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15.確執

「水鳥鮪を現世に転移させたってのは本当か、ネルウァ」

 熊のように大柄な創造神のハドリアヌスは横柄な態度で言った。

 天然パーマの髪に切れ長の鋭い目つきをしていて、鼻梁が高く、整ったあごヒゲを蓄えていた。

「ええ本当ですよ、ハドリアヌス。あのままでは地獄行きになりかねませんでした」

 ウェーブがかかったネルウァの白い長髪が、微風で揺れた。

「アレクサンデル教皇にはその旨を具申したのか? 五賢帝ともあろうものが追試を受けるとは笑止千万だがな」


 転移とは、基本的には人間偏差値が著しく劣る人間が行うものであり、創造神の中では追試と呼ばれていた。

 犯罪もせず社会貢献もしなかった者を人間偏差値50として評価するが、それを大きく下回った場合は地獄行きもしくは追試となる。

 地獄では魂そのものを消滅させられてしまうか、強制労働を経てから黄泉の世界に戻されるかの二者択一だが、そこはもう破壊神の領域であり、創造神が介入することは許されない。

 今回では水鳥鮪が人間偏差値を大きく下回ったため、追試を受けているのである。


「もちろん教皇から許可はいただきました。私の人間偏差値も下げられてしまうでしょうが仕方ありません」

「無欲だな、ネルウァ。そんな落ちこぼれなど早々に地獄送りにしてしまえば済む話だろう」

「そうはいきませんよ。私は五賢帝である以上に教導者ですから、教え子を見捨てることは致しかねます」

「まあいいや。下がるのはお前の人間偏差値なんだからな」


 ちっ。そう舌打ちをしてネルウァの赤褐色の肌を見つめる。

 ハドリアヌスは口元をゆがめて続けた。


「水鳥鮪に殺された佐伯あかね。俺は彼女に追試を受けさせることにした」

「左様ですか。それならばお互いを発奮材料に頑張りましょう。なにかと因縁のある2人ですしね。試験内容はどうするおつもりですか?」

「水鳥鮪、やつが転移した先の宿主を殺すことだ。佐伯あかねは俺の最高傑作だった。強姦罪? 知るか、そんなもの。不起訴になれば社会的にはなんの問題もなかったはずだ。それを水鳥鮪に阻止された。俺は怒ってるぞ、ネルウァ。水鳥鮪に、本当の地獄を見せてやるよ」

「言葉を返すようですが、アレクサンデル教皇にはどのように説明するつもりですか? そのような動機では追試は受けられないはずですよ」

「なあに、簡単だ。人間偏差値が高い佐伯あかねのことだからな。社会貢献をさせて、より清らかな魂に浄化するためとでも言うさ」

「…………」

「そして俺はお前が嫌いだ、ネルウァ。野心もないくせに、俺よりも高い人間偏差値を取ってるんじゃねーよ」


 ネルウァ(人間偏差値68)

 ハドリアヌス(人間偏差値65)


 こうして最終決戦の号砲は静かに打ち鳴らされたのである。

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