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七夕の少女  作者: ももちもも
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再開

待ち合わせは1年前のここだった……

一年前と何も変わらない寂れた喫茶店、今日は生憎の台風だ。

天気のせいもあってか、客は私しかいなかった。

いつだってそうだ。

こうやって時間通りについても相手はこない。


一年前だってそうだ……


7月7日、親に頼まれてコーヒー豆を買いに行った。

商店街のキャンペーンだかなんだか知らないが、短冊もらった。

特にやることもなかったので、短冊に願いを書くことにした。

周りの短冊を見ると、彼女が出来ますようにや金持ちになりますようになど、とても子供には見せられないような願いが多かった。

かといって私はこれと言って短冊に書くような願いがあるわけでもない。

周りにのっかり宝くじがあたりますようにとか書くべきだろうか。

書くのに5分ぐらい悩み、私はこう書いた。

『世界平和』偽善だ……わかっている。

でも、こうなればいい、なってほしいというのは本音だ。

父さんや母さんの仲など良くなれば、家族平和に繋がり世界平和への第一歩だと思う。

そんなぐだらない願いを書いた短冊を吊るした。

「あの、これも一緒に吊るしてもらえませんか?」

「あ、はい」

条件反射で答えてしまったが、振り返り短冊を受け取るときに気づいた。

車いすの女の子が短冊を私に渡してきた。

「できるだけ高いところにお願いします」

「えっ?」

「できるだけ、目立つように! えへへ」

車いすの少女は元気よく笑っていた。

ただ、私は願い事が見えた時に胸が締め付けられる。

『生きれますように』

私はつま先立ちをし、できるだけ高い位置に結んであげた。

「病気、なの?」

なんでこんなこと聞いてるんだ。

口に出してしまった後悔、いや吊るすだけで踏み込まなきゃよかった。

「ありがとうございます。よくわかんないんだよね」

笑顔のまま答える少女に私は少し恥ずかしくなり、自分の短冊を外した。

無意味かもしれない。

ただこうすることで神様の負担が一つ減る。

彼女の願いが叶えばいいそう考えた。

「あれ、自分のは吊るさないんですか?」

「あーうん…字間違っちゃってね」

少女の問いに、とっさに嘘をついた。

「あの、迎えにきてもらうまで少し時間があるのですが、休めそうな場所どこかありますか?」

私はコーヒー豆を買った喫茶店へと案内をした。

少女は上手く歩けないことや、海外の病院へ入院しないといけないことを話し始めた。私はそれをただ相槌を打つことしかできなかった。

暫くすると迎えがきた。別れ際、来週も会えませんか?とお願いされ、私は頷いた。

そんなことを毎週繰り返してた。

しかし、少女は時間に遅刻するようになり、会える時間も短くなっていった。

聞かないし言わなかったが、なんとなくわかっていた。

病状がよくないのだ……

「ごめんね、今日で暫く会えなくなる」

「そうか」

最後の最後までこんな返事だ。

「あの、来年の七夕の日、ここで会えないかな」

「いいよ」

笑顔のまま泣いてる少女に私は頷いた。

今まで泣いてる少女を見たことがなく、凄く動揺したが、最後まで私はこんな感じだった。わかってる。なんとなくもう会えないんだって。

……………………



「…じょうぶ……大丈夫?」

「あっ、えっ?」

気づいたら寝ていたようで目が覚めた。

忘れもしないその声、少女の声だった。

「なんで?」

「約束したでしょ??」

「あ、あぁ、でも時間は守られてないけどな」

色々聞きたいが、冷静さを保つために淡々と喋る。

「あはは、ごめんなさい」

変わらずいつものように謝る少女に私は我慢の限界を迎えた。

「まだ眠い」

涙を隠すように慌てて机に突っ伏した。

少女は笑って呟く

「おやすみなさい」

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