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異世界吸血鬼は、どんな最期を望むのか。

『もう一つ』小説書き始めました。(巧妙なステルスマーケティング)

こちらは、とにかくダークな展開になると思います。

(もう一本が異常に明るいからね)


ま、とりあえず心情や哲学や理念に重点を置いてえがいていきたいと思います。

 事故死、病死、悶死、過労死、つまりは死没したのちに別世界に生を受けた者。

 または生きながらにして別世界に転移した者。

 そんな『異世界転生者』『異世界転移者』と俗に呼ばれる者たちの最期 ー 物語の結末はなんだろうか。


 初雪のように白い少女は焦点の定まらない虚ろな目で、くだらない事を真剣に考えてみた。


 『仲間と親睦を深め、のちに独裁的な国家を築き一国の絶対的権力者となり横暴な死を迎える』

 『国、種族という小さな集団の主観的な視点で絶対悪と判断された敵を無感情に皆殺しにして、英雄や勇者ともてはやされ最期は、皆に惜しまれながら看取られる』


 そんな理想の最期を迎えることができるのならばどれほど良いかと。


 冷たい風が頬を撫でた。


 終わりがあるから、幸せを感じるのかもしれない。

 死期があるから、時間に追われるのかもしれない。


 だが無情にもその願いは届かない。

 不死の王(ノーライフキング)などと頼んでもいないのに大層不名誉な二つ名がつけられた少女の種族は、吸血鬼(ヴァンパイア)である。


 生まれ変わるならば、転移するのならば、力も、富も、権力もなくてもいい。

 だからせめて、()()()()()に生まれたかった。


 虚ろな目で、あたりをぐるりと見回した。


 この不毛な世界に来て自身の元の名前を忘れるほどの時が経った。

 どうせならと、思い起こすことにした。


 私、『魔界の女王』と呼ばれる吸血鬼(ヴァンパイア)シーナが誕生したときのことを。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 果たして死んだのか、転移したのか、前に起こった出来事はすっぽりと向け落ちてしまっていた。

 が、とにかく目が覚めた時にはこの姿であった。


 小さな背丈、柔らかな胴体、珠のように透き通る声、すらりと伸びた四肢、煌めく銀糸のような髪。


 戸惑った。


 元男としては、未だに忘れる事のできないほどの衝撃的体験。

 そんな驚きの他に同時に喜びもあった。


 ここはまさしく異世界だと。


 セメントで塗り固められた息苦しい故郷ではないのだと歓喜した。


 しかし、数刻もすれば、この世界がどんな場所であるかを理解した。


 待ち望んでいた、色とりどりの夢や幻想的な景色で彩られた、桃源郷、理想郷の類なんかではなく、その逆、地獄、魔界の類であると。

 空は絶えずして分厚い雲に覆われ草木一つ生えない地面は赤くひび割れ、ぬらぬらとした表皮を持つ奇怪な生物が蠢くディストピアであると。


 そんな世界の中、私は食べ物を求め、住む場所を求め必死に生きた。

 元の世界よりも真剣に、まじめに。


 幸いにもこの身体は、強かった。


 どの生物よりも怪力で、どの生命よりも俊敏に動き、どの生体よりも魔力があった。

 あらゆる攻撃を見切り、あらゆる魔法は効果すらなかった。

 だから、襲ってくる滑稽な生き物を殺し、快適な環境な為魔力を惜しまず土地を改善した。


 そうして数百、数千年生きた頃に知性を持つ生き物が奉仕の代わり保護を求め集まってきた。

 いずれ、村となり、街となり、国と呼べるほど大きくなった。


 しかし、その間私の身体は朽ちることも老いることも患うこともなかった。

 そうして、ようやく気付いた。


 この身体は()()()()がないのだと。


 有り余る時間を使い、この世界のあらゆる物を作り、あらゆる者を育て、あらゆるモノを喰らい尽くした。


 仏教における、四苦の内、『死』と『老い』と『病』の3つを克服した身体。

 しかし、残った『生』の苦悩が、圧倒的な『退屈』を生んだ。

 終わることのない一切皆苦。


 心残りなどど言う物が擦れて読めなくなろうが『退屈』は ー 『死にたくなる病患』は、消えることはなかった。


『退屈』から逃避するように様々な物を試した。

 城を築き、法を整備し、コロシアムを建て自分を殺せる者を探したことさえもあった。


 だが、無駄だった...

 駄目だった。

 無意味だった。


 何年生きようと何百何千何万年と生きようが『退屈』は、私の悪しき隣人であり離れようとしてくれなかった。


 そして、今尚も。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「余裕ぶりやがって!オレの最上魔法で死ねッ!!『ブラック・フレア』ッ!!」


 今度は、気持ちの悪い生暖かい風は頬を撫でた。


「クソッ!!何故死なないッ!!!」


 目をゆっくりと開き(バカ)を見据えた。


 焦燥に駆られ無駄と知りつつも必死に魔法を繰り出す姿は、あまりに滑稽で情けない。

 果たして後何年この不快な攻撃を喰らえば、体調を崩すのだろうか。

 体調を崩せば死ねるだろうか。

 いや、私を殺せるほどの魔力がこいつにはあるのだろうか。


 一瞬間考えた。


 だが、長い時間じっとこらえ凌ぐのは、耐え難い『苦痛』だ。

 だから、そっと腕を持ち上げ


「クソ!クソ!クソッ!!オレは強いはずだ!!誰にも負けないはずなんだ!!」


 中指と親指で音を鳴らし終わらせる。


 パチッ!


 空気の弾ける音とともに何か別のモノも弾け飛んだ。


「アァァァッ!!オレの...オレの腕が!!」


 苦しそうだ。可愛そうだ。

 だから、すぐにもう一度指を鳴らした。


 パチンッ!


 そうして私の隣にはまた『退屈』が居座っていた。


「はぁ...楽に死にたい」

一話目の後書きってあんまり書くことない気がするんですよね。


どうでしょう。感想書いてくれませんか?

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