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潜入、急転直下


「やばすぎ……」


 ぼそ、と思わず内心の声が表へと溢れ出た。

 だって小人さんが言いながら軽く踏み込んでぴょん、と跳んだように見えて瞬きしたら、そのほんの瞬き一瞬で真っ白な聖浮城(セントフルトア)の頂上付近に小さな小粒のピンクがあったんだもん。いや速すぎ。


「――急げッ! 早く民の保護をッ!」


 はっ! 呆気に取られてる場合ではなかった!


「私たちも行きますわよ」

「――どっちに?」

「…………」


 う、そうだった。夫の問いかけに歩き出した足が急停止。思わず救助のほうを手伝おうと動きかけたが、当初の予定では戦闘の混乱に乗じてあの天空の城にこっそり潜入するつもりだったのだ。

 ……なんか小人さんが城のほうへ先に飛んでっちゃったから、流れと雰囲気でこっちかな? と自然と救助のほうに動きかけたけど――これって戦闘じゃないけど予定通り混乱してる? から潜入チャンス、ってことでいいんだよね?

 ちら、と皇女たちのほうを見てみたが、私が手伝わなくともちゃんと軍統制してテキパキと指示を飛ばし、よそさまの国の大軍なのにかなり巧みに動かして救助活動していた。


「…………」

「そんなに気になる?」

「ええ、まぁ……」


 だって小人さんから一時的だって聞いたし……ざっと少し確認しただけで絶対ではないだろうが、おそらくこちらから遠ければ遠い程に人へ戻ってから既に再び魔獣に戻っていっているように見える。

 それを考慮すれば、こちらからの距離や時間的に救助が間に合わない民の数が大多数になりそうなのだ。それでは戻した意味が無いとまでは言わないが、後味が悪い。


 そしてあの謎のもや、めちゃくちゃ見覚えある。というか、魔獣がどういう成り立ちなのかを思えば正体にも簡単に予想がつくので、ここから離れていいものかと迷ってしまう。

 ……一応ここまで連れて来ている他の魔女たちが居るには居るが、血気盛んな娘たちなので救助とかは苦手、というかやった事あっても適当な心得の魔女が殆どだと思う。

 難民誘導の時でさえ、救助よりかただの追い込み猟みたいな感じだったし。


「――ならば拙者がまとめて葬る故に」

「ほ……!?」


 葬る!? 聞き間違い? じゃなさそう! めっちゃ真顔だ……。


「……ほ、葬られては困るのですけれどっ?」


 驚きと混乱でわちゃわちゃ動き、足をもつれさせ転びかけながら言った。

 横に居た夫が転ぶ寸前にキャッチしてくれた。ナイスキャッチ。


「……うむ。放念でござる。拙者が葬るのはあの不浄のみ故に」

「そんなことが出来ますの……?」


 勝手にバナナで滑ったみたいに何も無いところで一人ですっ転びかけて、更に夫がキャッチしてくれなければ今頃あわや、おむすびコロコロになってたかもしれないという私のあまりにギャグ線高めな空気読めてない醜態の一部始終を丸っとスルーしながら、牡丹くんが真顔のまま詳しく教えてくれた。

 いや真顔でスルーされるほうが絶妙に恥ずかしい黒歴史になるんだけども……。


「――滅封刀の好物でござる故に」

「好物……?」


 刀の好物とか意味分かんな……あれ? そういえばいつだったか、前にも今と似たような感想を抱いた気がする。デジャブ。

 などとアホな事を考えているうちにス――、と牡丹くんが刀の鍔を押し上げた。


「『加減滅封――百花、ゑぐな』」


 コォォォォォオォォォォォオオ……――。


「す、……」


 すご……モヤが刀に吸われてる。吸引力の変わらない、ただひとつの刀……。

 ……てか本当に食べてるみたい。全然、美味しいとは思えないけど。


「――粗方、葬った故に」

「まぁ……!」


 少々眉根を寄せて、気怠そうに牡丹くんが告げてきた。色気むんむん。

 もしも今の妖艶な感じの牡丹くんを、常に妖艶な魅力溢れるアザレアとセットで並べたら……と想像してみるが、確実に耽美艶美で退廃的な世界へと魂抜かれ……誘われそう。

 素敵だと思ったならば、誰かれ構わずとお兄さまお姉さま呼びが常識の世界。とーっても最高だと思います。はい。あな良き哉。


「――今の内だッ! 救助を急げッ!」


 などと再び私がアホな事を考えているうちに、牡丹くんが見渡す限りの不浄を取り除いたことで再びバタバタ倒れて魔獣から人に戻ってと大変な経験をされておられる民たちの救助へ、皇女が枯れそうなほどの大声を張って指揮に全力を注いでいた。

 魔女ではないので不浄自体は視えていないのだろうが、その代わりに武人としてか軍人としてか皇族としてか、いずれにしても敏感に空気、というか異変を読んで即応出来る胆力は素晴らしいものだ。

 ……なんかすんません。


「これでこっちはなんとか大丈夫そうだね」

「……そうですわね」

「なら、ぼくたちもはやく行こっか!」


 ぴく、とロータスの声にビビる。……やめろ。それ以上は近寄るんでない、きゅるるん腹黒。そちらさんが誰かにちょびっと近付いただけで、後でアイリス魔王が簡単に闇落ちして人類を滅ぼそうとしてくるんだから。本気で近寄んな。でも遠くからならおーけー。

 これってロータス実は、アイリスが闇落ちするとか全部分かっててやってるんだよね、と原作知識を引っ張り出して可愛いへの反応をしっかりと自制する。でも遠くからならおーけー。

 だからあんたらの愛情確認に巻き込むな。マジで。もうアイリスの殺戮(バッド)モードはこりごり。二度とごめんだ。……でもバレないように遠くからなら、大丈夫だよね。

 ――バレなきゃ良いんだ。バレなきゃな!


「問題は、デイジーたちがどこに居るかだけど……」

「そうですわねえ……」


 と、いうのも。今回の聖浮城(セントフルトア)潜入に際して、目的は二つあるのだ。

 その一つは――デイジーたちの()()だった。


 私は最近知って普通にびっくりしたのだが、デイジーの血筋は王国のみならずアイオーン帝国にてかなり由緒ある血筋の家柄からも引いているものだったらしい。

 その流れは帝国名家出身の御令嬢がとある事情でシネラリア王国まで亡命し、その際に王国で助けてくれたマクガベズ伯爵と恋に落ちてそのまま結婚、デイジーが生まれたというものだそう。


 その後は愛ある結婚をして娘を産んだことで御令嬢が家族を置いて亡命したことを心底後悔し、置いてきてしまった故郷の親にも娘を見せて自分が幸せに暮らしていることを告げよう、とこっそり帝国へと帰郷したのだ――が、呆気なく殺された。

 当時はもう情勢が安定していたのもあるし、御令嬢が逃げたことに関してはもうとある事情とやらには不要になったから特にお咎めが無い、と各所から入念な連絡があったために訪問を決めたのだそうな。……誘い出された罠とも知らず。

 そこで何があったかまでは分からないそうだが、結果としてデイジーは下半身不随に()()()()状態で命辛々、付き添いの侍女と共に逃げ帰ってきたらしい。侍女はデイジーをマクガベズ伯爵へと送り届けてすぐ、息絶えたそうだ。


 客観的にもかなり悲惨過ぎる過去だが、それよりもそういった事情があることを今まで隠していたのを明かしてまで、デイジーからカトレアへと深刻な相談が舞い込んで来たのが最初だったらしい。

 ……どうやら、デイジーの病気だと偽ってた下半身不随の呪いに関して、婚約者であるジギタリスがどこかで勘付いて真相に気付き、独自に帝国について調べて回っていたようだ、と。


 デイジーとしてはかなり昔の出来事だったし、帝国で徹底的に隠蔽されてる風に見受けられたのできっと碌なことも分からないだろう、と婚約者が諦めやすいように暫く好きにさせていたそうだが――どうやら、この件について調べているうちに婚約者が()()()()()()()()()ようだ、とデイジーが違和感に気付いたのだ。

 ――軟派な態度で女性たちへ笑顔を振りまき始めたのはこの頃で、デイジーはもしや浮気かと一瞬不安になったようだが、よくよく聞けば実際には浮気などではなく調()()だったと婚約者の軟派な言動の内容、中身で気付いた。


 何の調査かまでは、言うまでもない。デイジーは諦める兆しもなく、あらゆる手段で調査を続行する婚約者に対し申し訳なく思って、直接もう調べなくていいとまで本人へと頼んだが、デイジーが何を言っても最後まで聞き入れてはくれなかったらしい。

 ――そうして日々が過ぎていったある日、婚約者が満面の笑みで告げてきた。


『これから自由に歩けるようになれるよ』


 と。デイジーは何も聞かなかった。嫌な予感がしたからだそうだ。

 そうして学園入学()、カトレアに相談を持ち込んだのだ――婚約者がもしかすれば帝国と、しかも帝国でも一等危険で触れてはならない存在と通じているのかもしれない、と。


 ()()は帝国で掛けられたもの。デイジーの父親であるマクガベズ伯爵の上級貴族としての伝手――おそらく私の母、ダリアのことだ――を頼っても如何とも解けなかったのだから、後は掛けた()()に解いてもらうしかない、というのが正道なのはこの世界の魔法において常識だった。

 ……あれほど執念深く調査していた婚約者が確信したように歩ける、と断言したのならば直接交渉したとしか考えられない、と。


 ――そして証拠を見つけた。というか、ジギタリスが持ち込んだ。

 デイジーにさる高貴なお方がお会いして治して下さる、と。


 デイジーはもう、逃げられないことを悟ったそうだ。父は魔獣騒動で家には不在で居らず、戦える兵士たちも同様であったからである。

 ……()()()カトレアへの文には、今後デイジーから如何様な知らせが届こうとも今までに相談していた事柄や、関与を匂わされても全て隠して無かったことのようにしらばっくれてくれ、と。


 カトレアは不穏を感じてデイジーの言う通りにひとまず従いはしたが、放置は出来ないので代わりにどうにかこうにか様子を探ろうと例の舞踏会に招待して引っ張り出した。

 ――だがその際、ジギタリスが招待もしていない()()()()()の見掛けたこともない()()を心の底から嬉し気に堂々とエスコートしていたことで、カトレアはデイジーが無事ではない状況だと確信したようだ。

 会場にこっそり戻ってから機をみてルドベキアに事情を説明し、デイジーを探し救出しようとしていたそうだ。


 ただ、御存じの通り突如として皇女が龍に変化してしまったり、庭園で大きな戦闘が起こってしっちゃかめっちゃかに荒らされる、という大混乱が起きててそれどころではなくなってしまった。

 それでもカトレアはどうにか早々に諸々の問題をひとまず表面上収拾させ、ルドベキアへ事情を伝えてすぐさまマクガベズ家へと急行したそうだが――デイジーは既にどこにも居なかった。


 確認すれば伯爵自身は舞踏会にひとりで参加していたそうだが、それは出掛ける前に娘のデイジーが急に体調が物凄く悪くなったように見えたので家で留守番、というより休ませていたからだという証言があった。

 ……私はあの舞踏会の夜、デイジーを目撃していた。中身はデイジーじゃなかったかもしれないけど、身体は間違いなくデイジーそのものであった。


 しかし残念ながら最後の目撃者である私はそれから数か月と寝たきりである。調査や、ましてや追いかけるなど到底不可能であった。

 季節だけが過ぎてデイジーに関しての捜索はそのまま何も進展しなかったが、私が目を覚ましたことであたりがつけられた。やはり帝国の仕業だろうと。


 ……いやそりゃあ、最初から怪しいのは帝国だと誰もが分かっているけども。ただ、肝心の証拠が何もかも足りないのに「お前が犯人だ!」をされても言い逃れされるだけである。デイジーの安否を思えば、言い逃れ不可能である確実な証拠が無ければならなかった。

 なので私が目覚めて皇女から事情聴取出来たのもそうだが、私から出た最後の目撃証言から行方を辿った結果――舞踏会の夜に忽然と姿を共に消したジギタリスの足取りがやっと掴めたのだ。


 ここでようやく証拠持参で政治的な外交へと相手を持ち込むようにして諸々移行するのだが……残念なことにド素人過ぎて、そこの駆け引きは私にはよく分からなかった。

 とりあえずその交渉中にどうやら二人とも帝都の、それも聖浮城(セントフルトア)内に居るというところまでが分かれば私にとってはもうお腹いっぱい、充分な情報なのである。

 なのでどういう外交渉があったかの内容を聞いてはいるが、詳細は覚えてない。


 スチャ!


「――見つけましたわ!」


 ……まぁつまり、回想長くなったが省略すると面白眼鏡が大活躍なのであーる!

 もうね。奉迎祭でコレ見つけたときにはもう、物凄くテンション上がったよね。

 天啓もかくや、って感じで。超ハイテンションよ。


「……二人はどうやら、城の下層に囚われて居りますわね」


 ……いやだって、どうやって帝都の、それも聖浮城(セントフルトア)内のどこにいるかも全く分からないデイジーたちを見つけるのか、そんな難題をしれっと要求してきたカトレアたちに、一体私の事がどれほどまでに有能な魔女に見えているんだい……? と問いただしてやりたいほどだったんだもん。やらなかったけど。

 ――この面白眼鏡はカップルの覗き見に関してだけは、異様に高性能に過ぎるとんでもない代物(ブツ)なのである。


 なので毒殺逆切れヤンデレかぽーがカップル判定を受けないわけがない。面白眼鏡の判定に引っかかる逢引云々に関しても、もはやこの状況が二人にとっては悲劇の逃避行中みたいなものだし、ロミジュリ気分だろうし?

 その証拠にほら、普通に透視して二人のホログラムがハッキリと映ってますがな。何やら倒れ込んだデイジーを抱えてジギタリスが悲愴な顔で嘆いているっぽいが大丈夫だ。この面白眼鏡は()()()かぽーにしか興味が無い、好みのハッキリした面白眼鏡様なので、デイジーは無事……ではないかもしれないが、気絶かなんかをしてるだけでまだ生きてるはずだ。

 天は悩める苦労人な私を見捨てなかった。面白眼鏡さまさまである。


「……ちょうど、近くにもう一つの目的もございますわね」

「そっか! じゃあ場所を教えて。ぼくの魔法で連れてくよ!」


 もう一つの目的――それは()()であった。


 ……そう、それは私の父がかつて守聖騎士なんていう厨二臭い役職名なのに、実態が核爆弾レベルで物凄く危険なブツを命がけで常に見守らなければならない不憫な役目を一人で担わされていただけという、あの龍珠である。

 そして母が奪おうとして()()し、代わりにどういうわけか父を攫って結婚という、後に波乱のラブロマンスを繰り広げたと桃色脚色された例の龍珠である。


 龍珠を狙うのは、単純にアレが人を魔獣へと変貌させている元凶だからである。どうして母が昔これを狙ったのかが今まで分からなかったが……違う方面から調べていくうちに真実を知って、なるほどと思った。

 そりゃそんな危険ブツ、私でもあの例の奔放な女神様が牛耳る帝国に置いてはおけないと思うだろう。というか実際に女神が皇女を龍に変化させたのも、コレが諸悪の根源だと思われるし。それが皇女どころか今までにずっと、何代も何度もということであれば、あまりに女神の私利私欲が過ぎて危なっかしいわな。

 ……かつて母が奪取に失敗したのは、単純に龍珠を囲う強力な結界に阻まれたからである。魔女だから弾かれたというわけではなく、単純に決められた()()でしか龍珠の元へと辿り着けないように魔法が掛けられていたのだ。


 ――ここまで言えばお察しだろうが、私は父の血を引いている。

 つまり私は龍珠を囲う結界に阻まれないのだ。本来は兄もそうなのだけど不在、というより行方不明なのだから私がやるのは仕方がないのだ……。

 ちなみに父は自ら攫われて帝国から出奔した際、死亡扱いとなり血筋があっても権利が剥奪されていて全く近づけないらしいので頼めない八方塞がり。


「――着いたよ!」


 などと遠い目で再び意識を飛ばして「どうしてこうなったし」な感じで回想していると、ロータスが明るく告げてきた。……本当に城内へと一瞬で()()出来たらしい。

 アイリスが暗器系の魔法の使い手であることを考えれば、不意打ち上等な転移系の魔法の使い手であるロータスの組み合わせは、そりゃもうお似合いだろうよ。


 てかそもそも実力行使に至る前に陰謀というか策謀でサクッとやってくる系なのに、さらに補完するような能力を与えるなんてこの世界を創った神は一体全体何を考えてるんだ……私のような一般ぴーぽーにとっては、あまりに危険すぎるだろうに。

 大丈夫かな。転移の為にちょっと近付き過ぎたかもしれない。夫が間に挟まっていたとはいえ、何がエンドコンテンツなアイリス魔王の琴線に触れるか分かったものじゃない。

 ……もうやだ何なのこの腹黒ヤンデレ暗殺かぽー。属性が不穏過ぎて震える。


「……何の抵抗も無く取れましたわ」


 となんやかんや内心で気を逸らしながら龍珠という核もかくやな危険ブツに近付く恐怖(ビビり)を、今後この身に訪れるかもしれない別の恐怖(ビビり)でいなしているうちに、龍珠を何事もなくゲットしてしまった。

 大丈夫大丈夫って各方面から太鼓判を押されてはいたが、マジか……。


「デイジーたちも回収できたし、はやく出ようよ!」

「……ええ、よろしくお願い致しますわ。オルベスタイン様」


 何故だろう……腑に落ちない。本当にあっさりと計画通りに成功してしまった。

 何かしらの妨害はあるかな? とか考えて緊張してたのに、本気で何もない。


「――うむ。拙者には確認したき事物がござる故に」


 ロータスに近付いて転移でさっさと戻ろうとしていると、牡丹くんが私たちからかなりの距離を置いて淡々とこちらへ告げて来た。

 転移の範囲からかなり距離を取ったことから、まだここから帰る気は無いのだという強く固い意思が見受けられた。


「……そうなの? もう戻らないけど、帰りは大丈夫?」

「うむ。構わず戻るが良いでござる故に」

「うん、分かった」


 ロータスが怪訝そうに聞いたが、牡丹くんの答えは変わらなかった。せっかくここまで当初の計画が上手くいってるのに、わざわざ見つかって危険な目に合うリスクを背負ってまで敵地でもたもたごたごた問答し続ける理由は無い、と即断したロータスが頷いて一瞬で転移した。

 ――何故、残るのか……などと何かを牡丹くんに問う隙も無い素早さであった。


「デイジーたちを運ぼう。気絶したジギタリスはぼくが運べるけど……手伝って?」


 ……転移した際、実はジギタリスは私の下敷きになって気絶してしまっていた。というより、有体に言えばデイジーを庇って潰れたのだった。

 ちょっとロータスに伝えた座標が正確な位置過ぎた。本当に申し訳ない。こんなに高精度とは思わなかったし、まさか言った座標にズレずに飛ぶとは思わなんだ。

 普通、位置を教えたら居ると考えるだろうに、もしやわざとかな腹黒タス?


 ……と思いつつも何も指摘しないのは、きっとジギタリス気絶の実行犯としてかつて絡まれた際にぶん殴ってやりたかった衝動を偶然でも発散出来て、留飲が下がったからである。

 という感じで気絶したジギタリスたちを中心に転移したので、城内では特に触れる必要は無かったが戻ってきたのなら救護所にでも運んでやらねば。

 因縁によって自業自得の一発をぶちかまされて気絶してるジギタリスは適当に男性陣へと任せ、デイジーに関しては近くに居た女性騎士を呼んで運んでやった。


 気絶してる女性貴族を、婚約者でもない輩に運ばせるわけにはいくまいて。まあ私は背中のやつがあるので、夫が近くにいるとはいえ触れるのは控えて運んでる女性騎士にあれこれ指図しただけだけど。

 とにかくそんな感じで重要任務を全て達成し一安心、ほくほくしていると――。


「――なんだあれはっ!」


 と何故か救助活動に勤しんでいた兵士たちが、一斉に不穏にざわつき始めた。

 なんだなんだ、今度は何があった――と皆が空を見上げるので、つられて見る。


 カ――ッ!!!!!


「……あぇ?」


 ぐるんぐるん、視界が真っ白に染まると同時に揺らぎ始めた。


「――――ッ!」


 何か、聞こえた。夫の、必死な声が――。


『――数多、遍く星々と神々よ』


 遠い、記憶がよみがえ――。


『我が存在尽くの全てを掛け、』


 ああ、そっか、私、私は、私を――。


『――遍くこの星の生命へと救いを齎さん』


 煌々と全てを照らす、眩い()の光が終わり、()()は目覚める。


「ぁ、あ……おねが、ぃ――」


 どうか、私を、


「わたし……――」


 ――()()(ころ)して。

満を持してダークタグさんが重い腰を上げました。

(๑╹ω╹๑ )よいしょっ

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