〜蒼が届く刻〜
拝啓
疾風の狼さん
あれから一ヶ月ですね。
元気でいますか?ご飯はちゃんと食べていますか?
ちゃんと眠っていますか?無理をしてはいませんか?
お変わりないですか?
いいえ、これは違いますね。
きっと今日もあの蒼色に乗って飛んでいるあなたは
あなたのその青色の瞳には、数々の発見と出会いが映っているのでしょう。
出会って別れて涙して、あなたはもっと強くなる。
海のような深みに満ちて
空のように広く優しく
光へ近付いたあなたは、もっと高みへ行くのでしょう。
あなたはすごく大きい。だからこそこんなにも優しくいられるのね?
傷付くよりも傷付けることを恐れていた。踏み潰してしまわないかと、恐る恐る歩みを進めていましたね。あなたはいつもそうだった。
だけど、私は今こそ伝えたいのです。
あなたの成長はきっと止まらない。これまでよりも更に大きく、更に高く
天さえ貫く程に高く高く、伸びていくことをどうか恐れないで下さい。
遠く遠く離れても、孤独だなんて思わないで下さい。
私たちはもう知っているはずです。
見えない世界でも繋がっている。
触れられない彼方へも想いは届く。
私は確かに感じています。
気まぐれな風の不意打ち
大好きな雨の音
紫陽花の瑞々しさに
瑞々しい日々を忘れまいとする健気な勿忘草
私には届いています。
大地の息吹に星々の囁き
満ちゆく月の引力も
あなたのその声も、その色も
今は梅雨。待ち焦がれた水無月です。
きっとあなたも目にしている、今まさに青色に包まれている私はまだ、今はまだ、憧れの純白に包まれることは叶いません
だけど焼き付けると決めました。深く奥へ刻み付けて歩むのだと。
出逢って知ることのできた優しさ。これまでよりももっと好きになったこの色を持って
いつか必ずあなたに届けてみせましょう。
ねぇ、狼さん。
私の一部はあなたが持っていると忘れないで。
それをいつか私に下さい。
二つの光は決めてしまったから。一つの光を目指すことを。
だから分け合いましょう。与え合いましょう。
思えばいつだってそうしてきた私たちは、はたから見ると奪い合っているように見えたかも知れません。
震えも治らぬまま縋り付いて離れない。四方八方に吹き荒れる様は我儘で、迷子同士の依存に見えたかも知れません、ね。
罪と思ったこともあります。
繋がる程に周囲から遠のいて、手を差し伸べる誰かの優しささえ踏みにじってしまう、罪悪と化身となってしまいそうで怖かった。
許されないのだと思いました。何度も。
だけど知ることができたのです。
ーー光。
魂はこれを無くして生きられない。見えているかどうかではなく。
これが無ければ木々も芽吹かない。酸素も生まれない。体温を保つことだって、もちろん。
命を繋ぐ…光。
これがあるから魂は希望を見出せるのだと知りました。そして私も新たな希望を得ました。
力加減なんてまだわかりません。
だけど
もしかしたら誰かに何か与えられる、愛の尊さを知らしめることのできる
私たち自身がもしかすると
希望を目指していけるのではないか。
傷付くことも恐れず支えてくれた尊い仲間たち。
そして、あなたが教えてくれたのですよ。
あなたは飛んでいく。私は歩いていきます。
歩調は違っても共に進んでいきます。
それぞれの場所でそれぞれの時を経て、星屑のように儚くも煌びやかな経験を、沢山、沢山、持ったなら
何処かで待ち合わせをしませんか?
その刻はどうか、私の名を呼んで下さい。そこにはきっと“あなた”が居るはずだから…懐かしんでみて下さいね。
姿は見えなくても、現世の名は失われていても
悲しんでなんかいません。それどころか、今からもう、楽しみなのです。
ねぇ、狼さん。
もっともっと大きく優しく、素敵になったあなたと
もっともっと強く逞しく、乗り越えていける私
出逢えたそのときは手を取り合って
そっと…寄せて
光になりましょう。
もう一人のあなた
あなたの私
双子の光と優しい世界が在りますように。
かしこ
半透明のケット・シー
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忘れられない出逢いがあります。忘れられない思い出があります。
忘れられない人がいます。もう会えない人もいます。
ーー記憶。
それは脳の海馬が担うものでしょうか?確かに身体の構造上ではそうなるのでしょうが…
ここまで読んで下さりました読者様、この場にて心から感謝申し上げます。
これから語らせて頂くのはちょっばかり…いえ、もしかするとだいぶマニアックだったりするかも知れません。
『輪廻転生』、それから『運命』が存在することを前提でお話しますので、やはり…だいぶ、ですね(笑)
それでもいいよ!という方は、是非お付き合い頂けたら幸いなのです。
後書き冒頭の続きです。
構造はわかっていても、人はしばしば“理屈じゃない”といった感覚を覚えがちです。
初めてなのに懐かしいとか、見ている姿と思い描く姿が何処か違っている、とか。
科学的に分析するのも面白いですね。運命を素で信じているような著者ですが、人体のメカニズムとか、分析、解明、そういったTV番組も結構好きだったりするのです。
ですが、ここはやはり最も興味を持ったジャンル『スピリチュアル』をベースに書いてみることにしました。
シリーズ作品の【ASTRAL LEGEND】が世界観の表現だったのに対して本作は恋愛観の表現でした。
よく恋愛詩を書くのですが、そのほとんどがこの作品と繋がってしまいます。
ラストのイラストは強い絆で結ばれた二つの魂の姿をイメージしました。
ここで本作のキーワードともなった『双子の光=ツインレイ』についてです。
まず同じ魂の故郷を持つ者同士を『ソウルメイト』と言います(これが大きな括りです)
今世を終えて魂のみとなったとき、例えるなら同じコップの中に戻っていく感じなんですね。一つの器の水となって、また新たな一雫として来世へ舞い降ります。故にソウルメイトは十何人と存在するとされています。
次に『ツインソウル』、『ツインフレイム』という順で徐々に人数が限られてきます。この辺まで性別は問わず。恋愛関係の場合もあるし、同士のような間柄になったりすることも多いのだそう。
で、最後が『ツインレイ』 …これは唯一無二なのです。代わりが全く効きません(ほとんどが異性、稀に同性)
まさに運命の出逢い。そう言うと素敵な感じがしますね。ところが出逢ったら最後、もう腹を括るしかない怖い繋がりでもあったりするのです。
何が怖いって?エネルギーが強すぎてビッグバン状態になるからです(笑)まるで自分の一部であるかのように(実際そうなのですが)大切で大切でたまらないはずなのに、時に激しくぶつかったり傷付け合ったりする様は、情熱的な反面、破壊的でさえあります。
作中でも出ましたが、この相手に出逢う為にはある程度の経験を積み、成熟した魂となる必要があります。
出逢ったそのときにはもう家族を持っていたり…なんてことも起こり得る。なので、必ずしも今世、結ばれる人ばかりではないのです。今の立場を考えて見なかったことにする…という判断があっても無理はないと思います。
強い絆で繋がっているのに何処か許されない感覚を覚えてしまうとは皮肉ですよね。
本作で二つの世界に隔てたのはそんな皮肉の表現でもありました。例外の若いツインレイとか、転生で性別が転じることがある…というのはあくまでも著者の想像に過ぎませんが。
そうなるとエピローグで登場したトキとアオイも…実のところは、誰なのでしょう?
前世(彼女の方の場合は前前世となります)と全く同じではないのはもちろんですね。生い立ちも異なる訳ですから、当然同じ人格にはならないはずです。
だけど双子の光である二人の場合、それだけではなく。お互いがお互いを分け合っています。なので…
それぞれ焼き付けた色を分け合った?あるいは性別が転じた?
それとも…?
この辺りは読者様なりに自由に受け止めてもらえたら、と思っております。
一つ言えるのは再び出逢えたということくらいでしょうか。
長々と語ってしまいましたが、書き進めていくうちに私も色々と思うところがありました。
第8章ラストまでだと、樹里はまるで葛城とうまくいきそうな雰囲気なんですよね。その可能性はゼロじゃないと思います。
一方、健気にレイを想い続けたサシャ。こちらもまだ見込みがあります。
そうなると考えようによっては不憫に思えてくる人物が出てくるのです。葛城とサシャ。何故なら、例え成就したとしても決して一番にはなれないからです。樹里とレイはそれぞれの世界に離れてもなお、魂は繋がり続けている訳ですから。
では仮にそうなったとして。
今世の相手に向ける想いは果たして嘘なのでしょうか?
繰り返しますが、これはあくまで著者の考えです。正解などとは思っていませんし、正解は無いと思っております。その上で、なのですが。
忘れられない人がいる。運命と思えた相手が未だに心の奥底に残り続けている…それでも私は良いと思うのです。
今を精一杯に愛しているならそれは嘘や裏切りにはならない。
大切なのはそんな唯一と思える存在を実感できたこと。『魂の伴侶』はあくまで魂の繋がり。実体でなくたって十分に尊いのだし、何よりお互いの幸せを願っています。
精一杯に誰かを愛する自分を見守ってくれている大切な存在。交際や結婚だけではない、形は何も一つじゃないと思っています。
漠然と憧れてきた『運命』を、スピリチュアルベースで独自に分析したらこのような表現になった…これは、なかなか楽しい冒険でした。
本作以上にマニアックな後書きにお付き合い頂きましたこと、重ねて感謝致します。
どうか皆様も今を大切に、精一杯に愛してほしいと願います。ソウルメイトは見守っています。そしてきっと何処かにいるもう一人の自分、もう一つの光も
何よりあなたの幸せが見たいのです。
七瀬渚