一層目
迷宮の中は想像していたものとまるで違っていた。
床や壁は切り出され磨かれた石のようにツルツルで、凹凸もなくまるでお城の中みたいだ。
それに光源は見当たらないがそれなりに明るい、本くらいなら読めるだろう。
そんな中を道なりに進んで行くと前から何やら丸いのが跳ねながらこちらに向かってくる、半透明な空色の魔物、ポヨポヨだ。
ポヨポヨは魔物の中でも一番弱い、冒険者のクラスで一番下のポヨポヨクラスはこれからきているようだ。
ボクの膝下くらいの大きさのそれは目の前で止まるとぷるぷると震えている、目や口も無いのでいまいち分かりにくいけどボクを威嚇しているように見える。
そしてぐ~っと縦に潰れると、勢いよくこちらに飛び掛かってきた。
「おっとっと」
ボクが軽く横に避けると通りすぎて後ろに飛んでいく、振り向くとまたぷるぷると震えている。
ポヨポヨはボクみたいな子どもでも棒切れで倒せるくらい弱いし体当りされても大したことはない、それくらい弱い。
ちなみにポヨポヨは種類が多くて、中には酸や炎を飛ばしてきたり金属みたいに硬かったり3Mを超えるものも居るらしい、迷宮を進んでいればそのうち遭遇するかもしれない。
さて、一匹だけだしさっさと倒してしまおう。
両手をポヨポヨにつき出して精神を集中させる、
ボクは魔法が使える、サキュバスは魔力が高く魔法が得意なエルフと同じ、若しくはそれ以上の人も居る。
ボクが覚えている魔法は初級の六属性、火水土風光闇の基本的なものだ。
両手に小さな火の塊が形成されていく、そしてある程度の大きさになり...
「ファイヤー!!」
勢い良く放たれた火球はポヨポヨに直撃し発火、蒸発させた。
「ふ~、こんなもんかな」
ポヨポヨが居た場所を見ると、光る小さな欠片と丸い塊が一つずつ落ちている。
欠片は魔物の体内に必ず入っている魔力の集合体魔力塊、もう一つはポヨポヨの核だ。
魔力塊は色々な材料になり重宝される為あちこちで買い取られている。
ポヨポヨの核は甘くて、そのまま子どものおやつになったり調味料として使われる。
村でも子ども達がポヨポヨを核目当てで探しては倒して食べていた、ボクも一緒になってやってた。
魔力塊とポヨポヨの核を拾い魔力塊は腰に付けている皮の小袋の中に、核はそのまま口に放り込む。
「あ~、甘~い」
程よい甘さと清涼感が口に拡がり溶けていく、
それを堪能してボクはまた歩き出す。
それから暫く、ときたま現れるポヨポヨを倒しつつ進んで行くと道が二手に分かれていた。
「ん~...どっちに進もうかな...」
少し悩んだが右に行ってみることにする、特に意味はないなんとなくだ。
右に曲がって更に進むと行き止まりで、宝箱が一つある。
周囲には何も無い、ボクは宝箱に近づいて様子を見る。
周りに罠は無いみたい、念の為に宝箱を叩いてみたりしたが何も起きない、多分大丈夫だろう。
それからそ~っと開けてみる、鍵は掛かっていないようですんなり開いた、中には先端に青い宝石が付いた木製の杖が入っていた。
取り出して握ってみる、うん、軽いし頑丈そうだ。
少しながら魔力を感じる、魔法の威力が上がるかもしれない。
他に何も無いし分かれ道まで戻ろうとしたときふと思い出した、そういや宝箱って時間経つと消えるんだっけ。
ちょっと見てみたいので待ってみる、が、中々消えない。
立ったまま見続けるのは疲れるだけなので宝箱の前で膝を抱えて座り待つ。
端から見ると何しているんだって思われるだろうけど、周りに誰も居ないし問題ない。
それから何分か経った頃、宝箱の下に光る魔法陣が現れ、宝箱と共にス~っと消えていった、成る程こうなるのか。
目的も果たしたので立ち上がり、ボクは来た道を戻りもう片方の道を進んで行った。




