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白銀物語 ‐the Journey to Search for Old Friends‐  作者: 埋群のどか
序 章:現代日本・A県
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第6話

「わ、悪かったわよ……。」

「黒江君も、あまり絢火をからかわないようにね?」

「ゴ、ゴメン……。」

「フフ、素直ね。」


 その雰囲気だけで黒江と絢火を収める彼女、敷島零(しきしまれい)の存在はこの個性的なメンバーの中でも埋もれることなく目立っていた。大学内での人気も高く、男子たちはお互いに牽制し合って手を出せないでいる。その美しさ故に大学祭のミスコンへ招待されたこともあったが、彼女は出場を辞退していた。もし参加していたら、ミスコン頂点の座は彼女の物だったと言われるほどだ。


「あー……、えっと、そ、そう言えば僕たちの結果言ってなかったよね? えっと、浩から言う?」


 気まずさを感じた黒江は、雰囲気を変えるためにも話題を露骨に逸らした。かなりのキラーパスに浩は閉口するが、しぶしぶ話し出そうとする。

 しかしそれを止めたのは零自身だった。


「黒江君たちの結果はみんな知ってるわよ。さっきあれだけ話してたじゃない。」

「あ、あー、そうなの? えっと、じゃあ、敷島さんの結果を聞いても良いかな?」


 この人相手だと上手く話せないな。そんな事を考えながら、黒江はまたも下手な話題提供に試みるのだった。まるで手玉に取られているかのようである。零はその黒江の反応に怪しげな微笑みを浮かべながらも、きちんと答えてくれた。


「私は、属性が氷だったわ。地元を思い出すわね。適性値が960。ロールは『巫女』よ。」

「巫女? 敷島さんによく似合っていると思うけど、なんかみんなとは少し雰囲気違うね。」


 自身の本当の結果を含め皆に出された結果と比べて、零に示されたロール「巫女」はやけに日本的な印象であった。無論、神に仕える女性と言う意味なら世界各国に古今問わず存在するが、彼女と「巫女」という単語を並べると日本の巫女しか思い浮かばない。

 黒江が一度だけ見せてもらった彼女の巫女服姿の写真を思い出していると、零が口を開いた。


「それにしても、黄河君のアイデアはいいアイデアだけど、集まる場所はどうするのかしら? 大学内だけでも、場所を決めずに集まるなんて無理よ。異世界なら猶更だわ。」


 零の指摘に皆が考え込んだ。零の指摘はまったくもってその通りである。目印、もしくは連絡手段もなしに複数人が集合することは不可能に近い。しかも舞台は異世界、どんな目印があるかもわからず、連絡手段があるとも限らない。


「高い塔がある街なんてどうだ?」

「……現代世界じゃないんだぞ。塔があるかどうかも分からん。」

「ん~……。あ! 山はどうかな~?」

「山って、土田さん。それやとそこに向かうのすらキツイで?」

「こういうのは、テンプレに従う物なのよ。異世界なら絶対ギルドとかがあるわ。そこの本部とかに集まれば良いのよ!」

「いやぁ、ウチそう言うの詳しくないけど、ない確率の方が高くないかい?」

「やはり、どんな世界でも共通する特徴が目印にするのが良いのではないか?」

「となると、どこがいいかしらね?」


 皆がそれぞれのアイデアを出し合う。しかしどれも決定打に欠けた。皆の意見を聞いていた黒江は、皆のアイデアを集約するような一つのアイデアを口にする。


「ねぇみんな。『一番栄えている街』なんてどう?」


 黒江の発したアイデアに皆は一瞬黙った。そして再び口を開くと、そのアイデアの実現性を考え始める。


「……一番栄えている街、か。栄えているという定義が難しいが、無難かもな。」

「で、でも、栄えている街だったら、街同士で連絡取れたりしないでしょうか……?」

「栄えている街だったら、美味しい食べ物とかあるかなぁ~。」

「栄えている街が寒いところだったらいいわね。」

「アンタさっきからそればっかりじゃない!?」

「東北出身者としては寒い方が慣れているのよ。」

「まぁでも、それ以外良い場所思いつかねぇしな。……よし!」


 黄河が大きく手を打った。皆が黄河に注目する。黄河は皆の注目が集まり切ったことを確認すると、まとめるように話し出した。


「集合場所は『一番栄えている街』な! まぁ絶対いくつかの場所に分散するだろうけど、そん時はどうにかして連絡とろうぜ。みんな頑張って都会に集合な!」


 黄河の言葉に皆が頷いた。「一番栄えている街」に集合。転生させられる世界の事が分からない以上、これよりも詳しい条件付けは難しいだろう。


『――もう良いようですね。』


 タイミングを計っていたのか、集合場所を決め終わったとたんに謎の声が出現した。もはや皆は驚く事もなく、ただ謎の声を聞いている。


「おう、終わったぜ。さっきまでの話聞いてたのか?」

『ええ。聞こえていました。』

「別に向こうの世界で集まるのは良いんだろ? まさか、それまでダメだとは言わないよな?」


 黄河がニヤリと口の端を歪めながら言った。その様子を見た黒江は、黄河との長い付き合いを思い出す。


「(コイツ、昔っからこうだよな。押さえつけられるのが嫌いって言うか、ルールの虚を突きたがるって言うか……。)」


 思い出すのは中学時代のとある記憶である。当時黒江の通っていた中学では頭髪規定があり、もみあげは耳の半分以下で全体として短くなければならないと規定されていた。それに当てはまる髪型は大体が丸刈りかスポーツ刈りであったが、当時の黄河はこの校則に反発した。曰く、「髪型程度で乱れる秩序ならもうそれ意味ねぇよ。」として教師に食って掛かった。

 結局受け入れてもらえず翌日までに髪を切る事となった黄河だったが、彼は近所の床屋と相談し、髪の横と後ろのみを短く刈り込みトップはある程度残す髪型にしてきた。後のツーブロックである。校則は一切破っていない。これには教師も文句がつけられず、この髪型が校内で流行した。

 今に考えれば反抗期の表れかもしれないが、黄河は昔から自らの意見をはっきり主張するタイプであった。これに付き合わされることの多かった黒江は、その記憶にため息を吐きながらも軽く笑っている。


「(……まぁ、その一環で女装させられたのだけは許さないけどな。)」


 思い出したくもない記憶に触れかかった黒江は、大きく頭を横に振った。それを見た浩は黒江の突然の奇行を「またか……。」とでも言うような目で見ていた。


『ええ。問題ありません。皆さんを別々の場所へ送るのは先ほども申し上げた理由からですから。その後に関してはご自由にどうぞ。』


 謎の声はあっけらかんと黄河の言葉を受け入れた。その声にもやはり感情のような物はなく、肩透かしを食らうほどである。


『では、用件は終了したようなので早速転生処置を行います。眩しくなりますので、目をつぶることをお勧めします。』


 そう言うや否や、ただでさえ真っ白で目が痛くなるような場所だった白い空間が、更に輝きを増した。まるで懐中電灯を直接目に向けられたような刺激に目を閉じるが、それですら眩しさを感じる程だ。


「(うっ、く……、眩しい……! って、それだけじゃない……!?)」


 眩しさに耐えていた黒江だったが、同時に謎の眠気に襲われた。その眠気は疲労からくるような心地よいものではなく、まるで全身麻酔をかけられたような、抗い難い強制力を伴うものだった。


「(あ、ダメだ……。これ、気を、うしな……。)」


 何とか堪えようとしていた黒江だったが、襲い掛かる眠気には抗いきれず、徐々に意識が遠のいていく。

 しかし、その時だった。薄れゆく意識の中、黒江は何かを呟く謎の声を聞いた。その声はまるで囁くようで、そしてこれまでには感じられなかった人間味のようなものが感じられた。


『最後に、黒江さん。あなたの検査……果の謎は、私で……分かりま……。しか……人類種(ヒューマー)の身体……、……ません。……用意しまし……。どうか、ご武運を……。』


 何か大切なことを言っているような様子だったが、もはや黒江にはその言葉を正しく捉えられるほど意識は残っていなかった。途切れる寸前の意識はもはや首の皮一枚である。いや、「だった」の方が正しい。黒江はとうとう意識を失った。

 白い空間が輝き、そして収束する。残された空間には、黒江たちの姿は見当たらなった。











『……何とか、成功しましたか。これで、私への監視は付かないはず。もう、いいでしょう。』


 誰もいなくなった白い空間に謎の声が響く。それは先ほどまでの機械じみた雰囲気ではなく、黒江が最後に聞いたような人間味を感じる声だ。


「――よし、リンクが切れた。数分ぐらいなら、リンクが切れても言い訳が立つ。今の内に……!」


 謎の声の言葉が、完全に人のようになった。残響音のような物もなくなり、姿こそ見えないが何かを探している様子である。


「これは……、地球の自殺者データか。でも、ここから伸びているリンクを辿れば……。あった! 『Bクラス機密事項データ』。私では本来見られないが、この場所なら……。」


 どうやら謎の声は何らかの組織に属しているらしく、そして謎の声自身はそこまで階級が高い存在ではないらしい。


「今回の転生、色々とおかし過ぎる……。あの人数にしろ、適性値の許可にしろ……。そもそも、原因となった落雷だって元は……。」


 謎の声はブツブツと独り言をつぶやいている。どうやら何かに集中しているようだ。だからだろうか。白い空間に現れたもう一つの存在に気が付いていないようだ。


「――ッ!? こ、この情報は……!? そんな、まさか……!?」

『そこまでだ。』


 瞬間、全てが闇に包まれた。


これにて序章は終了です。次回からは異世界です。カクヨム様にも同作品を投稿しておりますが、そちらではまとめて投稿する代わりにおまけ話を投稿しております。そちらもよろしければぜひ。

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