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 愛理の後に続いて教室を出る颯太。

 そして特に会話も無く廊下を少し歩いたところで突然、愛理が扉を指差して立ち止まった。


「ここがロッカールームです。丁度鞄をお持ちのようですし、ロッカルームに仕舞ったらどうですか? 氏名がロッカーに書いてあるので、直ぐに分かるはずです」

「あ、ありがとう。助かります」


 いやぁ~やっぱり水瀬さんは美人だし気が利く良い人だな~。さっき心の中で「あいつ」とか言って、すみませんでした! あなた様は女神です!

 そんなことを考えながら引き戸を開けて室内に入った颯太は何かに気が付く。


「あれ? ここ本当にロッカールーム? どう見ても空き教室にしか見えないんだけど?」


 そう言いながら後ろへと振り向き、愛理へと問いかける。

 すると――愛理は後ろ手で引き戸を閉め、施錠をする音が教室内に響き渡った。

 そんな愛理は先程まで見せていた凛とした表情とは一転して、天使のような微笑みを浮かべていた。

 クールな表情しかしてなかったから気付かなかったけど、この笑顔可愛いなぁ~。やっぱり女神様や!


「何してるんですか?」

「御察しの通り、ここは何の変哲のないただの空き教室ですよ城戸くん。そして私はあなたの発言を許可した覚えはありません。いいですか?」

「えっ!? 何言って――」


 颯太の言葉を遮るようにして話し出す愛理。

 あれ? なんかおかしくね? 表情と言ってることがまるで合ってない。


「何勝手に喋ってるんですか? これ以上あなたが勝手に喋るようでしたら、私は……」


 そこで一旦言葉を切ると愛理は更に笑みを深め、


「叫びますよ? 城戸くんに襲われるって。……理解できましたか?」


 その言葉の真意を理解した颯太は言われた通り無言のまま首を何度も縦に振る。

 全然可愛くねぇぇぇ! むしろこえぇぇぇ! なんなんだよコイツ!?


「時間が余りありませんので手短に。あなたの鞄を渡して下さい」


 なんで鞄? 意味わかんねぇぇぇ!

 颯太が鞄を渡すと愛理が何かを探し始め、やがて、お目当ての物を取り出した。

 はぁ? なんでさっきのメモ帳見てんだよ? 別に何も書いてないぞ?

 ペラペラとメモ帳を捲り終えた愛理が、


「……やはりそうですか。城戸くん、あなた占いなんてしていないでしょう?」

「なんのことかな?」

「この期に及んでとぼけるんですか? なんなんですか?」

「え? いや、そっちこそどうしたの水瀬さん? 少し落ち着いたらどうかな?」


 なんだよこの状況……俺にどうしろって。


「残念ながら私は至って冷静です。それはもう、キリンの首が縮まるほどに冷静です」


 ……笑えばいいのか!? 場を和ませようとジョークでも言ってくれたのか?


「あはは。面白いジョークですね」(棒読み)

「何を言っているんですか? 私は何も面白いことなんて言っていませんが?」


 ギロリとその鋭すぎる眼光を颯太に向ける愛理。


「ですよね~」


 うぉぉぉい! あれジョークじゃねぇのかよ!?


「私の失笑間違いなしのキリンさんジョークの話しよりも、今はあなたに聞きたいことがるんです」


 おい! 今「ジョーク」って言ったよね!? 今「ジョーク」って言ったよね!? 大事なことなので2回言いました。


「は、はぁ」


 ただの美人かと思ってたら、相当な変人だなコイツ。


「あなたはあの場で占いをすると言い、私の個人情報の開示を求めたにもかかわらず、私の与えた情報をメモ帳に一切書きとめることも無く、書く振りをしましたね。……詰まるところそれは、私の個人情報は必要なかったという事になります。ここまでで何か反論はありますか?」


 読めないな~コイツ。ふざけてるのかと思ってたら急に的を射ったことを言ってくるし。まぁ、そっちが何か探ってるのは分かったし、適当にそれっぽいことを言って、しらばっくれればいいか。


「いやいや書いたよ? ただ最近は個人情報保護法なんてものもあるし、特定の個人を識別できる情報を持っているのは好ましいと思えないからね。だからそのページはもう破り取らせてもらったよ」


 決まった! 我ながら完璧なアリバイだ!


「言いたいことは分かりましたが、その前に、あなたのそのヘラヘラとした愛想笑いはどうにかならないんですか? 正直、この上なく気持ち悪いです」


 なっ! 俺の鉄壁の愛想笑いをき、気持ち悪いだと……!? コイツ許さん。


「おまえなぁ! この上なく気持ち悪いって失礼だろ!?」

「あら? やっと素が出ましたね」


 今まで以上に満面の笑みを浮かべた愛理の言葉に気が付いた颯太。

 あぁぁぁ! やっちまったぁぁぁ! 俺のエンジョイ学園生活作戦ががががが!


「な、なんのこ()ですか?」

「噛んでますよ。それに先程も散々私にどや顔をみせつけておいて、よくそんな態度が出来ますね」

「……わーったよ! んで? おまえは何がしたいんだ? 確かに俺は何にも書いちゃいねぇよ」


 愛理が腕を組み、何故かその場を歩き回り長い黒髪をふわりと漂わせながら滔々(とうとう)と話し始める。


「随分と素直に認めましたね。私が逐一あなたの行動を見ていたのに破り捨てた紙はどこにしまったのか、でしたり、あなたが本当に書き込みしているのならば発生するであろう、筆記の跡がメモ帳のどのページにも残っていない、などの様々な疑問点から追い詰めようとしていたのですが――」


 そこで言葉を切り颯太へと振り返り、


「あなたの素が見れたので良しとしましょう」


 と、言ってのけるのだった。


「それで話しはそれだけか?」

「いいえ。ここからが本題です」


 前置きなっげぇぇぇ! 時間ないんじゃないのかよ?


「あなたのあれは占いではありませんよね?」

「あぁ、そうだよ。占いじゃない」


 やけにあれに執着してくるな。種明かしでもしろってか?

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