退屈な少女は、異世界でも後ろ向きな夢を見るのか。
もう一つの方の小説では必要に前書きあとがきを書いてますが、こっちは省略しようかな...
何か書いて欲しいこととかありますか?
登場人物の仔細を知りたいとか、次はいつぐらいに投稿できるとか?
兎に角なんでも良いですけどなんかありません?
「お疲れ様でした。シーナ様」
黒髪で小さな角が2つついた男が小走りで駆け寄り深く頭を下げた。
彼は代々シーナに使える魔族の一族、シルフ。
何代前になるのかは知らないが、シルフの先祖は勝てるはずも無いのにシーナに戦いを挑み当然のように負けた。
しかし、何の気まぐれかシーナは、殺す事はせずに執事として召抱えた。
それ以来、シルフの一族は、男ならば執事として、女ならばメイドとして、雇われるようになった。
と言うのが彼の知る自身の一族の歴史であった。
シーナはシルフを凝視して何かしらを考えていた。
しかし、飽きたのか適当な相槌だけを打って歩き出した。
「シーナ様に戦いを挑んでくる相手は、何十年ぶりですかね?」
そんな事を尋ねながらシルフは、シーナの後ろをついて行った。
もし、世界の全てを手に入れたいならどうするべきか。
もし、誰よりも強いと証明したいならどうするべきか。
それは、全てを持つ頂点に戦いを挑み勝つこと。
勝って奪えば、勝って示せば、手っ取り早く全てを手に入れ、頂点に立つ事が出来る。
だから、シルフの先祖は、あらゆる強者は、シーナに戦いを挑んだのだろう。
しかし、その偉業を、功績を、誰一人打ち建てる事は出来なかった。
それも当然の事だろうとシーナの事を生まれた時から見ていたシルフには思えた。
水が下から上へと登らない様のと同じようにシーナが誰かに負ける事は決してない。
シーナは今度は何かを思い起こそうと考え込んだ。
そしてすぐに簡潔な結論を導き出した。
「わすれた」
「左様でございますか」
それからは会話することもなく自身の根城へと帰路に着く。
「シルフ。おふろはいりたい」
両開きの玄関の扉をロング丈のメイド服を着たシルフと同じ魔族が開けると同時にシーナは言った。
「畏まりました。すぐ準備いたします」
シルフは、突然の要求にも二つ返事で了承する以外の選択肢は無い。
手でメイドに合図を送る。
メイドは深いお辞儀をしたのち小走りで浴槽の準備へと向かって行った。
シルフはそれを見送ったあと
「こんにちは」
突如後ろから声がかけられた。
そこには、胡散臭い笑顔を貼り付けたやや小太りの男が一人立っていた。
彼は、ドーラ。
いつもシーナの退屈に付け込み、呪われた宝石だとか、酒の溢れる壺だとかの胡散臭いくだらないモノを売りつける悪どい商売人。
「おふろの後で」
シーナはドーラを一瞥した後、平坦な声で言葉足らずの言葉を発して浴室へと歩き出した。
「死へと続く扉を発見いたしました」
その言葉を聞いて浴室へと歩いていたシーナの足がピタリと止まった。
「くわしく」
その言葉を聞いたドーラの笑顔は、一層歪んだものになった。
「はい。先日、とある場所で不可思議な物を発見いたしました」
そう言ってドーラは、大きな荷物を抱えさせられた奴隷の魔族に顎で合図を送る。
奴隷はその合図に従い、大荷物をそっとシーナの前に下ろした。
「それが、こちらになります」
ドーラは大荷物のにかけてある幕を焦らせてから勢いよく取り払う。
「おぉ」
それは、3mはあろう程の立派な姿見だった。
絢爛豪華、多数の意匠が施された姿見というわけでは無く質素なもの。
だが、木で出来た枠組みは凹凸の一つもない艶やかで滑らかに仕上がり、鏡面は、傷どころか歪み一つ無い代物だった。
「この姿見は、ただの姿見ではなく」
ドーラは、おもむろに鏡面に手を伸ばした。
「何処かに繋がっているようなのです」
鏡面は、水面のように波打ちドーラの手を飲み込む。
「ですので、この間要らなくなった奴隷を使って実験してみたんですよ」
「そしたら...」
ドーラは、指を口に当て注目を集める。
「...そしたら?」
シーナは、銀糸の髪を揺らして顔を傾け尋ねた。
「消えたんですよ!この世界からまるっきし!綺麗さっぱりね!!」
シーナの問いを待っていたかのように大仰なそぶりで手を振る。
「あらゆる場所を捜索いたしました!魔隠しの森も!時止めの氷山も!そして勿論シーナ様の在わす首都パサティエンポも!!」
「それはすごい」
「お気に召してくれましたか?」
シーナはそれに小さく頷く事で答える。
「でしたら、代金として私も元老院に参加させていただけないでしょうか?」
シルフはそのあまりにも過大な要求に眩暈がする。
元老院、それはこの世界での法律の制定を司る機関。
シーナの次権力を持つとされる人々。
それが元老院の参加資格を持つ人々だというのがこの世界の常識だった。
シーナはそんなあまりにも課題すぎる代金に対して
「いいよ」
すんなりと了承をした。
二つ返事でそんな大切な物が譲渡されるそんな現実。
シルフはただ見守ることしかできなかった。
「ありがとうございます」
ドーラは仰々しく、深く深くニヤケ顔を下げた。
絶対に碌なことにならない。
こいつが居てまともな議会になるわけがない。
必ず悪法が蔓延る。
いずれ元老院は腐り果てる。
腐敗した政治の行先は反乱か暗殺か。
しかしその刃は決してシーナには届かない。
所詮その刃の行く末は元老院止まり。
それによって元老院が潰れようとも世界は変わらずシーナをトップとした世界がつくられるだけだろうとシルフは確信していた。
「シルフこれ部屋にもってって」
「畏まりました」
だからこそシルフは疑念があったとしても絶対に意義は唱えない。
何も考えずシーナについていけば自身の寿命くらいは軽々と生きられるのだから。
シルフが近くにいたメイドと共に姿見を丁寧に持ち上げ部屋へ運ぼうとしていた時、シーナはトボトボといつもと変わらない足取りで歩き小さな声で
「楽しみだなぁ…」
そう呟いた。
いつもと変わらない平坦なシーナの声。
シルフだけは、誰もがそう感じる抑揚のない声に、感情のない声に、動揺か歓喜かが含まれているやや上擦った珍しい声だと直感した。
シーナがこの声を出したと言う事は、何かが起こる凶兆。
シルフはこれから、予期しない事が起きると予期して、心の中で一つ大きな溜息をついた。
後書きねぇ...
特に書くことは有りませんねぇ...