場所に貼られていた依頼書の一枚を剥がしてボク達に見せる。
「え~っと...下着泥棒が多発しています、犯人を捕まえた方には銀貨三十枚差し上げます」
下着泥棒...下着なんて盗んでどうするんだろ...まあそれは置いといて銀貨三十枚はかなり美味しいと思う。
「悪くなイネ、これでいいんじゃナイ?」
ライムはこの依頼で良いみたいだ。
「ボクも賛成」
「よし、じゃあこれにするかの、手続きして来るからちょっと待っておれ」
依頼書片手にフーワは受付カウンターに行き、直ぐに戻って来た。
「受注完了じゃ、犯人を捕まえたら警備兵の詰所に連行するようにとの事じゃ、それでは行くぞい」
ボク達は冒険者組合を出ると街中を歩きだす。
「ねえ、下着泥棒ってどうやって捕まえるの?」
「そうじゃな...犯人の目的は下着なんじゃから下着で釣ればいいんじゃないかの。
干している下着が狙らわれるらしいから、適当に吊して置けばそのうち向こうから来るじゃろ」
成る程ね、となると犯人が出て来るまではずっと待ち伏せか~
「ちなみに被害は住居地区の東側らしいんじゃが...ベタンの宿は東じゃったな?」
「うん」
「ワシとライムは西じゃからな...ベタン、お主の宿で犯人の誘きだしをしたいんじゃが良いかの?」
「うん、いいよ。
それじゃボクの宿に行こうか」
街中を歩きながら作戦を練りつつボク達は踊る蛇腹亭へと足を運んだ。




