第1豚 豚公爵と、ピッグテヰル公爵領の人々
とある世界の、とある国に、とある公爵領が、あった。
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「あ、お父様、お母様!
ちょうど良かった、メタボルは見なかった?」
公爵領家内で走り回っていた、公爵令嬢『カテーテル・ピッグテヰル』は、その足を止め父母に問いかける。
「こ、これ、カテーテル!
公爵令嬢ともあろう者が、全くなんと、はしたない!」
「まぁまぁ、母さん。
良いじゃないか、元気な方が」
母である『ホルモン・ピッグテヰル』と、現公爵『トランプ・ピッグテヰル』は、苦笑いしながら長女へと、そう答えた。
そして、隣にいたピッグテヰル家の使用人『シスコネ』が、彼女に答えを提示する。
「メタボル様でしたら、今、魔法の先生と勉強中です」
「ぐぬぬ……。
私が『公爵学』を叩き込むって約束だったのにいい……。
また、魔法っ。
次期公爵の自覚が無さすぎるぞ……。
あンの、バカ弟めえええ!」
姉の怒声が、領内中に、響き渡るのであった。
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同じく、公爵領家内
「そ、そんな、バカな……これは、魔法数の最終未達成問題だぞ……」
魔術師として新進気鋭とされるその男は、人生の大半を、その問題に対して費やしていた。
解けるわけがない。
自分だけではない。
もう数百年、天才と言われた先人達が束になってかかっても、解けた人間がいない問題なのだから。
なんどもなんども、その答えを確認して。
そこに蟻の子一匹入るすき間の無い証明に、なんどもなんども、絶望する。
「ええ、流石に苦労しましたよ。
久しぶりに徹夜、したくらいですから」
新進気鋭の魔術師に対して、弱冠6歳の公爵令息は、微笑む。
「……さて、先生?
約束しましたよね?
これが解けた暁には、私と……」
「ひ、ひぃ……ッ!」
汚ならしい笑顔を浮かべる公爵令息と。
顔をひきつらせる魔術師。
そして。
「アッー!」
「……ぶひょ、ぶひょ。
ぶひょひょひょひょひょひょひょひょひょ!」
二つの声が、公爵領家に響き渡るのであった。
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そんなわけで、これは。
とある世界の、とある国にある、とある公爵領家における、とある公爵令息の、悪逆非道な、物語。
豚公爵の、公爵領魔族襲撃から公爵襲名位までをダイジェストで書く予定。
豚毒200話まで読んで無い場合はネタバレな話もあります。