また明日って、もう一度。
「また明日」
私はその言葉を幾度となく聞いてきたし、幾度となく使ってきた。
「また明日」
朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って、眠りに就く。
「また明日」
それとおんなじぐらい当たり前だと思っていた。
「また明日」
当たり前だったことが当たり前ではなくなるなんて思いもよらなかった。
「また明日」
その引越しは急に決まったらしい。
「また明日」
そんな現実を私は直視できなくて。
「また明日」
あなたに必要のない八つ当たりをしてしまった。
「また明日」
そんなの無意味だって頭では分かっていたのにな。
「また明日」
部屋に閉じこもってどれぐらい時間が経った時だったかな。
「また明日」
鏡に映り込む、腫らした目を見て気付いたよ。
「また明日」
さっきのあなたもおんなじ目をしていたことにさ。
「また明日」
私は駆ける。
「また明日」
幾度となく通ったあなたの家に。
「また明日」
幾度となく使ったその言葉が。
「また明日」
幾重にも折り重なっていくのを感じながら。
「また明日」
そこに大きなトラックが停まっていて。
「また明日」
そこで小さくあなたが佇んでいた。
「また明日」
私は叫ぶ。
「また明日」
思いの丈のすべてをぶつける。
「また明日」
その時の、あなたの顔は優しくて。
「また明日」
だけど、気持ちはおんなじで。
「また明日」
むせ返った私をいたわりながら。
「また明日」
あなたは私を言葉で包む。
「ありがとう」
「今日まで楽しかったよ」
「一緒にいられなくなるのは寂しいけど」
「それでも」
「生きていれば、いつか会えるかもしれない」
「だから」
「……またね」
あなたを乗せたトラックが『明日』と共に消えて行く。
消え行くあなたに手を伸ばさなかったのはきっと、その言葉を信じたかったからだ。
それともうひとつ。
私には信じたかったことがある。
「また明日」
って、もう一度。
そうあなたに言えることを。
そうあなたに言われることを。
私は、信じていたかった。