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片想い

作者: 昼夜

窓辺から外を眺め、まるでジュリエットを待つロミオのような顔をしている君。一体何を見ているの? と聞いてみても諦めたように笑うだけ。

笑顔の意味はわからなくても、笑顔を見れたという事実だけで私の心は空を飛べる。



あの日、退屈そうに参考書を読んでいる君を見つけた瞬間、私は一目惚れをした。恋に恋する年頃だとはいえ、それはあまりに衝動的なものだった。



今度はうまくいくだろうか。いや、うまくいかないだろうな。じゃあ見て見ぬ振りをするの? それもできないよ。

そんな自問自答が泡のように浮かんでは消え、気づけば君のことしか考えられなくなっていた。起きてる時はいつだって君のことを探していた。


とにかく、君の色々な表情がみたい。

そんなことを思って、毎晩話のネタを考える。


「わ!」


廊下の角で待ち伏せをして、急に現れて驚かしてみた。君は微動だにせず、ただただ目を丸くしていた。そして、何秒間か経ってようやく微笑んだ。糸みたいに細くなった二重の瞳が私の心を締めつけた。


「みてみて! 鳩だせるよ」


ハットから鳩を出してみた。君はすごいすごいと拍手をしながら、私よりも鳩のことを見つめていた。鳩が首を傾げるたびに、私は鳩に嫉妬した。でも、夢中になっている君の横顔は私を夢見心地にさせた。


「ねえ、聞いて。私、ピアノ弾けるんだ」


君の好きな曲を録音してみた。君は興味深そうにイヤホンを耳につけると、やがて歌を口ずさみはじめた。

優しくて甘い声で歌われる切ない歌詞は、まるで私の気持ちを歌っているようだった。



君と出会って結構な時間が経って。

私達はすっかり意気投合した。でも、まだどこか距離がある気がする。それは私が君に言えない秘密を抱えているということ以外にも、何か理由がある気がした。


ただ少なくとも君の表情は全て網羅できた気がする。私は君の色々な顔を思い出してついニヤけてしまった。



とある休日の夕方、珍しく君は私を呼びつけた。



せっかくだし、もっと心の距離を縮めたい。

私は思いきって綺麗な花を買った。蜜柑色の綺麗な花だ。花言葉は片想い.....なんて言ったら君はどんな顔をするだろう。笑いながら誤魔化すだろうか。それともーー。

想像して、私は流石に気恥ずかしくなった。



待ち合わせ場所についた。

君は誰もいない公園のベンチにひとり座っている。茜色の光を反射して輝く君の瞳が、私には北極星のように思える。


「よ。元気? 今日はどうしたの急に」

「急にごめん。元気だよ......」


そう答えた君の表情には何故だか影がさしてみえた。

でも、消え入りそうな雰囲気を出しているのはいつものことだから、私は気にしないことにした。


私は君の腕をツンツンとつつくと、手に持っていた一輪の花を手渡した。花を見ると君は驚いたように瞳を輝かせた。でも、その輝きは花火みたいにすぐに失われてしまった。



「ね。この花の花言葉ね、片想いなんだ」

私は少し俯きながら呟いた。君の顔がみたいのに、何故か怖くてみれない。


「......」

「どうしたの?」


恐る恐る見上げれば、君はいつの間にか泣きそうな顔をしていた。大きな目の端には雫がたまり、今にもこぼれ落ちそうだ。


その涙をみてふと思った。

まだ、泣いてる顔を見たことがなかったな。


涙が地面を濡らした瞬間、君は呟いた。


「さっき、振られちゃったんだ」


私は息を止めた。

刹那のうちに、この世界全ての酸素が失われた気がした。


「そっか......それは......」


こんな時、どんな声をかければいいのかわからない。好きな人を慰める言葉すら思い浮かばない自分が嫌になる。何より、君が恋をしていたことに気付けなかったことが情けなくて、とても悲しい。

胸が痛くなり、私はたまらなくなった。


片想いをしていたのは、私だけじゃなかった。


「ごめん。急に呼んでこんな話しちゃって」

「いいよいいよ。友達じゃない」

「......優しいね。君がいてくれて本当よかった」


君がいてくれて本当に良かった。

その言葉、何倍にもして返してあげる。

私は深呼吸をし、歴史に残る勇気を振り絞った。



「......ね。それならさ、私と付き合ってみない?」



その問いかけに君は涙目のまま、少しだけ笑いながらこう言った。



「そうだね。もし私たちのどっちかが男の子だったら、絶対に付き合ったのにね」



そう言いながら微笑む彼女の顔をみて、私も微笑んだ。笑顔の裏側では、彼女が笑顔になってくれたことへの安堵と叶わぬ恋への儚さが混じり合っていた。



「だね。私、男の子に生まれたかったな。そうすれば絶対君を幸せにしたのに。ほんと......なんでだろ」


私たちが結ばれることはあり得ない。

それならせめて、君の1番の友人でありたい。

そう思って過ごしてきた。

でも、やっぱり無理だった。


参ったな。

私も泣いてしまいそう。


みずみずしい蜜柑色の花は夏風に吹かれ、その花びらを夕空に散らせた。

ありがとうございました

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