ぬるぬるべとべと
杖を手に入れてから暫く、途中何度か分かれ道があったけど何れも行き止まりで何もなく、魔物もポヨポヨのみで特に問題無く順調に進んでいた。
「結構歩いたしお腹空いてきたなぁ...そろそろご飯にしようかな」
道の端にリュックを降ろして中から布のシートを取り出し床に敷く。
それからお弁当と水筒も取り出してシートに座ると蓋を開ける、今日のお弁当はロックバードの卵焼きとワイルドベアのハムをパンに挟んだサンドイッチだ。
「では、頂きま~す」
両手を合わせて命の恵みに感謝してサンドイッチを口に運ぶ。
「うん、美味しい~」
ロックバードの卵焼きは甘くて口の中で直ぐに溶けていく、ワイルドベアのハムは少し噛み堪えがあり旨味が濃縮された脂が染みだして、塩と胡椒のみの味付けが合わさり堪らない。
あっという間に食べ終えて水筒の水を飲んでお腹を擦る。
「ふ~満足満足」
このお弁当、露天で買ってきたやつだけどかなり美味しかったしまた買おうかな。
暫く休んでから全部をリュックに戻して立ち上がり、ボクは再び歩き出す。
途中何匹かポヨポヨを倒してアイテムを拾っていると、前方から何やら鳴き声と、ベチャッ、ベチャッ、と何か音がしてくる。
鳴き声と音が段々と近づいて来て...それは現れた。
大人の腰くらいまである巨大な蛙の魔物、ラージトードだ。
村の周辺でも雨季が近づいてくるとたまに発生しては農作物を荒らしていた、狂暴というわけではないが空腹状態だと気が荒くなるのか近寄ると長く伸びる舌で攻撃してくる。
そしてどうやらこいつはお腹が減っているのであろう、ボクを見るや一鳴きすると舌を鞭のようにしならせて叩いてきた。
「おっとっと」
伸びて上から叩きつけてくる舌を横に避ける、
ラージトードは昔から何度も見ているし駆除もしたことがある、油断しなければなんと言うことは無い。
更に立て続けに振り下ろしてくる舌を何度も避ける...と。
「うひゃあ!?」
ボクは盛大にスッ転んだ、足元を見ると床が舌の粘液でぬるぬるのべとべとになっていた。
しまった!!迷宮の床や壁は凸凹も無くツルツルだ、地面が土ならここまで滑りもしないが此処だと踏ん張りが効かない。
全身ぬっるぬるべっとべとで気持ち悪いことこの上ないが、今はこいつを倒さないと。
何とか立ち上がり、更に叩きつけてくる舌を後ろに避けて粘液を踏まないようにする。
そして杖を構えて...
「アイスボール!!」
高速て放たれた拳くらいの氷の固まりが何発もラージトードにぶち当たる、それは全身の骨を粉砕して壁に激しく叩きつけた。
ラージトードは何度か痙攣していたがやがて動かなくなった。
「うぇ~...気持ち悪~、着替えて洗いたい...」
ラージトードの落としたアイテムを回収してボクは先を急いだ、下層へと降りる箇所に魔法陣があるはずだ、それで一旦戻ろう...
それから程なくして下へ降りる階段と、手前に魔法陣を見つけた。
迷わずボクはそれに乗る、すると魔法陣が光だしフワッとした感覚がすると迷宮の入口に戻っていた。
は~やれやれ...今日はもう宿に戻ろう...
粘液まみれの身体を引きずるようにしてボクは帰路についた。




