表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/41

セミファイナル

蝉が鳴く度に不可視の刄が飛んでくる、それを何度か避けていて相手の攻撃パターンが段々分かってきた。


一度撃つと少し間が空くこと、鳴いたときだけ撃つこと、そして...


―――動かないこと。


動かない、この蝉、木に貼り付いたまま少しも動かないのだ。

そしてそれ故に死角がある、木の後ろに回り込むと攻撃してこない。

他にも攻撃方法があるのでは無いかと思ったけど、木の前に出ない限りは一切攻撃が飛んで来なかった、つまり落ち着いて対処すればなんてことはない相手だ。


さて、止まっている木ごと死角から焼いてしまおうかとも思ったけど他の木に引火して火事になっても困るので、先に魔法の準備だけしておいて蝉が魔法を撃ったら避けてアイスボールでカウンターを狙おう。


―――そう思い、集中し始めたそのとき。


『ブブブブ...ブ...ブ...』


蝉が鳴き出した、でもボクはまだ木の後ろに居る、攻撃してくるにはタイミングがおかしい。

迂闊に前に出ても危険と判断して暫く待ってみたけど...


何も起きない、何か攻撃してくる訳では無さそう。

気になってボクは慎重にそ~っと木の前に回り込んでみる、と...


蝉が木から落ちてひっくり返っていた。

ゆっくりと近寄ってみるけど何もしてこない、杖の先で突ついてみても反応無し。


...何が起きたのやら...


訳が分からないけど勝手に死んだのだろうか...

考えても仕方ないので魔力塊を採取しようと蝉に手を伸ばした、その時。


『ブブブブブブブブブブブブ!!!』


蝉が突然鳴き出してひっくり返えりながら激しく

動き出した。


「うわぁぁぁぁ!!?」


いきなりの事にボクは驚いて木に隠れる。

...暫くそのまま様子を見るけど、その後何も起きる様子は無い。

再び蝉に近づいてみるけど動かない、念の為強めに杖で叩いてみたけどそれ以降動き出すことは無かったので蝉から魔力塊を取り出して右の道を進むことにした。


―――後で分かった事だけど、この魔物の名前はセミファイナル、成長すると土の中から出てきて木にしがみ付き、死ぬまで動かないらしい。

また、寿命が短く一週間で死に、さらには魔法を七回使っても死ぬという何とも変わった生態をしているとのことだった。


右の道には何も無く行き止まりだったので引き返して左の道を進み始めること暫し、先の方でポヨポヨが二匹とラージトードが三匹跳び跳ねていた。

ちょっと数は多いけど下がりながら戦えば問題は無い、こちらを確認したのか魔物達はボクを目指して跳ねながらやってくる。


先頭に居るポヨポヨをアイスボールで纏めて倒し、再度魔法を撃つために下がろうと後ろに振り返った、そのときである。


目の前の地面に何時の間にか魔法陣が出現していて、光出すと中からラージトードが二体現れたのだ。


「挟まれた!?」


迷宮ではこんな事も起きるのか!

...まずい、出てきたラージトードが近い、こっちを先に倒すにしてもこのままだと魔法が間に合わない...ならば!!


ボクは身体を捻らせ前に走りだし新手から離れると、まだそれほど近くない最初のラージトード達の足元に魔法を放つ。


「マッドスワンプ!!」


ラージトード達の居る地面が突如として泥沼となり足を捕らえる、ジタバタともがくそれの上を踏み越えて着地すると離れてさらに魔法を発動させる。


「ショックボルト!!」


ラージトードの真上から電撃が放たれると泥沼を伝いもがいていた全てが感電し、動かなくなった。


「よし、次!!アイスボール!!」


今度は魔法陣から出てきて追いかけて来た奴ら目掛けて氷塊を撃ち放って粉砕し、やっとこさ戦闘が終了した。


「あ~びっくりした...まさかあんな風に挟まれるなんて思わなかったよ...」


額の汗を片手で拭いながらボクは思わず呟く、魔物が弱かったから何とかなったけどこれが強敵だったら危なかっただろう。


迷宮では何が起きるのか分からない肝に命じておこう、そう思いボクは先に進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ