表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/26

21.絆走者の極意

 転生者は――相手の魂ごと乗っ取るため、身体機能にタイムラグを生じさせることなく、十全にそのパワーを発揮出来る。

 転移者は――相手の精神を依代にするため、あくまでも身体は宿主のものとされ、その実力の半分も引き出せない。


 ただし。


絆走者ばんそうしゃの極意』は例外だ。

 強い絆はときとして、その常識を超えるのだ。


「これで終わりよ!」

 男の短パンからは、濃いすね毛がのぞいていた。

 筋肉で固めた太い脚が、ゆっくりと私に照準を合わせる。


 木造校舎には一条も光が差さない。私と転生者はにらみ合ったままだ。

 わずかな体重移動で、床がみしりと鳴った。


 風を切る音が、耳朶に響いた。

 屈強な男の蹴りが飛んできた。


 構わず前に出る。

 足刀が、服を裂いた。

 比喩ではない切れ味がその蹴りにはあった。


 私は身体を回転させて、相手の側頭部を目がけて、跳んだ。

 めしぃ、と。肋骨が折れる嫌な音を聞いた。

 丸太の太い腕が、がら空きの胴部ボディを打ち抜いていたのだ。


 またしても、意識が、飛ぶ……。

 ことはなかった。

 私はそうなる前に、下唇を喰いちぎって、失神を阻止していたのだ。


 口腔内で、肉片と血液の味が交じわった。


「きぇぇぇえええ!!!!」


 男のこめかみを全力で蹴り抜く。

 と、肋骨を中心にして全身に激痛が走った。


「ぎぃやあああああ」

 私は叫んだ。男は昏倒していた。

 木造建築に絶叫が反響し続ける。

 私は他人事のようにそれを聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ