第十四話「後輩消滅!? 4」【前夜祭】
また真っ暗です。
「お前は馬鹿か? いや、馬鹿だ!!」
「むぅーっ! 馬鹿って言った人が馬鹿なんですよ!!」
また悪魔さんと魔神さんに再会してしまいました。
「まあまあ、お二方共落ち着いて下さい。とりあえず、後輩さん、先輩と抱擁を交わしたい気持ちは分かりますけど、だからって過去を変えちゃあ元に戻れるものも戻れませんよ? それとも、このまま消滅コースがお望みですか?」
「う……い、いやです。で、でも、前の時も私が先輩を雪崩からお救いして……」
「その役割は、お前を攻撃した側のお前の役割だろうが」
「前の時はどういう流れだったんですか?」
「えっと……」
「という事でドロップキック!」
先輩オンリーと誓っていた一撃ですけど、本日だけ特別解禁です!
「うぎゃっ!」
見事に命中して、雪女さんは白銀世界を転がってフェードアウトしていきます!
さあ、これで邪魔者は去りました!
「雪女さんは、思いっきり蹴り飛ばされてました」
「となると、お前は攻撃を躱すんじゃなくて、食らわないと駄目じゃねえか」
「え、ええええー……」
それにしても、自分があの雪女さんの代理になるなんて、夢にも思いませんでしたよ。
「でも、待ってくださいよ?」
「どうした?」
「私が雪女さんの代わりとして出ても過去は変わらなかったのに、どうして蹴りを避けたら過去が変わっちゃったんですか?」
勝手に雪女さんを名乗った時点で、過去の改変が行われるはずですよね?
「それは……おい、臨時神様、どういう事だ?」
「んー、多分、その時点では過去は変わってなかったという事ですね」
「なんですと? つまり、それって、私が雪女さんだと思ってたのは……」
「貴女自身だった。これはあくまで仮説ですけど。どの道、貴方は何かしらの理由で過去に戻り、過去の再生を行わなければならない運命だったのかもしれませんね」
「つまり、最初から全部どこかの誰かのシナリオ通りだった、って事ですか」
「そういうことだね」
「でも、それならなんで私の時は蹴りを食らったんですか?」
「つまり、その時の貴女は、蹴りを食らう運命にあった貴女だった。だけど、貴女はその時の貴女とは違う未来から飛来したから、齟齬が生じたんでしょう」
なんだか、とても壮大かつ複雑なようで、雑いお話になってきましたね。
「つまり、その私は何かしらの理由で未来から過去に飛ばされて、蹴りを食らう代わりに現在に戻って行った事ですか?」
「多分ね。でも、貴女はそうじゃなかった。貴女は別の方法で未来に帰る貴女だった。だから、今もこうして居るんですよ」
「うううう、なんか頭の中がグチョグチョですよ」
こういう難しい話は嫌いです。
「とりあえず分かっているのは、貴女は一体どの過去を正しく再生しないといけないのか、それが今は分からないって事です」
「絶望的じゃないですか、それって」
「大丈夫大丈夫、可能性はゼロじゃない。何度目かきっとで成功しますよ」
「そ、そうですよね」
「とにかく、さっさと次に挑戦しようぜ。お前だって、さっさと帰りたいんだろ?」
悪魔さんの言う事はごもっともです。
「じゃあ、次はちゃんと蹴りを喰らえばいいわけですね?」
あそこでちゃんと食らっていれば、そのまま時間軸が戻って戻れる訳ですもんね。
ちょっと不服ですけど、次はちゃんと食らいましょう。
「無理ですよ?」
「え?」
「例え戻ったとしても、先程この時計で戻った貴女が未来を変えてしまった訳ですから、また戻って、時計を合わせたとしても、それはもう貴女の世界とは別の時間なんですよ」
「じゃ、じゃあ、私は一体どうすれば?」
「とりあえず、もう少し前に戻るしかないですね。とにかく、次はちゃんとしましょうね? でないと、冗談抜きで消えますからね」
「この馬鹿には、無理なんじゃないのか?」
「馬鹿じゃないですよ! 次はちゃんと成功します!」
「どーだか」
「まあまあ、とりあえず、次に行ってみましょうか」
そう言って、魔神さんがまたリューズを回します。
「次はいつなんですか?」
「それは私にも分かりません。とにかく、着いたらすぐにいつなのかを確認して、その日の出来事通りに物事が運ぶようにしましょう」
「はいっ! 頑張ります!」
ということで、また私は置き時計を手にして闇を抜けました。
今度は学校でした。
皆が帰ってる所を見ると、放課後ですね。
でも、いつの放課後かは分からないので、私は廊下を抜けて生徒会室に向かいました。
生徒会室には会長が趣味で集めてる世界各国の新聞が置かれているのです。
それさえ読めば、今日がいつなのか瞬時に分かるのですよ。
「我ながら、ナイスアイディアですね」
ということで、誰に会う事もなく生徒会室に忍び込みました。
新聞が置かれているのは、ロッカーのはずですけど。
「あれ?」
ロッカーを開くと、中から新聞でない何かが出てきました。
「これって……」
会長が着てたクマの着ぐるみ……ですよね?
「書記係」
会長の声に、私は驚いて振り返りました。
いつの間に戸を開けて入ったのか……いや、もしかしたら、戸を開けずともこの方なら入ってこれるような気がします。
「か、会長。どうも、ご無沙汰しております」
「本当だ、ご無沙汰だ」
チラチラと会長の視線が向かうのは、私が見つけたクマの着ぐるみです。
「あ、あの……」
「見つけてしまったか、面白くない、我は面白くない。代わりに副会長を驚かす。我は楽しみ」
「あんまり無茶苦茶しないでくださいよ?」
「安心しろ、峰打ちだ」
それは、相手をぶっ叩いてから言う台詞だと思います。
「後輩、一々細かい」
「す、すみません」
「とりあえず、我は着ぐるみを着て、隠れる。さらば」
そう言って消える会長。
そして、私の視界はブラックアウト――……。




