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元中二病患者の俺がちょっとした心理学を駆使した結果、何故か学園一の美女と協定を結ぶハメになったんだが……  作者: 識原 佳乃
第3章『あうとおぶこんとろーる!』

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15 ※後書きあり第10回心理学用語解説コーナー『自己調整法』

 なんとか11月中に更新できました。(血反吐)

 完全に溶けてしまったメロンパンアイスを食べ終えた後は、特に俺がいなくてはならない必要性が感じられず「では自分はこれで帰りますね」と切り出したところ、花ヶ崎に「え? ダメだよ?」と首を傾げられてしまった。


 なんでだよ!? 折角俺が気を利かせてふたりで遊んでるところを邪魔したら悪いな、って思って申し出たというのに……。

 それにもう負の感情が込められた視線を浴びるのは懲り懲りだ。


「どうしてですか?」

「それは城戸くんがいないとふく…………ナンパされちゃうからに決まってるじゃん。ねぇエリー?」

「……ん」


 水瀬も花ヶ崎の意見に異論は無いらしく紙ナプキンで手を拭き、こくりと頷くと静かに立ち上がった。そして「準備万端」と言いたげにマスクを装着すると、俺が立ち上がるのを待っているようだった。

 いくらマスクで顔を隠しているとは言え、このふたりには根本的な問題があるのだ。

 それは体型だ。水瀬はメリハリのあるボディラインでプロポーションが良く、花ヶ崎はスラリと伸びたしなやかな体躯によってスタイルが良い。これに加えて身に纏っている雰囲気と言うか、オーラと言うべきなのかは定かではないが“有名人が変装してます”感がもの凄いのだ。……まぁ、花ヶ崎は正真正銘有名人なのだが。

 これではマスクで顔を隠していることが返って注目を集める原因にもなりそうだ。


 自分から、マスクを付けろと言ってしまった手前付き合わない訳にも行かず、俺も水瀬に倣って立ち上がった。


「そう言うことですか、分かりました。それで服を見るんでしたっけ?」

「……えぇ」

「よ~っし! レッツゴー!」


 水瀬は言葉少なめに淡い恥じらいを声に乗せて。

 花ヶ崎は朗らかに発すると意気込みを滲ませて。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「それで今日は花ヶ崎の対応協議だったはずだよな?」


 目の前にあるデミタスカップから立ち上る芳香は独特な深みを放っている。

 コーヒーの、特に深煎りのもであるエスプレッソなどの香りからは高いリラックス効果があることがとある実験によって証明されているらしい。


 さて、何故そんなことをわざわざ思い出していたのかと言うと……、


「――なのになんで協議対象の花ヶ崎があの場にいたんだよ? 俺はなんにも聞いてないぞ」


 今日の水瀬の突拍子もない行動に沸々とたぎるものがあるからだ。


 蔀モールで花ヶ崎の着せ替え人形と化した水瀬の服選びに付き合い散々連れ回された挙句、何故か俺の服をふたりが見繕うという謎の展開に発展し完全におもちゃにされた。その後は仕事の打ち合わせがあると言う花ヶ崎と現地で解散し、「一息つきたい」と言い出した水瀬を連れて当初行くはずだったカフェへと足を運んだという訳である。


 濃褐色のエスプレッソに浮かぶ黄金色の泡(クレマ)。出来の良さを目で感じつつゆっくりとカップを傾ける。

 ……当然、いつも通り美味かった。

 マスターにはコーヒーに関する知識と才能、それと“武道”に関する知見と実力では右に出る者はいない。


「……ごめんなさい。昨晩城戸くんから一方的にメールを切られた後に、私の方で紗英の誤解を解くことが出来たの」


 水瀬は両手で包み込むようにティーカップを持ち上げると、香りを楽しむように目を瞑り、しばらくしてから淑やかに啜った。カフェ・ブレーヴェ。水瀬がオーダーしたのは確かそんな名前だった気がする。

 口角のみに穏やかな笑みを浮かべ初めの一口を充分に堪能出来たのか、ティーカップを戻すと水瀬はそこはかとなく上機嫌に言葉を続けた。


「だからもう紗英のことは大丈夫よ。……ねぇ? 私のメールを長時間放置して、その上勝手に眠ってしまうどこかの誰かさん?」


 ティースプーンでイタズラにカフェ・ブレーヴェを踊らせると、非難じみた口調で楽しそうに俺を追い詰める水瀬。目が笑っていないように見えるのはきっと気のせいだろう。

 そんな姿を見て「やっぱりコイツは“S”だ」と再認したのは言うまでもない。


 ……確かにバイトとはいえ長時間放置してしまったのも、眠気に耐え切れずにメールを切ってしまったのも俺が悪いからな。なんも言えねぇ。


「用事があってな。それで誤解を解くことが出来たのは分かったんだが、花ヶ崎があの場にいた理由を説明してくれないか?」


 なにも言えないからこそ切り返しを図った。これ以上ネチネチと攻撃ならぬ口撃をされるのを回避したかったからだ。

 俺の言葉を聞いた水瀬はティースプーンを放すと惰性で回り続ける様子を眺めながら口を開いた。


「私と城戸くんが本当に付き合っていないか見たかったそうよ」

「……それってわざわざ見る意味あるのか?」


 俺達が事前に口裏を合わせて演技をしていたら意味無い気がするのだが……。


「……さぁ? 私に聞かれても分らないわ」

「そうか……神のみぞ知るってか」

「紗英のみぞ知るでしょう?」

「そういや花ヶ崎はこんな時間でも打ち合わせがあるのか?」


 現時刻は20時を少し回ったところだ。俺には芸能界の知識なんてものは全くないので分からないが、モデルという職業は随分と大変なようだ。

 水瀬に問い掛けてみても釈然としない答えだったので、暇潰しにそんな疑問を振ってみたのだが……、


「……さ、さぁ? 私に聞かれても分から()……いわ。これこそ紗英のみぞ知る、でしょう?」


 思い切り噛んだ。そして何もなかったかのように凛と澄ました顔で言い切った。


「……なぁ水瀬? なんでそこでお前が動揺するんだ?」

「……ん。動揺? 私が?」

「思いっきりしてたじゃねぇか?」


 右手を軽く丸め目の下辺りで何かを持ち上げるような動作をすると、水瀬は「してない」と目を逸らしながら言った。


 今の行動だけでも疑うには充分だ。

 花ヶ崎のことを聞いたのに水瀬が動揺する理由か……。

 何か知っているのは間違いないみたいだが、それがなんなのかは皆目見当がつかない。


 なので少々問い詰めてみるとしよう。


「そうか……なら俺の目を見て言え」

「……やだ」


 そう言うと水瀬は顔ごとそっぽを向いてしまった。

 どうやら“口ほどに物を言う目”が合わせられない程度には何か後ろめたいことがあるようだ。


「ほぉ~。なんでいやなんだ?」

「…………」


 水瀬からの返答は沈黙だった。黙秘権を行使するらしく、きつく結ばれた唇は開く気配がしない。


「そう来るか……だったら俺にだって考えがあるぞ」


 俺は身を乗り出して向かいに座っている水瀬の頬を両手で挟み、ゆっくりとこちらへ向けさせた。

 水瀬は特に抗うこと無くこちらに顔を向けると、驚きを浮かべた静かな瞳を湛えたまま固まっていた。


「……俺に隠してることはなんだ? 正直に言ってみろ。別に怒ったりはしないから」


 僅かな瞳の変化も見逃さぬよう徐々に顔を近づけるが……、


「……んんっ」


 水瀬に目を瞑られてしまった。おまけに唇も更に力を込めて閉じられた。


 ……これじゃどうしようもねぇな。この頑固者が簡単に口を割る気もしな……ヒギィィィィィィ!?


 さぁどうしようか? と思考していたところ突如、脳天に鈍く重たい衝撃が走った。その凄まじさたるや頭の上に水を張った金だらいでも落ちてきたのかと、勘違いするほどのものだった。

第10回心理学用語解説コーナー『自己調整法』


『自己調整法』について


 元々は『自律訓練法』として確立されていた自己催眠法を、日本人向けにやりやすく改善されたものです。

 訓練方法は1~8段階まであり、それを段階ごとに訓練していくことでマスターすることが出来ます。

 効果は主にストレス緩和や集中力向上などなど。


 ただし良い事尽くしではなく副作用もあります。作中での颯太くんのような状態です。(あれは想像で書いていますが……)

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