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ボクっ娘勇者 VS 生き別れ系義妹

「おきるにゃおきるにゃ~!!」


「にーちゃ、あさー」


ポンポンと、ベッドで跳ねるリムとうつ伏せになって眠る俺の尻を揺らすアリア……。まて、もう少しくらい、寝かせてくれ……。


「ゆーしゃとだんちょがたたかう~」


「イッキウチにゃ!ケットーにゃ!!」


「……アルとブロンシュが…………決闘ッ!??」「うわ!」


腕を立てて起き上がると、ポンポンと跳ねていたリムがベッドの上でひっくり返ってあははは!と笑いだす。アリアは、俺の背中あたりをさすって、にいちゃおきたーと嬉しそうに……って、それどころじゃない!


「どこでやるんだ!?」


「おうちのおにわにゃ!」「ごはん、たべてから~」


「そ、そうか……」


今すぐ、というわけじゃないのか。

しかし、アルフィとブロンシュがなんで……いや、もしかして、昨日のことが原因か?

俺をどうのこうのって言ってたからな……。


「……」


「あ、おヒゲはえてるにゃ、えい!」


「いて!!?」


「にゃはは、ひげー」「チクチクするー」


考え事をしている間に、リムが俺の顎からちょろりと生えた髭を一本抜いて、アリアのほっぺたをツンツンと刺している……。


まぁ、急ぎじゃないなら……二度寝するか。




























「にーちゃ、すごーい!」「にゃはは、はやいにゃー!」


「はぁ、はぁ、間に合った?」


「あぁ……ったく、何やってんだよ、こんな時に」


抱えていたアリアとリムを下ろすと、庭で向き合っているアルフィとブロンシュの姿が目に映った。そして、周りにはそれを見守る子供たちに、フロレンティーナとマリーにジルヴィ……。


一騎打ち……決闘。

それは、この世界ではいまだに根強い騎士たちの儀式。

お互いの地位や名誉、時には愛や……『命』を懸けて戦う一対一の真剣勝負だ。

その戦いにはいかなる不正も許されず、また、負けた者は勝った者へと恭順の誓いを立てねばならない。もし相手の軍門に下るのを拒否するようであれば……死を選ぶのが騎士である。


まぁ、アルフィ達は騎士ではないから、そこまでの意味があるわけではないと思う。

ないとは思うが……それでも、このピリピリとした張りつめた空気に、息を呑んでしまう。


……止めようか?


元はと言えば、きっと俺が原因のくだらない戦いだろう。なら、俺がどうしたいのか明確に示せば、この戦いの意味はなくなるはずだ。だったら……

チラリと、ブロンシュがこちらを向くと、ニコリと微笑んでから俺に向かって声を上げる。


「兄ちゃんこっちー!立会人!」


「え?…………わかった!」


ワンテンポ遅れてブロンシュ達の元へと向かうと、二人の顔がよく見えた。

緊張しながらも……その表情はこれから起こる『何か』に、ワクワクとしているようにも見える。それは、決して憎しみや怒りによるものではなくて、もっと白くて美しい純粋な感情のように思えた。


俺は、さっきまでの考えを捨てた。


「始める前に良いか?」


「うん」「なに?」


「まず、殺しはなしだ。それから重傷を負わせるのもなし。負けたと思ったら素直に負けを認める……これは良いか?」


「あたりまえや」「そうだね」


その当たり前が、興奮している状態だと中々できないのだが……、まぁその時は全力で止めるだけか。


「ブロンシュ、お前のこれまでの成長……兄ちゃんに見せてほしい」


「……うんッ!」


ブロンシュの肩を軽く持つと、ブロンシュは目を見開いて頷いた。


「アルフィ、お前はもう少し、肩の力を抜け。最近、負け続けて気にしてるみたいだが……お前は強い、『勇気』を持て」


「ッ!!…………」


アルフィは力強い目線を向けると一度だけ頷いた。

口で息をするほど興奮していた二人だったが、少しは落ち着いたようである。


少しづつ二人から距離をとる。その間に思い出していたのは、二人に出会った時のことであった。思えば、出会った当初は二人ともおどおどしていて、弱気で、内気な性格をしていた気がする。それが少しずつ、成長し、自信を身につけ……気が付けば、俺よりも強いんじゃないかと思うほどに成長していた。


だが、俺は知っている。


二人が本当に強いのは……その戦闘力なんかじゃなくて、優しくて強い『心』を持っているからなのだと。


くるりと正面を向くと、噴水に背を向けてブロンシュ達に向き直る。

ブロンシュとアルフィは、一歩、また一歩とお互いに背を向けて歩みを進める…………。


フロレンティーナが緊張した面持ちでアルフィを見つめる。

ジルヴィも、マリーも、お互いの手を握ってブロンシュの方を不安そうに見ている……。



8歩……9歩……そして、10歩目だ。






「はじめ!!」





ブロンシュが閃光の如き速さで斬撃を放った。

それと同時にアルフィも、音が鳴るよりも早く剣を抜く。


ブロンシュの黒い雷を切り裂くと、アルフィは息をついてブルーデュランダルの刃先を向けた。同時に、わーっ!と子供たちが歓声を上げたのがわかった。


「ウチはレイヴン・フェザーが団長ッ!『黒雷』のブロンシュ・バルベルッ!!」


「ボクは五大勇者が一人ッ!『水の勇者』アルフィ・カーテスッ!!」



『『いざ尋常にッッ!!』』



地面を蹴った瞬間に、ぶつかり合う、蒼い刃と黒い刃。

そして、火花を飛ばしながら見るのがやっとと言う速度で剣を交え甲高い金属音を響かせると、一度お互いに飛びのいて肩で息をする……。


ど、どこが、殺しはしない、重症は負わせないだ!

こんなの……どちらかが一つ間違えば死ぬぞッ!!?


一瞬にして数十合打ち合った二人はかすり傷こそ負ったものの、どちらも勝利への有効打は与えられなかったようである。このままこのレベルの戦いを続けるのは非常にマズイ。しかし……


「に、にへへ……やるなぁアルフィ」


「へ、へへ……ブロンシュこそ」


二人の表情に浮かんでいるのは、笑顔であった。

フロレンティーナがやめさせようと前に出たが、隣にいたジルヴィに肩を掴まれている……そうだ、こんな楽しそうな二人を……止めるわけにはいかない……。


「サンダースラッシュ!!」

「アクアスラッシュ!!」



バリバリと響く雷の音に、ジュバッと響く水の音。


一見、雷の方が威力が高そうに見えるが、アルフィの扱うブルー・デュランダルから放たれる水圧は特殊な宝石が混じったレーザー光線と同じ。


両者の斬撃は相殺しあったが、もし何もしていなければ今頃ブロンシュはおろか、後ろに続く家々まですべて真っ二つになっていただろう……どちらの攻撃もまともに食らえば大けがじゃ済まないものばかりである……。


「ダークラウンド!!」


ッ!?

ブロンシュがしゃがみこんで地面へと手をつくと、黒い魔力を解放する。

瞬間、辺りは陽が見えていた朝にもかかわらず自分の身体すら見えないほどの真っ暗闇に包まれる……!!


「トースカ!!」


フロレンティーナの声が響く、すると、明かりがついたかのように暗闇の向こう側が見えるようになる……どうやらティナが俺達には戦いが見えるように手を打ってくれたらしい。もちろん、決闘に水を差すようなことはせず、アルフィにもブロンシュにも呪文はかかってない……。


アルフィは暗闇の中で顔を動かし、ブロンシュの気配をしきりに探っているがブロンシュは、アルフィがどこに居るのかわかっているかのように、ジリジリと距離を詰めている……。


「人間ってのは、少なからず『かみなり』を帯びてるらしい」


!いつの間に移動したのか、ジルヴィが俺の隣に立っていた。


「だから、こんな暗闇でもブロンシュはその微弱な『かみなり』を感じ取ってあの勇者の位置を探れるわけだ」


恐らく、静電気とか、電気のことを言っているのだろう。

確かに、炎系統の持ち主なら熱を、風系統の持ち主なら風を感じやすいとは言うものの、ブロンシュのように相手の位置を探るほどにというのは、相当な修練とセンスが必要になるはずだ……。


ッ!

暗闇の中、音もたてずにブロンシュが飛び込んだ。

剣はまっすぐにアルフィの首元を狙っているッ!!?


もちろん、寸前で止めて、殺す気はないはずだ。

しかし、しかし、それでもこの瞬間は不安になってしまう……!


バシャン!と音が響いた、よく見ると、アルフィの周りにはブルーデュランダルからしたたり落として出来た水たまりがあったようだ。その音を頼りにアルフィはブルーデュランダルを横に振るう!



「サンダー!!」

「う゛わ゛あ゛あ゛ぁッッ!!?」



「アルフィ!!」


フロレンティーナが悲痛な声を上げた。

そう、ブロンシュはそれを読んでいた。水たまりを踏んだと同時に後ろに飛びのき、そのままの姿勢で手の平から雷魔法を放つと、アルフィは強力な電撃にたまらず叫び声を上げる……。

自身の張っていた足元の水たまりが仇となって電撃の威力を上げているようだった。


「ウチが今まで戦ってきたんは魔物相手だけやない」


アルフィの周りをぐるぐると回るようにブロンシュが話始める……。


「非道な盗賊や極悪な殺人鬼……あるいは、報酬の取り分を横取りしようとしてきた同じ冒険者と戦うようなこともあった」


アルフィがブンと、ブロンシュの声がする方に切りかかったが、ブロンシュは数歩音を立てずに動いており、蒼剣は虚しく空を切る……アルフィは、深呼吸をしてから目を閉じた。


「そのたびに、ウチは……ッ!!!」


音を消してブロンシュが再び距離を詰めた!

アルフィはブロンシュが来た方向をじっと見つめ、そして、逆に飛びこむと降ってくるブロンシュの剣をはじき返して、勢いのまま身体をぶつけてショルダータックルをかました!


「ぐッ!?」


「な!!あいつ、どうやって!」


「勘、かしら」


……いや、今の感じ、もっと別の……。


「はぁ、はぁ、すごいなぁ、気配も消してたのに、なんでわかったん?」


「うん、何となく水の匂いがしたからね」


「はは、水かぁ。さっきまでわからんかったのに……?」


「うん、ブロンシュがやってるのを真似してみたらなんとなく、感覚がつかめたよ」


アルフィの言葉に目を丸くするブロンシュ、アルフィの恐ろしいところはその成長速度だ。

勇者の固有スキルなのか、アルフィの元々の才能なのかはわからないが、あいつは常人より何倍も経験値が入りやすい。

ブロンシュはリラックスするように息を吸いこむと、ダークラウンドの効果を解除して、視界には太陽の光が戻ってくる……。


ブロンシュはアルフィに目線を向けるとにっと歯を出して笑った。


「長引けば、不利になりそうやなぁ……やから、次でもう決めさせてもらう!ビビったんなら降参しいや!」


「!お、おい待てブロンシュ!!」「ブロンシュお姉ちゃん!?」


「……一体、何をするつもりなの?」


「ああ、あいつ、この辺り一帯を消し飛ばすつもりだ!」


……不味いなんてもんじゃないだろそれは!


「結界を張っておくわ。マリーとクロウ、それから……アリア、あなたも手伝ってくれるかしら?」


「う、うん。にーちゃ、おててつなぐ……」


ぎゅっと、俺の手を握るアリア。にしても、アリアもか……確かにエルフだけあって、凄まじい魔力を秘めてるが……四の五の言ってられる状況じゃないということか。

フロレンティーナが地面に魔法陣を浮かべて魔力を注ぎ始めると俺たちも一緒に魔法陣に乗り、魔力を送り込む……。だるいような、力が抜けるようなそんな感覚が流れ込んでくる。

次に慌てたのはジルヴィだった。


「おいおいッ!!あいつの「アレ」はマジでヤバいってッ!」


「お姉ちゃん、覚悟を決めましょう」


「ま、マリー?」


普段は頼れるクールビューティのくせして、こういう時にテンパってしまうジルヴィと、おどおどしているように見えて、こういう時に強いマリー。

二人も、やはり、いい姉妹だなと思う。と、始まりそうだ。


「……アルフィ。降参せぇへんのやったら、ウチは……ほんまに本気で戦うで?」


「……ボクだって、負けるわけにはいかないんだ」


ブロンシュはゆっくりと目を閉じると、空高く剣を掲げた。

すると、先ほどまでの晴れが嘘のように曇っていき、そして、ピカっと光ったと思えば、雷鳴がとどろき、大嵐が吹き荒れ始める……!?


オレたちもフロレンティーナの作った結界に魔力を込めて、建物や人に被害が出ないように守りを固めるが、凄まじい魔力の暴風に気を抜けば吹き飛ばされてしまいそうだ!

周りにいた子供たちも何人か泣き出してしまい、ジルヴィが必死であやしている。


ブロンシュは、剣を高く構えたまま、魔力を剣先に集中し、黒いオーラを放っている。


アルフィも、ブルー・デュランダルを蒼く光らせると、全身の魔力を込めて剣を低く構えた。



決着が近い。



「最後に、もう一回だけ聞くけど……アルフィ、降参せえへん?ウチ、本当は……」


暴風雨が吹き荒れる中、悲し気な目を浮かべるブロンシュ。

しかし、アルフィは首を振って笑顔を見せる。


「ブロンシュ、ボクは正々堂々キミと戦って……勝つ!そして仲間と旅をつづけるよ」


「……わかった!ウチも、アルフィに勝ちたい!」


最後の話し合いが終わったのか、ブロンシュの構えた黒剣が暴走したかのように赤黒い稲妻で弾け始める!


アルフィは、嵐の中、巨木のようにピクリとも動かずに、下段に構えたブルーデュランダルを蒼々と輝かせ始める。


「これがウチの……<<<エクレール・ノワール>>>やアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!」


ブロンシュが地面を蹴って空中に飛ぶと、ピカピカピカっと、数度空が光った。

瞬間、ブロンシュの頭上に特大の光が降り注ぎ、遅れてピシャンッ!と鼓膜が破られるかと思うほどの爆音が聞こえてくる!!

耳がやられて見えているのはブロンシュが振り下ろした極太の稲妻が、アルフィに向かって落ちたということだけだ!!


「<<<リヴァイアス・ブレイドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!>>>」


それとほぼ同時にアルフィが放ったのは、宝石の目を持った水龍を生み出すリヴァイアス・ブレイド!

雨や噴水、空気中にあるすべての水が、アルフィのブルーデュランダルに引き寄せられると、爆発するように水が噴き出しブロンシュに飛んでいく!!


二人の放った自然界最強の力がぶつかり合っている。


バチバチと水と雷が飛び散り、結界のあちこちにヒビを生み出す!や、やばい、もう、持たないぞ……!!?


……ドシャーン!と光が弾けると結界は崩壊し、やがて、雲の合間から雨が降り、光りの筋が見えはじめる……。

い、一体どうなったんだ!?



「参ったッ!!」



ッ!!?

どちらかが降参の声を上げた。

一筋の光の先には、ブロンシュとアルフィが立っている……。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「ふぅ、ふぅ、ふぅ」


そう、今の声は…………。









「ウチの…………勝ちや」


「………はぁ、はぁ……」


ブロンシュの構えた黒剣が、アルフィの首元に当たっている……。

そう、今の声は、アルフィの投了の声だったのだ……

歓声を上げる子供たちと、マルール姉妹。驚愕の色に染まるフロレンティーナの瞳……。

アルフィが、負けたか……、いや、でもあいつ……。








「……はぁ、はぁ……なぁ、どうして後ろに飛んで、避けへんかったん?まだ、少しなら余裕……はぁ、あったやろ?」


「……はぁはぁ、そんなこと……」


「ううん、ウチにはわかる…………後ろに飛んだら花を踏んづけてしまうからやろ?」


「…………」


アルフィの踵には、綺麗に咲いた花の茎があった。あそこは子供たちが育てている花壇だ……恐らく、アルフィが後ろに下がれば踏みつけてしまい、例えかわしたとしても……ブロンシュの一閃が花を散らすことになっていただろう。

きっと、あそこに花が咲いていなければ、アルフィは攻撃をかわしていたし、アルフィが花を踏みつけても気にしないような性格なら、まだ戦いは続いていただろう。


しかし、それはもしもの話でしかない。

結果としてあるのは、アルフィは降参し、ブロンシュがそれを受け入れるかどうかだということ。


「……………………………ウチは」


「……」


「ウチは、それでも兄ちゃんと一緒にいたい」


カランカランと武器を落とす二人。

勝敗は、決した、か。


「……でも、こんなの……いやや!ウチ、いやや……」


……ブロンシュは、アルフィの優しさで勝ちを譲ってもらう形になったのが納得できないのか、瞳を潤ませて涙を浮かべる……

アルフィは困った顔を浮かべ、少し考えた後にブロンシュを抱きしめると笑顔で背中をさする。


「キミの勝ちだよ……ブロンシュ」


「ちゃう、こんなん勝ちとちゃうもん……ぐす、うう、うえええええええん!!!」


「うぅ、な、泣かないでよ、うぅ、うぅぅぅぅううううああ」


「あうう」「だんちょ、なか、ぐ、なかないで」「うぅ、お姉ちゃん……」


……つられて、子供たちまで泣き始め、ジルヴィたちまで大粒の涙を浮かべ始める……。

…………もしかしなくても、これは、俺のせい、なのだろうか。


いや、俺のせいだ!


「よし、そこまで!!」


鼻水を出して泣いていた二人に駆け寄ると、不意打ち気味に二人の頭を思いっきり撫でたくった!


「な、な、な?」「わわ!?」


「いい勝負だった。本当に。危なっかしいところもあったけど、二人の気持ちはしっかりと受け取った……だから、今回は二人とも勝ちってことで良いんじゃないか?」


「二人とも」「勝ち?」


ずずっと、鼻を啜って、お互いを見つめるブロンシュとアルフィ。

二人は……そうしよか?というと、うん……いいの?と聞き返すと、ええ!それがええ!と笑顔を見せて、勝ち負けでも引き分けでもなく、両方勝ちという形で幕を下ろすことにした。

まぁ、なんの解決にもなってない妥協案なんだけどな!


「大体、俺がどうしたいのかは、俺が決めることだろ」


「え」「兄ちゃん?」


不安そうに俺を見上げる二人……


「……間を取って、俺は地元に帰って騎士団に戻るっていうのはどうだ?」


二人の気持ちはわかった。そう、俺の騎士としての実力を買って頼ってくれる気持ちは正直に嬉しい。けど、それで争うようなことが起きるのは絶対にいやだ。

だったら、争いの元が居なくなれば、それで二人はきっと笑顔になる。俺も騎士団に戻れてみんなハッピー……?

二人の目に怒りの色が宿っていく。あああああ、ヤバイ、ヤバいって……。


「ボクたちさぁ」「ほんま、そういうとこ、そういうとこやで兄ちゃん!」


「い、いや、名案だと思うんだけ……ど」


バチバチと雷を宿すブロンシュの黒剣に、大気中の水を圧縮し始めるアルフィのブルーデュランダル……。


「……じゃあ!」


「兄ちゃん!!」「クロウ!!」


二人の攻撃が、頬を掠める!髪を掠める!服を掠める!!やばい!死ぬる!!


「ははは……ぐす、ま、しょうがねーか」


「でも、良かったのかしら。結果的に言えば、そっちが譲る形に……」


「ま、いいんじゃねーの。空も綺麗だし」








晴れ空には、7色のアーチがくっきりと浮かんでいた。



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