汗だくだく
大量のアンデッドを倒したあの後もちょいちょい襲われはしたものの、あの規模の襲撃は無く安定して道を進んでいた。
お腹も空いてきたので今は休憩中、シートを敷いてお食事タイムだ。
フーワは近くの井戸から水を組んでハンマーをせっせと洗っている、ゾンビの腐肉まみれで我慢の限界らしい。
ボクとライムはお弁当を広げて食べている、ボクのは肉の炒めご飯、ライムは骨付き肉みたいだ。
サイコロ状に切られ焼かれた肉と、ガーリックバターで炒めたご飯、塩と胡椒が効いていてスパイシーでその匂いは食欲を掻き立てスプーンが止まらない。
ライムも次々に骨付き肉を食べている...骨ごと、スライムだから大丈夫なのかな...
「やれやれ、やっと終わったわい...とはいえ此処を抜けるまではまた洗う可能性もあるがの...」
フーワが洗い物を済ませて戻ってきた、シートに座ると風呂敷からお弁当を取り出して食べ始める、フーワはオムライスのようだ。
「ゾンビは勘弁シテ欲しイネ」
最後の骨付き肉を食べ終わり紙袋を畳んでボクのリュックにしまう、ライムは荷物入れを持たないのでお弁当とかは一緒にしているのだ。
ちなみにパーティーを組む前はお弁当も身体に入れていたそうだけど...荷袋くらい持てばと思うけどね...
「ライム、お主はゾンビ相手にせんかったじゃろ...」
フーワが右手のスプーンをライムに向ける。
「だって臭イシ汚イシ」
「ワシだって同じじゃい!!」
フーワの突っ込みに口笛を吹いて誤魔化すライム。
「...まあええわい、にしてもあれじゃな、ペタン以外はゴーストに対処出来んというのはちと考え物じゃな」
「そダネ、前衛ガ後衛守れないのハネ」
ボクはお弁当を食べ終えて二人の話に耳を傾ける。
「しかし、となると魔力が付与された武器が必要なんじゃが、永続された物は高すぎてのう...」
「そんなに高いの?」
「安くても金貨三枚じゃな」
「金貨三枚!?」
今食べたお弁当が銅貨三枚、金貨は銅貨一万枚だ、つまりお弁当が一万個買えてしまう、そんなにするのか...
「ワシの手持ちじゃ全く足りないんじゃよな、安く済ませる手として魔法のスクロールがある、こっちは短時間なんじゃが銀貨五枚くらいじゃ」
それでも銀貨五枚で魔法のスクロールだから消耗品か...
「他には無いの?」
「後はそうじゃな、魔力付与魔法じゃな。
これなら金は掛からん、もっともこれは中級以上じゃから覚えるのは大変じゃがな」
中級魔法か...中級魔法はそれなりに熟練した魔法使いしか使えない、今のボクじゃ無理だなぁ...
「金貯めてスクロール買うのが一番早いのう、迷宮の宝箱から一攫千金か冒険者組合の依頼こなすしかないの」
フーワが食べ終えてお弁当箱を風呂敷にしまう。
「まあなんトカなるでショ」
ライムが頭の後ろで手を組ながら気楽に答える。
だといいんだけどなぁ。
「よし、腹ごしらえも済んだし先へ進むとするかの」
皆が立ち上がってシートを畳たみ、リュックにしまうとボク達は道を歩きだす、朽ちた墓標があちこちに横たわり相変わらず陰湿な空気、気も滅入ってくるのでそろそろ次の層に降りたいところ、ずっと墓地を歩き続けるのは気分が良ろしくない。
それから十分くらい歩いただろうか、遠くに階段と魔法陣が見えてきた、どうやら四層は終わりのようだ、今回は帰還の魔法陣があるね。
「やっと次じゃの~、ゾンビも出てこんかったし良かったわい」
フーワが安堵のため息を漏らす、ハンマーが汚れるのが余程嫌だったとみえる。
「それじゃ下に降りようか、次はどんなとこだろ」
そう言いボクは階段に近づいたのだが。
「...なんか暑くない?」
暑い、気のせいじゃない、階段周辺が暑い。
階段の下から熱気が上がってくる、そんな感じ。
「う~む、確かに暑いのう...下に何かあるか...まあ行けば分かるじゃろ」
フーワが先に降りて行きボクとライムもそれに続く。
階段を降りれば降りる程暑さが増してくるようだ、まだ五十段程度だがかなり暑い、額には大きな汗が吹き出している。下に続く螺旋階段を下りながら服の袖先で額を拭う。
「あッツ~溶けソウ~」
ライムが前屈みになりながら愚痴をこぼす。
「しっかりせい、ほれ、下層が見えてきたぞぃ」
フーワが指差すと出口が見える、五層目に着くようだ。
出口をくぐり抜け開けた場所にたどり着いた、そこは一面真っ赤であちこちに溶岩溜まりが広がっていた。
熱気がさらに強くなり汗が次々滴り落ちる。
「無~理~~アタシ液体にナ~ル~~~!!!」
ライムが抗議の声を上げる、てか本当に手や脚が溶けてきてる。
「むぅ...暑いのには慣れてるワシでもこれはキツイのう...こりゃ駄目じゃ、一度街に戻って対策練るぞぃ」
溶けてきてるライムの背中を二人で押して階段を上がり、ボク達は四層の魔法陣から街に戻ったのであった。
汗でびっしょりだよ...お風呂入ろう。




