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三層目

三層目の入口、その横にある魔法陣が光るとボク達はそれから次々と転送されて来る。


「は~、こうなってたんだね」


転送された魔法陣を見ながら呟く、転送が終わるとそれは光らなくなり以前同様の状態になっていた。


「さて、先に進む前に作戦を立てておこうかのぅ。ペタンお主、火の魔法は使えるかの?」


「うん、ファイヤーなら使えるよ」


右手の杖を振りながらボクは答える。


「よしよし、ワシは戦士じゃが魔法も少しは使えてのぅ、ちょっとした考えがあるんじゃがこういうのはどうじゃ?」


フーワの提案をボクとライムは聞き、お互い頷いた。 


それからライトで道を照しながら進み、この前蝙蝠達が居た曲がり角に着いた、先からは蝙蝠の鳴き声がしてくる、今回もそのままのようだ。


「よし、それじゃライム頼むぞ、ワシとペタンはここで待機、蝙蝠達が此方に来たら作戦通りに行くぞい」


「オッケー!」


「あイヨ」


曲がり角手前でボクとフーワは身構え、ライムは右手を前に突き出すと右手が一気に奥へ伸びていく。

流石スライム、伸縮自在の身体はかなりの距離まで伸びるのだ。


「来ルヨ」


ライムが警告すると奥から蝙蝠の声が近付いて来る。


「よし今じゃ、ありったけのファイヤーを撃ち込んでやれ!!」


「ファイヤー!!ファイヤー!!」


右手に構えた杖の宝石が輝き、放たれた数発のファイヤーが迫る蝙蝠達に直撃し赤く燃え上がり洞窟の天井まで嘗める。


「ストーンウォール!!」


ファイヤーを撃ち終えた後にフーワが魔法を発動させると、ボク達の目の前に巨大な石の壁が立ち塞がり通路をぴったりと封鎖した。


「よしよし、ペタンよ穴を開けるからそこから中にファイヤーを何回か入れてやれい、ホール!!」


そう言うとフーワが魔法で壁に小さな穴を作る、そしてボクはファイヤーをそこに数発撃ち込んだ。

穴からは燃え盛る炎が見え少し吹き出してくる、壁の向こうはさながら釜戸の中みたいになっているだろう。


それから暫く待っていると穴から吹き出す炎も収まり、中を覗くと火は消えているようだ。


「そろそろ頃合いじゃろ、ふん!!」


フーワが壁の前に歩いて行き、背中のハンマーを一本取り出すと壁に目掛けて真横に叩きつける、すると壁はピシピシとヒビが入っていき粉々になり崩れた。

ムワッとした熱気が周りに立ち込める、向こうには丸焦げになった蝙蝠達と沢山の魔導塊が転がっていた。


「うむ、成功じゃな」


残った蝙蝠は居ないようで、燃えてパチパチと燻っている残骸がちらほら見える。


ボク達は魔導塊を拾い集めると奥へと進んで行った。


「上手くいったね~」


「この調子で行コウ」


話をしながら道を歩き続ける。


「そうじゃの、このまま三層を踏破したいところじゃのぅ...ん?」


先頭を歩いていたフーワが何かに気がついて止まる、先を見ると道の真ん中に宝箱が二つ置いてあった。


「宝箱か~...」


この前の事を思い出す、宝箱に罠が仕掛けられていて酷い目にあったばかりだ、あんまり開けたくないなぁ...

等と思っているとライムが宝箱に近づき。


「アタシに任セテ」


そう言うとライムは右腕を伸ばして宝箱を触りだし、次に鍵穴に指を入れた。

もう片方も同じ様に弄り...


「大丈夫、罠は無イシ鍵掛かってたカラ開けタヨ」


ライムは宝箱の側に歩いて行き蓋を開ける、中には青い掌サイズの宝石と巻物がそれぞれ入っていた。


それらをフーワが手に取ると、ふむふむと鑑定を始めた。


「分かるの?」


「うむ、昔から両親に鍛えられておっての、このくらいなら簡単じゃ」


片膝を付いて鑑定しているフーワの横からボクはその様子を眺める。


「宝石は氷晶石、氷の魔力を帯びた魔石の一種じゃ。こっちの巻物は魔法のスクロールなんじゃが...こいつは幸先よいぞ」


やや興奮したようにボクに巻物を見せてくる。


「良い物なの?」


「うむ、ときにペタンのリュックは魔法の袋かの?」


ボクは横に首を振る。


「ん~ん、ボクのは普通のリュックだよ、魔法の袋は高くて中々買えないもん」


魔法の袋とは文字通り魔法の袋で、中に沢山の荷物が入る優れ物、高級な物になると倉庫丸々入る。

ただ、かなり高額で小さい物でも結構な値段がするので普通は持っていない。


「なら丁度いい、これは普通の袋を魔法の袋に変える巻物じゃ、術式からして小型じゃな。

使ってみるか?」


手にした巻物を振りながら聞いてくる。


「いいの!?結構高いんでしょ?」


「構わんよ、ワシとライムはペタンみたいなリュックは持ち合わせておらんし丁度よかろう、ワシは風呂敷だしライムに至っては身体の中にしまうからの...」


後ろでライムがウンウンと頷いている。


「そう?じゃあ使わせて貰おうかな、どうやって使うの?」


するとフーワは巻物を拡げて床に敷き。


「この上にリュックを置くが良い、そうすれば魔法の袋の完成じゃ」


ボクはリュックを下ろして巻物の上に置く、するとリュックが光だして、巻物は塵になって消えていった。

残ったリュックも光が収まり見た目に変化は無い。


「よし完成じゃ、ちなみに生きてる物は入らんからな」


リュックを渡され受け取ると背負い直す、重さも変わり無いようだ。


「それじゃぁ四層目を目指そうかのぅ」

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