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第十五話「後輩消滅!? 2」【本番当日】

「では、またのご利用お待ちしてまーす。と店長がとりあえず言っておけと申してました」

「では、貴方の本音は?」

「次からは自分で取りに来いよ、客の分際で人様にこんなの届けさせんなよ」

「ほほー……」

 なかなか黒い野郎のようである。

 しっかり暴言を吐いたにもかかわらず、バイトは俺にぺこりと頭を下げると、そのまま謝罪の言葉一つ無く立ち去っていった。

「さてと、気を取り直して……」

 忠告された以上、丁寧に取り扱うべきだろうが、開封前に最低限の可能性を除外させなければなるまい。

「とりあえず、ベタではあるが」

 そっと耳を近づけてみる。

 うむ、時計類の音はしないし、爆薬の匂いもない。

「ということで、爆発する類ではない、と」

「副会長、その小包は何?」

「ぬおっ!? いつの間に!?」

 いつからそこに居たのか。

 いきなり目の前に、ポニーテールの女が仁王立ちで登場したのである。

「副会長は、リアクション王」

「会長がいきなり現れるからですよ」

 そう、この御方こそが我が生徒会委員の会長である。

 長身痩躯の上に出るトコはしっかりと出ているし、何よりもポニーテールは得点が高いのだが、多くの謎と癖のある性格の為、なんとも近寄りがたい雰囲気を醸し出している御方なのだ。

「這い寄った、気配を消せば簡単」

「気配を消すって言っても……」

 一体どんな技能を有すれば、そんな登場の仕方が出来るのだ?

「本気で消すと、あらゆる場でスニーキングが可能」

「……左様ですか」


 この会長なら、冗談抜きで実現出来そうだから油断ならん。

「副会長も特訓しよう。きっと出来る」

「いえ、謹んで辞退させて頂きます」

「残念」

 会長の特訓なんぞに付き合っていたら、命がいくつあっても足りない。

 とにかく、俺は会長の誘いをスルーしつつ、改めて小包の開封を続けた。

「食物?」

「いえ、写真だそうですよ。ってか、会長が頼んだのでは?」

「違う、断じて、違う」

「そこまでハッキリと否定ですか」

「我は写真を撮らない、魂を取られる」

「いつの時代の迷信だよ。ってか、そうだとしたら、書記係の子かな?」

「副会長、何を言ってる? 書記の人などいない」

「え?」

「書記の人など、存在しない」

「いや、確か居ただろう?」

 確か、生徒会委員は三人だったはずだぞ。

「副会長、健忘症。生徒会は、我と副会長のたった二人だけ。今も、昔も、これからも」

 未来まで二人で固定かよ。

「となると、一体誰が頼んだんだ?」

 誰が頼んだかも分からない、生徒会委員宛の写真?

「一体、何が写っているのやら……」

 そうして出てきたのは、立派な額縁に入ったモノクロ写真であった。

「これは……?」

 写真を見た途端、俺はなんだか心臓を鷲づかみにされたような気分だった。

「……これは、ダゲレオタイプ」

「ダゲレオタイプ?」

「写真の一種、昔の」

 確かに、今時の写真と比べてみれば、全体がぼんやりとしているが、それでもハッキリと何が映っているかは分かる。

「バイトの言葉も納得」

「というと?」

 というか、あのバイトが居た時からこの部屋に居たのか。

「ダゲレオは衝撃に弱い。触れるだけで崩れる程、脆い」

「そ、そんなに?」

「それがダゲレオの難点。プラス、複製が出来ない」

「複製が出来ない?」

「写真はネガで作る。ダゲレオはネガが写真になる。だからダゲレオ写真は、撮ったら唯一それしか存在しない、つまり貴重」

「なるほど」

 これでなんとなく、あのバイトが繰り返していた“壊れる”とか“材料や技術者の関係”という単語の意味は分かったような気がする。

 しかし、その理由が分かっても、心臓を鷲づかみされた理由が解消された訳ではない。

「それにしても……」

「綺麗に映ってる」

「うむ、それは俺も思うんだが」

 俺は改めてこの写真を見直した。

 うむ、やはり俺だ、俺に間違いない。

 それはいいんだが、なぜ俺はこんな形相で花束を振り上げているんだ?

「副会長、殺意に満ちてる。この子、殺した?」

「そんな澄んだ目でストレートに問わないでください」

 それにしても、なかなか鬼気迫る面である。

 この面構えはなかなか衝撃的だが、俺が一番驚いたのはそこではない。

「それにしても」

 原因は、俺と一緒に写っていた。

「この子、誰なんだ?」

 それは笑みを浮かべる女の子だった。

 恐らく中学生だろうか、いや、しかし着ている服は俺の学校の物だ。

 ということは、この幼さからして新入生だろうか。それにしても、ヒマワリのような笑顔である。元が良い上に屈託のない笑顔という組み合わせは最強だと痛感させてくれる。

「で、この子、誰?」

「さあ、誰なんでしょうね。ちょっと俺にも身に覚えがなくて」

 こんな子と写真を撮った覚えなどない。

 しかし、これ程までに印象深い子ならば、一度会えば忘れないと思うのだが。

「妙」

 そう、なんとも妙な話だ。

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