7.決着
成瀬千鶴の拳骨が直撃した。
瞬間、鋭い痛みが私の腕に走った。
彼女は拳骨の中にボールペンを隠していたのだ。
それが私の肉を突き破り、骨に届く前に止まった。
紺のブレザーだけでなく、白のワイシャツにも穴が開き、患部は朱に染まっていた。
見ずとも出血の程度がわかるほどだった。
痛みがひどくて、左腕はもう使い物にならない。
髪を振り乱して、成瀬千鶴はボールペンを振り回す。
片腕が使えないだけで形勢が不利になった。
こんな単調な攻撃ならば、余裕でカウンターも決められる。
でも、使えるのが右腕だけとなれば、そのパターンも限られてくる。
足技を使うにしても、腕を負傷していては、万が一のときに受け身が取れない。
じりじりと後退していくと、黒板にぶつかった。行き止まりだ。
鞭のように腕を振り回して、徐々に追い詰めてくる成瀬千鶴。
その動作はやや緩慢になっていた。
「くらえッ!」
私は目元に向けて、黒板消しを投げつけた。
それは白墨の粉を撒き散らして床に落ちた。成瀬千鶴は咳き込みながら目をこすっている。
私はすばやく腰を回転させ、裏拳を人中(鼻から上唇を結ぶ溝のあたり)に叩き込んだ。
彼女は泥酔者のようにふらついた。
私はその頭をつかんで教卓に殴打した。ゴン、と鈍い音がした。
そして無防備になった腹部を蹴り上げる。女子の身体は柔軟で、股関節の可動域が想像を超えていた。
もし機会があったら、相手の側頭部に向けて、ハイキックでも放ってみようかなと思った。
と、そこへ。
「何をやっているんだ。おい、仁科ァ!」
担任教師の怒号が、私をどん底へと突き落としたのである。