いつの間にか、迷ってた
女の子が立ち止まったところは、『児童書コーナー』だった。児童書コーナーはこの本屋の中でも特に大きなコーナーで、店内の五分の一くらいが児童書で埋められている。
「えっと、『リコッタを料理』でしたっけ?」
「『リコッタの冒険』です」
リコッタを料理しちゃあダメだろう。どんどん正解から離れていってるけど、本当にここであってるのかな……。
「り、り、り……」
また女の子が壊れた。その場で目を閉じて固まっている。りりりって、頭の中で電話でも鳴ってるのかな。
しばらくして、目がパチっと開いた。
「確か、ラ行はあっち側だったはずです。いきましょう」
なんだ、『リコッタの冒険』がラ行のところにあるかっていうのを考えてたのか。りーりー鈴虫みたいで面白かったからもう一回やってほしいな。
本の題名がラ行っていっても、膨大な数の本がある。約本棚二つ分がラ行の本でびっしり埋まっている。その中で最初が『リ』の本は本棚半分ぐらい。
次に二文字目が『コ』の部分を探すが、子供がよく取り出して読んでいるのかぐっちゃぐちゃで、ほぼ二文字目から規則性はなくなっていた。
「自分は右上から探し始めるので、お姉さんは左下から探し始めて下さい」
「わかりました」