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第十五話「後輩消滅!? 9」【本番当日】

「拾った。コレクションにする」

「はぁ……」

 こんな状況下でも、本当に相変わらずマイペースな……ん?

「なんだよこの時計……時間がズレてるじゃないか」

 どうも俺はこういういい加減なのは許せない。ということで、早速時計を合わせようとリューズを……なんだこれは?

「一方通行のリューズなんて訊いた事がないぞ……?」

 仕方ないから、逆回転させて時間を合わせようとするが……古いせいか、リューズの廻りが悪くてなかなか合わせられない。

「くそっ、よく見りゃ短針も歪んでるし、不良品め……」

「副会長も、結構マイペース」

「会長には負けますよ」

「おいこらお前ら! 俺を無視すんじゃねえよ!」

 業を煮やした悪魔が俺達の間に割って入る。せっかちな野郎だ。

「俺様が諦める素晴らしさを伝授してやるぜ!」

「副会長、行け!!」

 会長の怒気を孕んだ声に、俺は思わず後ずさった。

 なんか、洒落にならんぞ。

 本気でぶつかりあったら、これはタダじゃ済まないんじゃないか!?

「けけッ、俺様はお前の行動を止めはしないぜ? ただし、忠告はしたからな、後は絶望するなり不幸になるなりしろよ。むしろそうなった方が俺様もノルマが達成出来て助かるしな」

「嫌なノルマだな!?」

 というか、ノルマのある悪魔ってどんなのだよ。

「なあ、真面目に訊いてもいいか?」

「何だ?」

「諦めるって選択肢は、本当に俺にとって良い事なのか?」

「さあな、それは人それぞれだろ。この場合、俺様はあくまでその結果よりも、断念とか諦めるっていう不の要素が含まれる方を応援する訳だしな」

「なるほど」

 意外と悪魔も考えているようで無責任なのだな、というか、だから悪魔なのか。

「とにかく、諦めてしまえ。そして苦しめ、さらにボーナス確定要素になっちまえ」

「私欲丸出しだな」

「悪魔だからな」

「副会長! 何暢気にしてる!!」

「分かりましたよ。会長……無茶しないでくださいよ」

「安心しろ、この戦いが終わったら、店を開くつもりだからな」

 それ、死亡フラグというやつでは?

「それじゃあ、悪いが俺はここで」

 その時、俺の足下が揺らいだ。

「なんだ? ……立ち眩みか?」

 最初はそう思ったが、どうも違う。

「副会長、どうした!」

「いや、なんか足下が……」

 ぐにゃり。

「ッッ!?」

 なんだ!? 一体何が起こってるんだ!?

 まるで俺の周りの道路だけが、粘度の高い液体のようになっていた。

「ちょ、ちょっと待て! なんだこりゃ!?」

 抜け出そうにも足はすでに動かず、ズブズブと沈んでいく。しかし、まるで俺の異常事態が見えてないように、会長は悪魔と対峙したまま動かない。

「かいちょ……ごふっ!?」

 まるで溺れた子供のように手足をバタつかせるが、全くもって効果がない。

「副会長。遊ばない!」

「あ、遊んでるんじゃなくて……ごぼぼぼぼぼぼぼ!」


 沈んだ先は真っ暗だった。


 ふと気づくと、俺は生徒会室に居た。

「あれ?」

 しかも、朝だ。

 さっきまで夜で、しかも生徒会長と悪魔が一騎打ちを始めたと思ったのに、妙だな。

「副会長」

「会長?」

 声の方を振り返ると、会長が立っていた。

「狩りに出掛けよう」

「あ、ああ、遅刻の取り締まりですか?」

「その通り。先に行ってるから、荷物をよろしく」

「はいはい、分かりましたよ」

 先を行く会長を見送って、俺は遅刻の申請書や鉛筆を手近な段ボールに詰めようと手に取ったのだが、蓋を開けてみると、先客が居座っていた。

「ん? なんだ?」

 それは古めかしい置き時計だった。

「誰かの私物か?」

 学校の物なら、学校名が記入されてるはずだしな。

「まあいい、どうせ誰かのだろう」

 俺は右手に置き時計、左手に段ボールを持って非常階段から一階を目指した。

「ん?」

 階段を降る途中、俺は花壇の近くで蠢いている存在に気づいた。

「何やってんだアイツ」

 匍匐前進して隠れてるつもりなのか知らないが、ここからだと丸見えだぞ。

「ったく、あんなのじゃあすぐ会長に見つかるな」

 どうせ遅刻を免れようとしてるんだろうが、無理がある。

 一階まで降りた俺は、未だにこそこそと匍匐前進を続ける女の子に声をかける事にした。

「おい、そこの……!!」

 俺の声に反応して、匍匐前進中の女子生徒はぴくりと身体を震わせ俺の方を見上げた。

「え、私?」

「え……?」

 俺は思わず言葉を失っていた。

 匍匐前進する女子生徒、それは、あのダゲレオ写真の女の子、その人だったのだ。

 こんな偶然が、あっていいのか?

「そうか夢か」

 なら納得だ。納得した上で、この夢をそのまま楽しむとしよう。

「お前以外に他に誰か居ると思うのか?」

 俺の質問に、彼女は当たりをキョロキョロと見渡している。

 いやいや、誰も居ないから。

「お前、どうせ遅刻だろ?」

「う、ち、違います。私はあの、趣味の匍匐前進を」

 匍匐前進が趣味って、どんな子だよ。

「言い訳しなくてもいいって、見逃してやるから、ちょっと手伝ってくれないか?」

 ってか、なんで夢の中でまで生徒会の仕事なんてしなきゃならんのだ?

「お手伝い、ですか?」

 とりあえず、この子に荷物持ち位してもらうか。

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