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ボクっ娘勇者

あぁ、どうしてこんなことになったんだ!


「ほら、早くでできてよ!」


ドンドンドン!と力強く戸を叩く音が聞こえる。

こんな、こんなはずではなかったのに!


「こんなところに籠ってないでさ!」


バキィと、ドアノブが破壊された音と共に勢いよくドアが開く!


「さぁクロウ!!一緒に、魔王を倒しに行こう!!!」


そこに飛び込んできたのは、勇者だけが扱えるという伝説の剣……ブルーデュランダルを担いだ女勇者・アルフィの姿が……!


俺はただ平和に!静かに!安心して暮らしていたかっただけなのに!!

















絶対にパーティを抜けてやる!! ~幼馴染の女勇者パーティから抜けられなくなった件~






























俺の名前はクロウ・クライネルト。周りは単にクロウと呼ぶことが多い。


「ちょっとクロウ~。野菜の買い出しに行ってきてくれないかしら~!」


「え~………」


「お願いね~!」


せっかくの休み、ベッドの上でぐーたら過ごしたかったのだが、宿屋の女将である母親に頼まれたのでベットに張り付いていた身体を起こすと重い足取りで階段を降りはじめる。


宿屋のドアを開けるとシャッと眼には朝の眩しい光が飛び込んでくる……。

相も変わらず高そうな鎧を自慢げに飾った防具屋は今日も閑古鳥、空を見上げると太陽が出ているのにはっきりと月も見えている。井戸端会議をするエルフ耳や角の生えた魔族の奥さんに棒切れを持った獣耳の少年などなど……。


「『いつも通り』か……」


軽く欠伸をすると頭を掻いて歩き出す。

それは、確かにいつも通りの平凡な日常であった。いや、いつの間に、こちらが『いつも通り』になっていたといった感覚に近かった。








何時の頃からだったからかわからないが、俺には「異世界の記憶」がある。

いや、記憶があるなんて言うほど生易しいものではない。

俺はその異世界で確かに食べて、学んで、生きていたのだ。


その異世界は『日本』と呼ばれる島国で、俺はこちらと同じで九朗くろうという名前で生活していた。

父と母それから2つ離れた妹と暮らし、学校に通いながら部活動に励み、目立った特徴のない至極平凡な生活を送っていた。食べ物は美味いし、勉強は誰でも受けられ、娯楽は多岐に渡っている……今にして思えばこんなにすごい世界はなかった。


なかった。というのは、俺が成長するにつれその時の記憶が徐々に薄れていったからである。


前世の記憶というか、それに近いものだったのだろうか。こっちの世界が『異世界』であるという感覚は徐々になくなり、確かに生きていると思っていた日本での生活の方が『夢』のようなもので、俺はクロウ・クライネルトというクライネルト家の長男。

この『平凡な世界』で生きる普通の男子に過ぎないのだとはっきりわかってしまったのだ。






「こんちは」


「いらっしゃい!って、なんだクロウか……お前さんこんな日にまでお使いなんてやってるのか?」


「こんな日?」


「いや……まぁ良いんだが。いつものだろ、ちょっと待ってろ」


八百屋のおっさんが俺のことを見て一瞬驚いたが、すぐに、頭を掻きながら奥に引っ込んでいってしまった。こんな日って……今日は何かあったっけ?


待っている間に街を見回す。

電化製品が見当たらない西洋風な街並み。初めこそ文明レベルの差にうんざりしたが、この世界も慣れてしまえば悪くはない。剣と魔法の世界だなんて昔から憧れていたし、精霊だかなんだかの影響で食材の質は段違いに高くて美味いものが多い。つやつやに輝く野菜たちを見てそう思う。


ただ……


「ちょっと、奥さん聞きました?また、アイウルフの群れが現れたんですって」


「怖いわねぇ。旦那も最近、凶暴化したビッグフロッグに襲われたらしいし……」


「……」


この世界には"魔物"が出る。


町の中は門を守る衛兵や結界を張る術師のおかげで安全だが、それでもこの世界の多くの人間の死因は魔物に襲われて死ぬというものである。結界の一歩外に出れば常に死と隣り合わせ、そんな弱肉強食を地で行くサバイバルな世界なのだ。


そんな世界を生き抜くためにパーティを組んで旅をする「冒険者」と呼ばれる人たちもいるが……いや、あんなのは命がいくつあっても足りないと断言できる。


ケガをしても保険はおりないし、危険な仕事が多いわりに若いうちにたくさん稼いでおかないと老後も碌に暮らせない。子供たちは、冒険者たちの嘘か真か信じられないような冒険譚に心を躍らせて憧れているみたいだが、そんな危険な職業……俺は絶対なりたくない。


安定した平穏な暮らし。それが一番だろう。

俺は同年代の奴らがこぞって冒険者になったころ、親父のコネで地元の騎士団に就職することにしたのだ。そうしみじみ思い出していると奥からおっちゃんが箱一杯に入った野菜を持ってきてくれる。


「ほらよ。良い感じに見繕っておいてやったぜ。お代はいつもみたいにまとめて回収させてもらうからな」


「ありがとうおっちゃん……おっと」


「しかしいくつになってもお使いをしてるクロウが『騎士様』には見えないよなぁ」


がははははと笑うおっちゃん。余計なお世話である。


騎士団はたまに魔物の討伐なども行うが、小さなころから魔物を倒してコツコツ"レベル"を上げていた俺には雑魚同然である。おまけにそんな楽な仕事なのに公務員扱いなので福利厚生もしっかりしていて、村の人には尊敬されて感謝されるともう良いことづくめ。『現代知識で荒稼ぎ』なんてのも考えたけれど、社会的な保障に勝るものもないと思ってやめた。


ギャンブルなんてしたくない。ただ静かに平穏に暮らせればそれで良い。



それが、俺の生き方だった。

今日、この日までは……



















「ク~~ロ~~ウ~~!!」


「ぐえ!!?」


野菜の入った箱を運んでいると背後からドン!!!と凄まじい勢いで抱き着いてきた少女がいた!?


「お、おい!なんだよ急に……」


「えっへへ~」


背後に目を向けると、ぴょこんと茶色い一本のアホ毛が目に映る。

視界から逃れる様に右に左にアホ毛が跳ねる。改めて前を向くと踊るようにくるくる回って、両手を広げて目の前へと躍り出たのは爽やかに笑うボーイッシュな顔立ちに、茶色い跳ね気味のショートヘア。

冒険者風の土汚れのついたプレートアーマーに、赤いマント、そして背負っているの…


"水のように蒼く透き通った大きな聖剣"……。


こいつの名は"アル"ことアルフィ・カーテス。俺の所謂幼馴染というやつである。

そのアルフィがニヤニヤと頬を緩めて俺の周りをご機嫌に小躍りしながら回っている。まるでボクの機嫌がいい理由を聞いてくれと言わんばかりである。いや、っていうか実際そう口に出し始めている。


「……あ~、何かあったのか?」


「えぇ!わかんないの!?」


「わからん」


「今日のボク、いつも違うところがあるよね?ね?」


期待を込めた目で聖剣をチラチラ見ながら俺の目を覗き込むアルフィの空のような青い瞳。


「あ~、いつもよりも可愛い、かも」


「えぇ!?あ、うん……あ、ありがと……!えへへ、じゃなくって!……もう!だから見に来てッて言ったのに……あのねクロウ!ボク、今日ついに……『本物の勇者』になれたんだよ!?」


「本物の勇者ぁ?あぁ、ってことは何とかの試練に合格したってことか?今日だっけ?」


「そうだよもう!それで、ほら、これはその証拠の聖剣!"ブルー・デュランダル"だよ!」


空にその聖剣をかざすと、日光に照らされた水面のように波打つ刀身。確かに、今まで見てきたどの剣よりも綺麗だし、正直顔が良いアルフィが持つとかなりサマになっている。


昨日までのアルは勇者の子孫を自称しているだけのただの『勇者候補』に過ぎなかった。


なんちゃらの試練とかいう王様が出す課題をこなすことで、何千人という候補者の中からたった一人にだけその聖剣を与えられ、そうして初めて勇者として認められるのだという。そうか、おっちゃんが驚いていたのは今日がその選定試験の日だったのに俺がのんびり買い物なんてしていたからか。

いや、だってどうせこいつが勝ちとると思っていたから気にもしていなかった。


小さなときに規格外の力を持つという勇者の存在と、その子孫について知った俺はいじめられていた彼女に声をかけて、将来、玉の輿に乗れるかもしれんという下心からずっと仲良くしていた。しかし、アルの家はすさまじく貧乏でむしろ世話をする機会が多くなってしまったのだが……そうか、ついにこの日が来たのか。


俺は、この日を待ちわびていたと言っても良い。これで、無茶な彼女の狩りや彼女が張り切り過ぎて壊した建物の後始末に困ることがなくなるのだろう。


「そうか……おめでとうな、アル。後、試練見に行けなくてごめんな」


「……え、う、ううん、ありがとうクロウ!ボクがこうして勇者になれたのも、クロウ。全部君のお陰だよ!」


「そんなことないって、お前が夢が追いかけ続けた、お前自身の努力とひたむきさが実を結んだ結果だ」


「……………ぐすぐす、う”ん。あ、ありがとう」


ちょっと涙声ではにかむように潤んだ目で笑うアルフィ。それに釣られるように俺も笑う。

その手に入れた新しい勇者の力で頑張って地位と名声と金を手に入れて、俺を養うか、幼馴染の縁で珍しい金銀財宝の一つでも送ってほしい。今までの苦労もそれで報われるというもの。

俺に最後に出来るのは、せめて、盛大に送り出してやることだけだ。


「寂しくなるな」


「……うん」


二人でしんみりした空気の中、空を見上げると。暫くすると、うん!とアルフィが声を上げて俺に向き直る。


「……じゃ、行こっか!」


「…………ん?どこへ?」


「決まってるじゃん!魔王を倒しにいくんだよ!それが勇者の使命なんだから」


「?あぁ、頑張って倒してこいよ」


そういえば、500年ぶりにそんなもんが復活していたな。だからこそ、勇者の試練があったわけだけど……。


「もう!だから、クロウ!君も行くんだよ!!ボクと一緒に『魔王退治の旅』に!!」


「っ!!?はぁぁっっ!?そんなの嫌に決まってるだろ!?」


思わず持っていた箱を落としそうになった。

何故に、そんなことを言い出すんだ。そう拒絶した俺にアルフィは何を言っているかわからないという顔でキョトンとしている。


「え……い、嫌?何で?」


「だって、危ないし碌に給料も出ないんだろ?俺、留守番しとくからさ、アル、お前一人で頑張ってこい」


「…………」


「いやいや、俺、モブみたいなもんじゃん?ただの宿屋の息子だぞ!」


正直アルフィの戦闘力は勇者の子孫と言うだけあって、俺よりも二つくらい次元の違う強さをしている。旅について行ったところで、やっていける自信もない。


「キミは騎士団長の息子で隊長じゃないの!しかも、剣は達人レベルで、おまけに貴重な治癒魔法まで使える!これ以上の人材世界中探したって絶対いないよ!!!」


昔からやたら俺のことを過大評価して満面の笑みを浮かべるアルフィ。

コイツは昔から俺が自分よりも強いと勘違いしている節がある。そんなこと全くないのだが……


「ほら、俺、枕が変わると寝れないし」


「昔からどこでだって寝てたよね」


「あー!いまお使いを頼まれてて」


「その持ってる箱だよね?じゃあ、もう終わりだね」


「……ほ、ほら、俺にはジョンを守る使命が」


「……犬のジョンならこの間亡くなったよね」


「……」


「……」












バタバタバタと、階段を駆け上ると宿屋の自室まで逃げ込み鍵をかけた!


そこへ、冒頭の出来事である。

俺を連れて行こうとするアルフィは、ドアをその凄まじい怪力で蹴破ると服が伸びるのも構わないといった風にぐいぐいと、ベッドにしがみつく俺を必死に引っぺがそうとしている。

って、うわああぁ!!?

ビリビリっていったぞ、今!


「お、俺は行かないぞ!?」


「おかしいよ!魔王だよ!世界の危機なんだよ!?」


「そんなのほかの奴に任せとけ!!確かお前以外にも勇者は……あ!そうだ!俺にはこの宿屋を守る使命があるんだったー!」


「大丈夫だよ!!おばさんから宿屋は私がなんとかするから、息子をよろしくってー!」


「なッ!?お袋を攻略済みだと……!?で、でも、ぜったい、行かないぞ俺は!?」


ぐいーーっと力任せに俺を引っ張るアルフィ!

こいつ。相変わらずなんて馬鹿力!勇者の力は伊達ではないということか!?


「だ、大体、なんで俺なんか連れていきたいんだよ!」


「それは……さっき言ったでしょ!兎に角!ボクはクロウに来てほしいの!クロウじゃなきゃダメなの!……そうだ!」


「ぐえ!」


ぱっとアルフィが手を離すと勢い余ってベッドの角に顎が激突した。いってぇ……。

しかし、どうやら彼女は諦めてくれたらしい。軽快な足音を立てて階段を降りていくアルフィの足音が聞こえる。


立派になれよアルフィ。その実は大きなバスト以外も!










「と、言うわけで魔法使いのフロレンティーナちゃんに来てもらったよ!」


「どういうわけなのかさっぱりなのだけれど?」


アルフィは全然諦めていなかった。

彼女に手を引かれて部屋に入ってきたのは、金髪ウェーブに赤い瞳、スリットの入った魔法使いの露出が多いローブにとんがり帽子を身に纏った少女。


フロレンティーナ・フローレンス。

この街の幼馴染2号である。名前が長いので皆からはティナとかティーナとか言われている。


こいつはボッチだったけれど魔法使いとしてとんでもなく優秀で、本来であれば生まれたときに数種類しか使うことのできない魔法の資質を全種類もっており、将来絶対大魔法使いになると確信していたので下心を持ってずっと仲良くしていた。のだが……その手には何やら旅支度を終えた荷物のようなものが……まさか。


「ティナ。お前、まさかアルフィと一緒に行くつもりなのか?」


「え?クロウ、あなたは行かないの?」


なんてこった。

俺を養ってくれると思っていたフロレンティーナまでもが、まさか、こんな形でいなくなるなんて……


「行くのはやめろ。よくわからん魔王とかいうやつを倒す旅なんて正気の沙汰じゃないぞ?」


「それはそうでしょうけど。旅をすること自体、きっといい経験になるわよ?それに……アルフィを一人で放っておけないし……」


確かにこいつは世間知らずでお人よしでお馬鹿なので悪い奴に騙されたりしないか、心配だけども……


「えへへ。ありがとティーナッ!」


「きゃ!も、もうアルフィったら」


そういってフロレンティーナに抱き着くアルフィ。満更でもなさそうなフロレンティーナ。うーん、相も変わらず仲が良い。

しかし、残念だな。フロレンティーナのやつは一度決めたら意外と頑固だから引き留めるのは難しいだろう。将来は大魔法使いになった彼女に養ってもらうのも一つの手かと思っていたが、ええい仕方がない!


「……どうしても行くのか?」


「ええ……それに何かあったって、その、あなたが守……」


「わかった、止めはしない!!二人とも、頑張って魔王とやらを倒してこい!」


「「……」」















「やめろ!!状態異常をかけて無理やり連れて行こうとするのはやめろぉ!」


麻痺や眠りと当たればただじゃ済まない魔法を連打ししてくるフロレンティーナ。

こいつ、幼馴染を一体何だと思っているんだ!?


「なんなら死体のまま連れて行くわよ……?」


……怖すぎるわ!


「ねぇ、いい加減諦めて行こうよ~!クロウ!!ね?一生のお願い!!」


「いやだッ!!」


「どうしてそこまで頑なに行きたがらないのよ?騎士団でも、魔物と戦うことなんて日常茶飯事じゃない」


「だからこそだろ」


「「え?」」


引っ張っていたアルフィをそっと引きはがすと二人に背を向けて窓を開け放つ。すると穏やかな日差しと心地よい風が通っていく……。

顔を出してたまたま見つけた肉屋の子供に手を振ってやると、向こうも鼻水を垂らしてぶんぶんと手を振ってくれた。


「……この国は見ての通り平和だ。だけど、いつ魔王の影響で魔物が侵攻して来るかわからないだろ?

俺は騎士団の一員として、この手でこの国を守りたいんだ。もし、俺が居ない間に町が滅びていただなんて、そんなことがあったら嫌だから……ここはお前たちが帰ってくる場所でもあるからな……」


「か、帰る場所……!?く、クロウ……キミは……えへへ、そっかそっか……」


アルフィは、ジーンとしたように蒼い瞳に涙をためてごしごしと手袋の甲で拭っている。いい感じだ。

だが、隣で腕を組んでいる魔法使い様は全て見抜いているようで、腕を組んだまま赤い瞳からは絶対零度の視線を向けている。


「……それで、本当のところは?」


「はい、旅すんのが面倒くさいです」


「えぇ!!?」


だって、この世界の旅なんて基本野宿だし……魔物に奇襲されて死ぬこともあるし……何よりは全部移動が徒歩なのだ!!車を体験したことのある現代人には非常に馬鹿馬鹿しい話である。


一応、生活魔法という便利魔法で旅の汚れなどはとれるが風呂に入れないしベッドだって……第一、勇者一行として仮に魔王を倒せたとしてその先に何があるというんだ?


せいぜい魔王を討伐した新しい脅威と見なされるのがオチだ。それに、俺は金や名声なんていらないのだ。今のまま安定した生活をして、いつか綺麗な嫁さんでも貰って静かに暮らせればそれでいいと思っている。


「そうだな……俺を仲間にしたかったら、空飛ぶ絨毯か移動系の呪文でも手に入れてからにしてくれ、そしたら……考える」


「そ、空飛ぶじゅうたんに移動系の呪文?それがあれば、クロウは旅についてきてくれるの……?だったらボク……」


「アルフィ。こいつの事だからきっと考えるって言っただけで、行くとはいってませーん、何て言いだすわよ……あのね、クロウ。女だけの旅何て危険よ?もしかしたら、山賊に襲われて装備をひん剥かれ、そのまま……なんてことも十分にあり得るのよ?」


「相手が男好きで俺だけ襲われるかもしれないだろ!」


「そんなレアケース知らないわよ!んん!それでね、困ったときに頼れる男の人がいてくれたら助かると思わない?」


う!フロレンティーナはベッドに腰かけると、俺の手の甲にその白雪のようなスベスベの手を重ねる。そのまま、上目遣いにこちらを見上げると、ゴールドブロンドの髪からは女の子の良い匂いが……!


くそ、この顔、嘘をついてないから余計に困る。本当に俺に来てほしいと……


「……ダメ?」


「…………………はぁ~、わか」「大丈夫!何かあってもボクが絶対にティーナを守ってみせるからね!」


そういって満面の笑みを浮かべたアルフィが俺とフロレンティーナの手の上にその手の平を乗せ、堂々と宣言する。きりっとしていて本当に顔が良い。


「……だそうだよ」


「アルフィ……えーっと、嬉しいのだけれど……ちょっとタイミングが悪かったわね……」


「えぇ?」















それからも、二人はあーでもない、こーでもないと俺を連れていくために策を講じてきたのだが、俺は鋼の意志で決して首を縦には振らなかった。それどころか、俺はいかに旅が危険か、二人にも理解してもらいたく様々な言い訳で対抗した。


その甲斐あってか、5分おきごとに作戦を練って俺を説得に来ていた二人が、次第に部屋に入ってこなくなった。


さすがにもうあきらめて帰ったのかと思った直後、ドスドスドス!と階段を上ってくる音が聞こえる。やれやれまだ諦めてなかったのか。何度来ようと俺はお前たちには付いて行かないぞ!


「というわけで、クロウのお父さんに来てもらったよ!」


「お前解雇」


「」


こうして、俺は騎士団を首にされ、あっさり勇者パーティに(強制的に)入ることとなってしまった……


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