<<王子視点>>転生前の初恋
開いて頂きありがとうございます。
リヴル聖教国は、リヴル聖教の宗教国家である。
建国の王は、リヴル聖教の創始者であり、大陸のメイン宗教と言っても良い国だ。
リヴルの第三王子、リスカ=リヴル、12歳。
リスカは日本からの転生者だった。
日本の教育を受け、かつ日本でも指折りの大学に入学するくらい優秀だったたリスカは天才と呼ばれた。
日本での並の外見は、王という美形遺伝子により、とても見栄えが良いルックスになっている。
「王子、そろそろ婚約者を決めなければなりません。今回こそは、王子が気に入るような美しいご令嬢を集めております」
この世界の婚約者制度に違和感を覚える。
まだ12歳なのに、とリスカは溜息を付くが、この世界で12歳で婚約というのは普通なのだ。
「またその話か……」
そしてリスカは、宰相が集めた令嬢の写真を眺めていく。
どの令嬢も女性らしさを感じる所部分は豊かで、全体的には力を入れると折れてしまうように華奢である。
顔立ちは精巧な人形のように整い、美しい。
そして、何枚かの写真には、王子の気を引こうと下着や水着、寝着のセクシーな写真も混ざっていた。
王子の婚約者に相応しい家の格を持ち、内面も素晴らしい人間性だと宰相が力説する。
こういう写真を見ると、前世、日本での初恋の事を思い出す。
近所に住んでいる五つ年上の人だった。
彼女はとても太っていた。
海外輸入の大きなサイズのジーパンとTシャツは、お世辞にもお洒落とは言えなかったけど。
髪は強いパーマで、目は小さく糸のような細い目。
眉は薄く、知らない人が見ると、震えてしまうような容姿だった。
決して美人ではなかった。ただ家が近所という事もあり、彼女の優しさや、さりげない気遣い。
遊び相手になってくれたり、色々な悩みを相談したり。
そう言った交流の中で、俺は彼女の事が大好きになっていた。
「またな、良お兄ちゃん」
そう言うと、彼女は困ったような顔をしながら、俺に微笑んで手を振った。
決して整ってはいない顔立ちも、良く見ると優しそうな雰囲気と柔らかさがある。
ジブリの名作に出てくる、となりのアレ。巨大な不思議生物のような魅力があった。
美しいか?と言われれば、首を横に振った。
好きか?と言われれば、好きだ、と答える事ができる。
大きくなったら、結婚しなくてはいけないなら、良兄ちゃんがいいと思った。
一緒に居ると楽しかった。一緒に居ると落ち着いた。
結婚したら、兄ちゃんとずっと一緒に居られるのかな、と考えた。
俺は綺麗な女性が好きだ。付き合いたい、と思う女性も何人も居た。
ただ、たった一人としか結婚できないのなら、
俺は良兄ちゃんを選んだと思う。
美人とか、美人じゃないとか。
それ以前に、彼女は彼女であるだけで良かった。
「この悪ガキめ!」
「今日は悪ガキの家に母さん居ないの?なら私が作ってやるわ」
「自分が悪くなくても、謝ってくればいいと思うよ」
勇気を出して尋ねてみた。
「おい兄ちゃん、恋人いんのか?」
「何だよ、悪ガキ。いねえよ、でも好きな人は居るよ」
「ふーん、そっか」
振られた、と落ち込んでいる兄ちゃんを見て、心の中では喜んだ。
まだ兄ちゃんは俺の物だから。
「俺が大きくなったら、兄ちゃんと結婚してやるから落ち込むなよ。
俺、兄ちゃんの事が好きだから」
明日、兄ちゃんにそう言おう。
そして、その言葉を伝える事はできなかった。
「あんたが懐いてた良さん、亡くなったわよ」
……
……
「今回は王子もきっと婚約したい女性がいるはずですよ」
そう言って俺と年の近い少女の写真が並べられる。
「王子と年齢が近い、家柄の釣り合う方を並べております」
「解った解った、見ておくから」
そういうと、宰相は数枚の写真を持って出ていこうとする。
その行動が気になり、俺は声をかけた。
「どうしてそれらの写真を持っていくんだ?」
「王子は華奢な方が好きだと言われておりましたので、好みでなさそうな方を抜きましたが?」
「……いつ俺がそんな事を言ったんだ。置いていけ、一応見る」
似たような令嬢ばかりを見ていると、感覚が麻痺してくる。
そして、宰相が抜いた写真をパラパラと眺める。
なるほど、これは黒い噂があった家。こちらは、男を何人も侍らせていた伯爵家の令嬢か。
宰相曰く『好みではなさそうな方リスト』は、確かに選考前にはじかれる理由があった。
「こういうのを眺めるのも面白いな」
そして一枚の写真が現れた時、彼は固まった。
「え……」
その写真には、チリチリパーマで糸目の、
「りょ、良兄ちゃん!?」
前世で懐いていた彼女にそっくりな令嬢が居た。
読んでいただきありがとうございました。
王子は一話のお兄ちゃん呼ばわりする、あの悪ガキです。
ブックマークがじわじわ増えたのが嬉しくて、二日連続で更新しちゃいました。
ありがとうございます!




