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二層目

明くる朝、支度を終えて宿代を払い終えたときふと思い出した、長期滞在する事を伝えなければいけない、と言うわけでカウンターに居るラミアのお姉さんにそのことを話すことにする。


「はいはい、三十日毎の契約になるけどいいかしら?支払いは契約最終日に纏めて払ってくれればオーケーよ」


契約内容にボクは頷く。


「は~い、では契約成立ね。

あ、そうだ、長いお付き合いになるし改めて自己紹介するわね。

私はバジャーラ、宜しくね」


バジャーラさんは微笑んでお辞儀をする。


「ボクはペタン、お願いします」


挨拶も済ませバジャーラさんに行ってきますと手を振り外に出る、お弁当を買ったら迷宮に向かおう、今日は何処まで行けるかな。


それから程なくして、ボクは街の商店街にやって来た、お弁当を買う為だが店はもう決めてある、

立ち並ぶ露天の中から目当ての店に向かう。


「いらっしゃい、いらっしゃい~

お弁当は如何かね~、安くて美味しいよ~」


お弁当を並べた長テーブルの前でオークのおばさんが大きな声で街行く人達に声を掛けている、お客さんも何人か居て買って行ってるようだ。


ボクも他の人に混ざりお弁当を眺める。


「はいいらっしゃい!おや、昨日来たお嬢ちゃんだね!今日は何にするんだい?」


おばさんが賑やかに話しかけてくる。


「う~ん、どれにしようかな...」


何種類かあって見本としてサンプルが置いてある、良く出来てるけどサンプルは作り物で食べられはしない。

しかし何れも美味しそうで実に迷う、と、おばさんはその内の一つを手に取りボクに見せてくる。


「なら今日のオススメはこれさね、良質なゴールドピッグが手に入ってね、それのバラ肉を使った肉野菜炒めさ。

肉は甘くて野菜も新鮮、ピリ辛で米飯がドンドン進むよ!」


言われて思わず喉が鳴る、見た目も美味しそうだ、よしこれにしよう!!


「それ一つ下さい!!」


「はい毎度あり、銅貨三枚ね」


お金を払うとおばさんはお弁当を手提げ付きの紙袋に入れてボクに渡す。

お弁当を受け取り手を振るとボクは迷宮目指して街の外に繰り出した。


迷宮に入ると一層目をささっと通過して下層への階段の前までたどり着いた、ラージトードも昨日みたいなドジはしないように後ろに避けて倒してきた。

途中分かれ道を全部通ってみたけど特に目ぼしい物は無かった、他の冒険者が宝箱を開けたのかもしれない、昨日見つけたのは好運だったのかも。


「よし、それじゃあ二層目に出発だ」


階段を降りて下層へと進む、何十段か降りると次の層が見えてきた。

そこに広がるは一層とはまるで違い、木々が生い茂る森の中で、舗装された土の道が森を分け真っ直ぐに伸びていた。

その光景に驚きながら周囲を見ると道の横に魔法陣が描かれているのを見つけた、一層目のと同じようだ。


外に出る為のだろうか、にしては上のと近すぎるけど...

考えても仕方ないので試しに乗ってみることにした。


念の為魔法陣を杖で突ついてみるが反応はない、罠ではなさそう、安全そうなので乗ると...何も起きない、もう一度乗り直してみるが...やっぱり反応は無し、足でペシペシ踏んでみたけどウントモスントモ言わない。


「う~ん...?」


移動用の魔法陣じゃないのかな...何なんだろこれ、まあ考えてもどうにもならないし...先に進んじゃおう。


道なりに歩き出すと暫くして大きな木が目の前に現れる、木が道を分けるように左右に分岐している...のだがボクの目には他に注目する物があった。


それはその木に止まっていた。

蝉だ、蝉だろう、だがそれはボクの知ってる蝉じゃない。

大きい、ひたすらに大きい、ボクと同じくらいの大きな蝉がへばり付いていた。


「...魔物だよねぇ...」


流石にこんな蝉は居ないと思う、よって魔物と認定する。

さてこの蝉、先程から全く動こうとしない、じ~っと木に止まったままだ。

どうしようかなと思ったけど何もしてこないならわざわざ相手にする必要もないかな、ということで右の道を行ってみよう。


蝉を尻目に先を進み、横を通過したその時だ。


『ブブブブブブブ!!』


突然蝉が鳴き出した、ボクは何事かと思いそちらを向き...嫌な予感がした、背中に走る悪寒、ボクは咄嗟に真横に避けてしゃがむ、斜め上を何かが通過する鋭い風切り音。


後ろを振り返ると一本の木に大きな斬り跡が付いていた、蝉は...動いていない、木に貼り付いたままだ。


何をしたのかは分からないけど、何かで斬りつけるような攻撃をしたのは確かだ。


『ブブブブブブブ!!』


蝉が再び鳴き出す、すると蝉の目の前が揺らぎまた風切り音がする。

迫るそれを避けるとまた木に斬り跡が描かれる...分かった、蝉が何をしたのか。


風の初級魔法にウィンドカッターなるものがある。

ボクも使えるのだが、これは前方に風の刃を飛ばして相手を切り裂く魔法だ。

威力はそれなりに高く、大人が鉄の剣で斬りつけるのと同じくらいはある。

一発くらいなら当たり処が悪くない限りは致命傷にはならないが何度も食らえば命を落としかねない、飛んで来たら必ず避けないといけないが...


避けてばかりではどうしようもない、こちらからも仕掛けるとしようかな。

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