退屈な少女は、異世界に夢を見るのか。
新年明けましておめでとうございます…
…投稿遅すぎ…
申し訳ございません…
「これどう思う?」
可愛らしく銀糸の髪を揺らして顔を傾げた。
「どうと申されましても...立派でちょっと変わった姿見かと」
姿見はシルフは大急ぎで近くにいたメイドと二人掛かりでシーナの寝室へと運ばれていた。
「ふーん、そっか」
シーナは姿見の周りをグルグルと回りジロジロと眺めた。
シルフには正直なところ、シーナがなぜこの姿見に興味を持ったのか分からなかった。
いや、完全無欠の女王 ー 生きる歴史の証人の感性なんて物は、これっぽちも理解出来るとは思ってはいないが、こればっかりは全く理解の外の話だった。
確かにこの姿見は歪み一つなく立派で、質素ながらもその素朴さがまた美しいのも事実。
だが、この屋敷を少し探せばこれよりもよっぽど大きく立派で、細部の細部まで意匠の施された姿見はいくつも見つかる。
ならば、その副産物、死に繋がっていると言う点に惹かれたのだろうか?
いや、それもどうかと一考する。
いつものシーナなら、気まぐれを起こさないシーナなら、そんな道具を使わずとも相手を殺すことができる。
ならば何故。
「まぁ、とにかくこれは異世界へつながる鏡?んー、扉?」
「...異世界でございますか?」
「そぅ」
シーナは何の変哲も無いかのようにスラリと答えた。
一体全体、いきなりそんな荒唐無稽、奇想天外与太話を、これまた規格外の人物から説かれた時、やにわにそうですかと信じる事が出来る人物が果たして何人ほどいるのだろうか。
本来世界は一つで、真っ平らでどこまでも果てどなく続いている物である。
それが世界の真理である。
炎が熱いのと同じように世界は、どこまで歩いても続いて居るものだ。
だが、もし果てがあったとしてもそれが世界の終端であり、それでこの世界は終わる。
なら、異世界とはどこにあるのだろう。
そのうんと遠い世界終端のとでも言うのだろうか。
非常識の語る非常識は、果たして常識なのだろうか。
「そこでシルフに提案、帰れないかもしれないけど、この中に入ってみようと思うけど一緒くる?」
いつもと変わらない平坦な声で、さも当たり前の事を言っているかのようにそんな突飛な事を言い出した。
「...入る?」
「そぅ」
シーナは、おうむ返しの返答にノータイムで返答を返す。
不死の女王が一夜にしてこの世から居なくなる。
それはこの世界に何を意味するのだろうか。
考えるまでもなく、無秩序、混沌、闘争。
ストッパーが無くなった時、争いが限界まで貯められた濁流のように渦巻くに決まっている。
シルフは、そんな世界で自分の力を過信して、戦いに明け暮れたいわけではなかった。
ならば、シーナの言う異世界はどうだろうか。
その異世界は、ここと遜色ない場所なのだろうか、緑豊かな夢のような世界なのだろうか、此処よりもより不毛な土地なのだろうか。
その世界は...
仮説はいくらでも浮かんだが、想像がつかなかった。
だが、一つだけ仮説ではない、確証を持って言える事がある。
それは、シーナはどんな世界にいても誰にも負けないという事。
ずっと見てきたシーナ故に、ずっと仕えてきたシーナだからこそ確証が持てる、シーナはどんな環境でも、どこの世界でも必ず、王になると。
だから、シルフは決心した。
「えぇ、もちろん、お供いたします」
「ありがと」
快適な生活のためにね。
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「それでは、ご準備はよろしいでしょうか?」
シルフはシーナにそう尋ねたものの、シーナは特になんの準備もしていなかった。
強いて言うならつばの広い白い帽子を被ったぐらいであった。
必要な物は全てシルフの空間魔法の中に大急ぎで放り込んだ。
つまりは、準備が整っているかはシルフ次第ではあったが、便宜上シーナに尋ねた。
シルフの問いにシーナは、小さく頷く。
「それでは、お先に失礼致します」
シルフは主人を置いて先に異世界へと先に赴く。
それは、シルフが主人が何不自由することなく過ごすため、先ある障害は排除しなくてはならないと言う従者たる為。
シルフは鏡の前に立つ。
この先が、異世界に続いていると言う保証は、嘘をつく理由はないとしてもシーナの証言だけでしかなく、またその先がどのようになっているかも不明。
この先に行く事は、ある種の大きな博打だけに思わず唾を飲み込んだ。
しかし、今はただ意を決して、今だけは頭を無にして、鏡へと、未知の世界へと一歩踏み込む。
シルフを水面に身を投げ入れたかのような感覚が包み込んだ後、仄暗いひらけた空間で幾人かの人影がシルフをじっと凝視していた。
3話目にしてやっと異世界物の片鱗を見せ始めました。
長い間、投稿できていないにもかかわらず、今までブックマーク外さずにいてくれて、ありがとう!