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半透明のケット・シー  作者: 七瀬渚
プロローグ
2/101

〜夜霧〜



――懐かしい。




 すぐにそう思った。





 一人っきり見知らぬ場所で目覚めた。いや、生まれたという感覚の方が近かったのではないだろうか。



 身体は赤ん坊じゃなかったけれど、私は限りなくまっさらだった。ただ怯えていた。


 そこへ気配を感じた。ヒタヒタと歩み寄る足音が大きくなってきて、座り込んだ地面に振動まで与えてきて、全身はみるみる総毛立った。


 この喉の奥から沸いて出た、フゥーッ、という唸り。何故だか視界は揺らいで、滲んで、ただでさえ見づらい辺りがますますよく見えなくて。



 殺していた息、だけどやがて取り戻すことに。



 現れたその姿は決して優しげではなく、むしろ鋭くて、捕食者と呼ぶに相応しいものだった、はずなのに。



 息が通った。すぅっ、と自然に吸い込んだのは気体のはずだったのに、液体になって流れ出た。はらはらとこの頬へ降りて濡らした。




 探し求めていた、例えるならばそんな気分。




 彼の姿を程よく透かしてくれたそれは、柔らかな寝床のように思えて、意識が軽く、遠くなった。




 受け止められた硬い感覚。ふわ、とかけられた毛布みたいな感覚。



 包み込む優しい夜霧。



 優しい匂い……





――半透明――




挿絵(By みてみん)




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